新車で買えるMT車が年々減ってきているが、マツダはMAZDA2からCX-5に至るまでほとんどのモデルにラインアップしている。さすが! といったところだが、縦置きエンジンで、しかも直6を搭載するCX-60には設定なし。
クルマ好きの心をくすぐるパッケージングなのだがらMTも欲しかった……。なんでないの!?
文/小鮒康一、写真/MAZDA
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■CX-8と新型CX-60だけなし!! ほぼすべての車種にMT設定するマツダ
現在、絶滅危惧種になりつつあると言っても過言ではない3ペダルのMT車。今では一部のスポーツモデルと商用車、そしてMT世代の年輩のユーザーが多い車種に残る程度となっているのが現状だ。そんななか、現行ラインナップの多くに3ペダルMT車を多く設定するメーカーが存在する。それがマツダである。
ブランドエッセンスとして「走る歓び」を標榜しているマツダは、スポーツカーであるロードスターはもちろんのこと、コンパクトカーのMAZDA2やフラッグシップモデルのMAZDA6に留まらず、クロスオーバーSUVであるCX-3やCX-5といったモデルにまで3ペダルMTを用意しているのだ。
これはハンドリングやドライビングポジションなど、走りにまつわる部分に強いこだわりを見せるマツダだけに、そもそもの根本として自らの意思でクラッチペダルを踏み、シフトノブを操作して適切なギアを選ぶという基本中の基本からクルマを動かすことを楽しんでもらいたい、というメッセージであることは想像に難くない。
しかしそんなマツダが満を持してリリースした、新世代のラージ商品群の第1弾であるCX-60には現時点で3ペダルMTの設定がないのである。
■新型CX-60は8速ATだけ……どうせならMTほしい気も
新世代のマツダを象徴する1台として、今年の6月に予約をスタートし、9月より「e-SKYACTIV D」搭載モデルをリリースした新型CX-60。
先行して販売がスタートした「e-SKYACTIV D」と名付けられたディーゼルハイブリッド仕様のほか、純ディーゼルエンジンの「SKYACTIV-D 3.3」と、2.5Lガソリンエンジンの「SKYACTIV-G 2.5」、そしてプラグインハイブリッド仕様となる「e-SKYACTIV PHEV」という4種類のパワートレインをラインナップしている。
そんな豊富なエンジンラインナップの一方で、組み合わされるトランスミッションは、8速のATのみ。せっかくの縦置きFRレイアウトなのだから、これこそ3ペダルMTで走らせたいと思うのがクルマ好きたるものと言えるのだが、なぜCX-60にはMTの設定がないのだろうか?
■デカいSUVにMT需要はない!? いやいや新設計のATなら追加設定の可能性アリ
今回、CX-60にMTが設定されない理由としては「車格やお客さまの使い方を考慮したうえで設定をしておりません(マツダ広報)」という返答があった。
確かにフラッグシップモデルであり、かつクロスオーバーSUVであるCX-60においてはそこまで3ペダルMTを求める層は多くないだろう。実際、CX-60登場以前では最も大型なクロスオーバーSUVとなっていたCX-8にも3ペダルMTは設定されていなかった。
また新たにCX-60に搭載されたトランスミッションは、当然ながら縦置きエンジンに組み合わされるということで、従来とは全く異なる新開発のものが採用されている。それがトルクコンバーターレスという点だ。
従来のATの多くはトルクコンバーターを用いており、変速ショックなどを和らげてくれる反面、どうしてもダイレクト感に劣るドライブフィールとなってしまうという弱点が存在していた。
そこでロックアップ機構を用いて伝達効率を上げる試みもなされているが、ロックアップは伝達効率を向上させる反面、振動やショックを発生しやすくなってしまうというデメリットもあり、そのさじ加減が難しいものとなっている。
一方、CX-60に搭載されたトルクコンバーターレスの8速ATは、トルクコンバーターの代わりにMT車と同じ湿式多板クラッチを用いてダイレクトかつスポーティな走りを実現することに成功したのである。
この8速AT、マツダ独自で開発したものとなっており、その開発コストはかなりの額になることは想像に難くない。今後ラージ商品群にはこのATが搭載されるだろうが、MTまで用意する余裕がなかったという穿った見方もできなくはないだろう。
しかし、裏を返せばすでにMT車と同じクラッチ板を使った多段ATが存在しているということは、同じクラッチシステムを持った3ペダルMTを作るのは造作もないこととも言える。
そう考えると、あくまでCX-60“には”3ペダルMTは設定されないが、今後登場するであろう車種に設定される可能性は大いにあるという考え方もできそうだ。
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