国連人権事務所は8月31日、中国・新疆ウイグル自治区の人権問題に関する報告書を発表し、「テロや過激派対策の名目で深刻な人権侵害が実施されている」などと指摘した。報告書について、日本ウイグル協会理事のサウト・モハメド氏に話を聞いた。
「アメリカ一国の提起と重み違う」
国連人権事務所がウイグル族の人権問題に関する報告書を発表するのは、今回は初めて。在外ウイグル人にとって、今回の報告書は待ちに待ったものだという。
報告書は昨年の夏頃には完成していたのですが、発表が何度も延期されてきたという経緯があります。昨年の12月31、あるいは北京五輪前の今年2月には公表されるのではないかと期待していましたが、発表はなかった。中国側から各国代表に対して公表に反対するよう呼びかける書簡を送るなど、さまざまな圧力があったことが原因です。ずーっと待っていました。
国連人権事務所トップのバチェレ氏の退任日に合わせて発表された。しかも、ジュネーブ時間で日付が変わる十数分前だったという。
バチェレ氏は「退任前には報告する」と話していました。最後の最後になりましたが、それでも公表できたことはありがたく、歓迎しています。
新疆ウイグル問題については、これまでも人権団体やアメリカ政府などによって繰り返し指摘されていたが、国連人権事務所が報告書を提出した意義は極めて大きいという。
国連は世界でもっとも代表的な国際機関であり、アメリカ一国の提起とは重みが違います。国際問題として提起されたことを意味し、中国の外交関係にも影響を与えるはずです。
報告書は新疆ウイグルの状況について「人道に対する罪に相当する可能性がある」と指摘している。だが、中国政府が改善に向けて動く可能性は低い。
報告書が出たからといって、現地の状況が一変するとは考えにくい。決して楽観はできない。報告書がでっち上げだというなら、現地に外国メディアを受け入れて自由に行き来させれば良いのではないか。それが中国政府にとって一番良い反論方法でしょう。
中国政府、猛反発
中国外交部スポークスマンの汪文斌氏は9月1日、英メディアから報告書について質問され、このように答えた。
この評価報告書なるものはアメリカと西側勢力が手を組んで計画、製造したもので、完全に違法かつ無効である。報告書は虚偽情報の寄せ集めで、新疆カードによって中国を牽制しようという政治戦略の道具に過ぎない。人権事務所が国外反中勢力の政治的謀略に基づく杜撰な報告を行ったことは、重大な職責違反である。普遍的、客観的、非恣意的、非政治的という原則に反し、人権事務所がすでにアメリカと西側諸国の共犯者となったことを意味している。
世界の潮流は中国の側にあるという。
アメリカと西側が新疆を混乱させ、中国を牽制するという邪悪な政治的な企みを持ってるとしても、それは道義に背いていて賛同者は少なく、人心の支持は得られない。確実に失敗するだろう。
西側諸国と中国の間にある溝は、埋まりそうにない。