全国旅行支援が始まり一時の大騒ぎは収まったように見えるが、実際はどうなのだろうかと思い、出かけてみた。あまり時間もかけられないので、交通・宿泊がセットになったパックツアーではなく宿泊だけを利用した。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
広島旅行が実質2万円切り!! 3000円クーポンも
問題はどこに行くかということだが、特にどこに行きたいという目的地はなく何となくお好み焼きが食べたいという理由だけで広島にした。今回は夜行バスでは時間がかかるので乗りバスレポートは広島で行うとして往復は航空機(もちろんLCC)利用にした。
成田・広島間はスプリングジャパンが路線を持っている。同社は中国のLCCである春秋航空が日本に設立した航空会社だが、現在は日本航空グループに属している。往復の運賃や空港施設利用料、支払手数料等すべて込みで1万7340円だった。直前にしてはまずまずの安値だと評価した。
一方で宿泊は全国旅行支援が適用になるホテルを選択するのだが、大手のネット旅行会社ではサイトにより締め切ったものや予算を使い切ったのか適用にならないところもあり、正直なところは使いにくいという印象だった。そこでチェーン系ビジネスホテルのホームページで直接探して予約した。
東横インが全国旅行支援適用でシングル4080円というのがあったが、あいにくとシングルは満室。他のプランを見ると同額でツインルームが空いていたので即予約。平日の宿泊なので全国旅行支援の広島県版「やっぱ広島じゃ割」で3000円のクーポンがもらえる。これでお好み焼きが3枚くらいは食べることができそうだ。
航空運賃と宿泊費で2万340円となった。実際にはこれに空港アクセスの交通費がかかるが、成田も広島も空港は不便な場所なのでバスや電車のお世話になるだろう。
成田空港へはコロナ前は第3ターミナル利用に便利なので、京成バスを利用していたが1日15.5往復合ったのが2.5往復に減便されたまま回復する兆しがないので、仕方がなく京成本線で行くことにした。
LCCの第3ターミナル利用の場合は鉄道で行くのは不便で、バスの方が利便性は高いのだが早く回復してほしいと願いながら京成電車を利用した。
スプリングジャパンは夜景予告も!?
スプリングジャパンの機材はLCCでポピュラーなエアバスA320と異なり、ボーイング737-800でだった。良くも悪くもLCCだが、他の日本のLCCとは雰囲気が違うような印象を受けた。
あくまでも記者が搭乗した便がそうだっただけなのかもしれないが、CAさんの雰囲気(空気感)や振る舞いはフルサービスキャリアに近く、かつLCCなのでサービスらしいサービスはないものの非常にシンプルだった。また帰路の便では機長から途中の通過地点と見えるだろう夜景の予告案内があり、夜間のフライトでも楽しんでもらおうという気持ちがうれしかった。
広島空港は山の上にあるので、ターミナルからバスで降りておくと滑走路延長上の航法システム(進入灯橋梁が渓谷に架かる橋)のように見え、あそこを降りていったのかと思うと不思議な気がした。
駅かセンターか?
広島空港では広島市内中心部行きのバスは2路線ある。まずは広島駅に行く路線で、もう一つは広島バスセンターに行く路線だ。両者は都市間高速バスでは順次停車する路線が多いが、空港バスは路線そのものが分かれている。どちらも運賃は1370円で乗車時間は1時間弱だ。
乗り換えはあるが、路線バスで山陽本線の白市駅まで行き電車で広島を目指すルートもある。この場合の合計運賃は1130円だ。記者の場合は駅でもセンターでも良いのだが、ホテルは広島駅前なので駅に行く方が都合が良い。
しかし広島駅行きは待機客でいっぱいだったので、バスセンター行きを選択した。やってきたのは中国ジェイアールバスのいすゞガーラで、8割程度の乗車率で空港を後にした。
お好み焼きは「好み」のソース次第?
広島のお好み焼きはソースにより好みが分かれることもあり、お店ではどのソースを使用しているのかが一目でわかるようにのぼりが立てられていることが多い。もっとも、有名店ではオリジナルのソースを使用している場合もあるが、好みのソースがあれば、のぼりを頼りにお店を探せばよいだろう。
注文はいつも決め打ちで「肉玉そばダブルイカ天トッピング」だ。トッピングも自由な「お好み焼き」なので個人の好みに合わせてソースやトッピングを決める。
関西では「豚玉」と表現される豚肉と卵の基本的なものは、広島では一般的に「肉玉」と称される。しかし広島県内でも地域により特色があるので広島市以外の地域に旅行する場合は、その地域のお好み焼きにチャレンジするのも面白い。地域のお好み焼きが存在する代表例は呉、尾道、竹原、三次、三原あたりだろうか。
ほぼ1日ある時間をどう使う?
復路の航空機の出発時刻は20時過ぎと遅い。LCCは不便な時間帯ほど航空運賃が安くなるので、運賃で決めた以上は仕方がない。よって翌日は丸1日を広島で過ごさなければならない。広島市内でもう一枚のお好み焼きを食べたとしても、時間は相当ある。
別の地域で観光をして、そこから直接空港に行ける場所ということで考えると呉がよさそうだ。呉にはJR呉線と高速バスの2つの行き方がある。もちろんバスを選択した。広島バスセンターから広島電鉄と中国ジェイアールバスが共同で運行しているクレアラインだ。
広島呉道路を経由して呉駅前までは時間帯にもよるが約50分。時間は呉線普通電車と同程度、快速であれば鉄道の方が早い。運賃はバスが670円、鉄道が550円だが、紙屋町や八丁堀付近を起点にすると広島駅までの電車の運賃190円(取材日現在)かかり合計運賃で逆転してバスの方が安くなる。
宇品(広島港)から高速船や旅客船で呉港に行くこともできるが、運賃が高くあまり現実的ではない。
呉は言わずと知れた軍港で栄えた街で、かつては帝国海軍の呉鎮守府が置かれていた。現在でも海上自衛隊の呉地方隊が設置され、関連施設を中心に観光資源にもなっている。食べ物として有名なのは前述した呉のお好み焼きや海軍カレーで、市内のいたるところに提供する店舗がある。
広島空港から成田空港に戻る
呉駅前から広島空港へのバスは広島電鉄が運行していて、広島市内よりは便数は少ないが、乗車時間は約1時間で運賃は広島市内と同じ1370円だ。航空機のダイヤから逆算してバスの便を決めれば、呉市内での滞在時間が算出できる。
広島県は観光資源も地域により異なり美味しい食べ物も豊富で、全部欲張り1回の旅行で楽しまなくても、何度でも行きたくなる特色のある県だ。今回はお好み焼きと呉に特化した1泊2日の旅行だったが、広島県内で乗りバスもでき、美味しいものも食べながら観光もできた大満足の旅だった。
全国旅行支援でもらった3000円のクーポンは、2日間のお好み焼きと飲み代に変身してしまったのは言うまでもない。なお帰路の成田空港では一般の方には煩わしいかもしれないが、LCCあるあるの沖止めでランプバスに乗車できるというおまけつきだった。
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