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 国連が定めた持続可能な開発目標(SDGs)は、タイヤにとっても喫緊の課題だ。ミシュランでもSDGsに取り組んでいるが、このほどサステナブル素材の比率を高めた公道用タイヤを開発した。

 タイヤの主成分である天然ゴムは名前の通り天然素材だが、森林保全と両立しなければならない。化石燃料に由来する成分の削減や、カーボンブラックやスチールなどの素材のリサイクルもタイヤのSDGsに向けた課題となっている。

 ミシュランが発表したのは、今のところ乗用車用とバス用タイヤだが、装着本数が多く、走行距離が長いトラック用タイヤは、タイヤメーカーにとってボリュームゾーン。いずれトラック用タイヤにも展開されることだろう。

文/トラックマガジン「フルロード」編集部、写真/ミシュラン・ポルシェ


タイヤ素材の50%がサステナブルに

 フランスのミシュランは2022年10月5日、サステナブル素材を約50%含む世界初の公道走行用タイヤを発表した。

 乗用車用タイヤではサステナブル素材を45%、商用車(バス用)タイヤでは58%含有する。現行タイヤと同等の性能を保持しており、公道走行承認済み。ちなみにモータースポーツ用タイヤだと、6月のル・マン24時間レースで、53%サステナブル素材を含むミシュラン製タイヤが使用されている。

 今回発表した2種のタイヤは、ミシュランが今後3年以内に開発する標準タイヤの未来像を示すものとなる。

 天然ゴムの割合を増やし、再生カーボンブラック、ヒマワリ油やバイオ由来樹脂、籾殻性シリカ、再生スチールを使用することで、サステナブル素材の含有率向上を達成している。

ミシュランはSDGsでも三ツ星をめざす!? サステナブル素材の比率を高めた公道用タイヤを開発
サステナブル素材の比率を58%まで高めたバス用タイヤ。サイズは275/70R22.5

 ミシュランは、2030年に40%、2050年にはすべてのタイヤの100%を持続可能な素材で生産するという意欲的なゴールに向けて、現実的かつ具体的な取り組みを進めている。タイヤの性能に妥協することなく、タイヤの全てのライフサイクル(設計・製造・輸送・使用・リサイクル)において環境負荷低減に配慮する。

 ミシュランには、過去に培った知見と素材分野での3678件の有効特許がある。また、ハイテク素材分野で6000人の専門家を有する研究開発部門があり、全社をあげて2050年の目標達成に向けて取り組んでいる。

パートナーシップを通じて技術開発を加速

 いっぽうで、サステナブル素材におけるイノベーションのスピードや品質の向上をはかり、タイヤを100%持続可能にするためには、新しい技術が必要となることも間違いない。

 ミシュランが様々なパートナーシッププログラムに参加するのはこのためで、リサイクル分野で画期的な技術開発を加速するための情報交換を行なっている。

 たとえば次のような企業・団体・プロジェクトがミシュランとパートナーシップを結んでいる。

●パイロウェーブ(Pyrowave、本社:カナダ)
 廃ポリスチレンからリサイクルスチレンを製造する。スチレンは、ポリスチレンだけでなく合成ゴム製造に使用され、最終的に年間数万トンのポリスチレン廃棄物を、元の製品やミシュランタイヤにリサイクルすることを目指す。

●キャルビオ(Carbios、フランスの新興企業)
 同社が開発したプロセスで、酵素を使用してペットボトルを元の純粋なモノマーに分解し、使用済みペットボトルを繰り返し再利用可能とする。リサイクル素材には、タイヤ製造に使用するポリエステルが含まれ、年間約40億本のペットボトルがミシュランタイヤにリサイクルされる可能性を見込む。

●エンバイロ(Enviro、本社:スウェーデン)
 ミシュランと共にタイヤリサイクルプラントの建設に着工した。カーボンブラック、熱分解油、スチール、ガスなど高品質の再生材料を使用済みタイヤから回収する特許技術を開発。この技術により、タイヤを100%リサイクルすることが可能になる。

●バイオバタフライ・プロジェクト(BioButterfly)
 プロジェクトを主導するアクセンス (Axens、本社:フランス)およびIFPEN(本社:フランス)と、石油由来ブタジエンに代わる、バイオマスブタジエン製造に取り組む。この技術で、木材、籾殻、葉、トウモロコシ茎葉などを原料に、年間420万トンの木材チップがミシュランタイヤへリサイクルされる可能性を見込む。

●ADEME(フランス環境エネルギー管理庁)
 同庁のブラックサイクル(BlackCycle)及びホワイトサイクル(WhiteCycle)プロジェクトと連携し、循環型経済をサポートする。使用済みタイヤを高品質の原材料に変換し、新品タイヤを製造する。

 ミシュランは「すべてを持続可能に」という企業ビジョンのもと、人(People)、地球(Planet)、利益(Profit)の「三方良し」の理想を叶え、2050年までに100%持続可能なタイヤを製造することを約束している。

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