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 スーパーカーは好きですか? 当編集部は大好きです!! 百年に一度の変革期にあって「社会におけるクルマの位置づけ」が変わりつつあるなか、「趣味としてのクルマ」はそうした世間の風潮とは隔絶した世界観のなかで、それでも進化を続けています。

 21世紀のスーパーカーはどんなふうに進化しているのか?? 自動車評論家の石川真禧照氏がじっくりしっかり動画付でお届けする当連載。今回は、システム最高出力1000馬力を発揮する、フェラーリ初の量産型プラグインハイブリッドモデル「SF90ストラダーレ」をご紹介する!

文/石川真禧照、写真/萩原文博、動画/吉田海夕、コペル

【画像ギャラリー】見れば見るほどカッコいい!! 「SF90ストラダーレ」の華麗なスタイリングはこちら!(16枚)画像ギャラリー

■スクーデリア・フェラーリ創設90周年を記念したモデル

 フェラーリの最新テクノロジーを投入した新世代モデルがSF90ストラダーレだ。このネーミングの意味も奥が深い。 

 はなしは1933年にさかのぼる。当時、フェラーリの創業者であるエンツォ・フェラーリはアルファロメオのファクトリードライバーとしてGPレースで活躍していた。その年にアルファロメオの経営が苦しくなったので、彼はレーシングチームの運営を引き受けた。そこで名付けたのがスクーデリア・フェラーリ(SF)。フェラーリレーシングチームとしてアルファロメオでレースに参戦した。そのマシンのフェンダーにはうしろ足で立った馬のマーク、いまのフェラーリのエムブレムが描かれていたのだ。

フェラーリ創設90周年記念モデルとなる「SF90ストラダーレ」。フェラーリが、レースで培ったノウハウやテクノロジーが詰め込まれている

 2022年、スクーデリア・フェラーリ誕生から90年を経過したことを記念して、SF90がつくられたというわけだ。

 そのモデルは新世代に向かう新しいフェラーリを象徴したモデルだ。

 パワーユニットはフェラーリ史上、はじめてプラグインハイブリッド方式が採用された。フェラーリのV8ガソリンエンジンに、モーターが組み合わされ、しかもバッテリーは充電ができるプラグイン。モーター走行だけで約25km走行できる。

 モーターは3基搭載された。2基は前輪駆動用、1基はエンジンとミッションの間に置かれ、後輪を駆動する方式。

 これまでフェラーリのスポーツカーに4WDはなかった(2+2ルッソはスポーツカーではない)ので、史上初の4WDスポーツカーがこのSF90ストラダーレということになる。

V8エンジン単体の最高出力は780ps。これに1基のリアモーターと、2基のフロントモーターを加えたシステム総合出力は1000ps!!

 ミッドシップのV8エンジンは4.0Lターボ。780ps、800Nmの性能を発揮する。3基のモーターは220psなので、出力合計1000psのスーパースポーツということになる。

 組み合わされるミッションも新開発の8速F1デュアルクラッチトランスミッションが投入された。

■恐ろしいほど速い!! 新世代のフェラーリ

テールの高さを視覚的に低く見せるため、テールライトは伝統の丸型から横に長い輪の形状に

 スタイリングも新世代に移行した。1999年にデビューした360モデナからのミッドシップデザインから脱却した、とフェラーリは説明している。デザインを担当したのはフェラーリ・デザインセンターのチームという。

 フロントやテールのデザインはこれまでのミッドシップフェラーリとは趣が異なっている。その影響なのか、初めて対面したSF90ストラダーレは、ブリティッシュレーシンググリーンのようなダークグリーンにシルバーのストライプという、これまでのフェラーリにはあまり見られないカラーリングでボクたちの前に登場した。

 プッシュ式のドアボタンを押し、運転席に座る。ドアを開けるとドアシルに「Assetto Fiorano」の文字が。SF90はフェラーリとしては初めて標準仕様とスポーツ指向仕様のバージョンを設定した。

「Assetto Fiorano」はスポーツ仕様の名称で、GTレーシングからのアップグレードアイテムが数多く装備されている。まずマルチショックアブゾーバー、ドアパネルとアンダーボディはカーボンファイバー、スプリングとエグゾーストライン全体はチタンを用いている。これらで約30kgの軽量化を達成した。さらにカーボンファイバー製リアスポイラーも加わる。タイヤもミシュランパイロットスポーツカップ2を専用に開発し、装着している。

フレームにカーボンが使用されたバケットシート。シートはリフトアップのみ電動

 クルマの印象だが、かなりレーシーな仕上げだ。運転席もシートの上下は電動だが、スライドやリクライニング、ハンドルのテレスコやチルトもすべて手動式だ。グローブボックスも省略されている。

 ハンドルスポークの左にあるダイヤルはEV/HV/充電/1000psの4モードが選べる。走り出す前のレクチャーで、「1000psモードは公道では使用しないで下さい」と厳命を受けたので封印。

 ハンドルスポーク右の赤いダイヤルはWET/SPORT/RACE/CT OFF/ESC OFFが選べる。もちろん通常走行はSPORTで十分。8速ATのシフトはH型のシフトを模してはいるがR/A/M/Lはすべて各々のレバーを操作する。マニュアルシフトはパドルだけで行なう。

メーターパネルは、ドライバーに向かって湾曲した16インチのフルデジタルスクリーンを採用。操作系はステアリングに集中している

 シートポジションを調節し、ハンドルに設置されているスターターを押し、走り出す。ハンドルは重めの操舵力。カーブでは抵抗感もあり、さらに重く感じる。

 EVモードで走行してみる。電池の総容量は7.9kwhなので、EV走行は25kmが限界。それでも充電することができるので、街中での日常使いはEVとして使える。エキゾースト音もさせずにスルスルと走るフェラーリは新時代のスーパーカーのイメージだ。

 HVモードで走る。街中でのV8、4.0ターボ+モーターの走りは大人しい。60km/hで7速に入り、1400回転あたりで巡航できる。高速走行でも100km/h巡航はDレンジ8速1600回転。7速でも2300回転なので、エキゾースト音の侵入も少ない。乗り心地は硬め。上下動もソリッドに伝わってくる。

 ただし、ハンドリングに関しては、かなりクイック。手首の動きでノーズは瞬時に向きを変える。その動きはレーシングカー的。公道の高速コーナーでは気を使う。日本の一般道や高速道路では上下動も発生し、ややハネ気味。そのセッティングはサーキット路面に合わせてあるかのようだ。

 ここまでは一般公道モードを主体に走行してきた。さすがに1000馬力モードは試せないが、HVモードでの加速をちょっとだけ味わってみたくなった。そこで0→100km/h加速にトライ。スタートと同時にモーターパワーで一気に頭がヘッドレストに押しつけられた。エンジン回転計は8000回転。ハンドル上部の内蔵された高回転表示ランプも点灯する。思わずアクセルをちょっとゆるめてしまった。全開はサーキットの幅広い直線コースでしか試せない! と思ったそれでも3秒台! さらに過激な1000馬力モードだとどんな加速をするのだろうと思うと恐ろしくなる。

 スクーデリア・フェラーリ創設90周年を記念したモデルは電動シートやグローブボックスも省略したスパルタンなモデルだったが、一方でプラグインハイブリッド方式を採用し、モーターも用いた4輪駆動を採用している。レーシングシーンを一番大切にするフェラーリが考える、将来のレーシングカーの姿をひと足先に市販車で味わせてくれたのが、SF90ストラダーレなのだ。

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