10月2日に大分県のオートポリスで開催された2022スーパーGT第7戦『FAV HOTEL AUTOPOLIS GT 300km RACE』の決勝レース。前日に行われた予選Q1でスピンを喫してしまった37号車KeePer TOM’S GR Supra(サッシャ・フェネストラズ/宮田莉朋)は、ピットスタートから追い上げを披露して9位に入賞した。
前日の行われた公式予選Q1で、フェネストラズがステアリングを握る37号車は最終アタックの最終コーナーでバランスを乱し、アウト側の縁石を超えてしまったことでスピンを喫してしまう。幸いにもマシンはコース上に留まりクラッシュすることはなかったが、痛めたタイヤを交換するため、決勝レースはピットレーンからのスタートを選択した。
「四輪すべてにダメージがありましたが、特にそのなかの一輪がひどかったのでピットスタートを選択しました」と語るのは、第1スティントを担当した宮田莉朋だ。
宮田は「ピットスタートも初めての経験ですし、スタートを担当したのも2回目くらいなので『大丈夫かな?』とは思いました(苦笑)」とそのときの心境を振り返った。
迎えたスタートでは、GT500クラスに続いてGT300クラスの全車が通過してからピットレーンを離れた37号車。宮田はGT300の集団をかき分けながら「予選で選択したものと同じコンパウンド」でスティントを進めていった。
「決勝は僕のスティントを引っ張りましたがペースも悪くなく、40周近くを走行しても1分38秒台で走ることができました。燃費走行をしながらの周回だったのでピットタイムもだいぶ短縮でき、自分のなかでできることは果たしたと思います」
この走りを「作戦どおり」とまとめた宮田は41周目にピットへ向かい、第2スティントのフェネストラズにドライバーを交代する。ステアリングを引き継いだフェネストラズは12番手でコースに復帰すると、その後は1分39~40秒台のタイムをコンスタントに記録し、56周目に9番手に上がると、その順位をキープしたままチェッカーを受けた。
この結果に宮田は「(スタートから)1分くらいあった差を39秒差に縮めることもできたので、良かったなと思っています」と語ったものの、ペースが良かっただけに予選でのスピンが悔やまれる展開になった。
「サッシャ(フェネストラズ)には強く言おうかなという感じですけど(笑)」と切り出した宮田は、2022年シーズンが“初めて”づくしとなるTGR TEAM KeePer TOM’Sの状況を語り、スピンは「プッシュした結果」ということを強調している。
「僕の方もトムスとブリヂストンタイヤ初年度で、サッシャもGT500フルシーズンで全国各地のサーキットに行くのは初めて(2020年はコロナの影響で富士、鈴鹿、もてぎのみで開催)の年です。本当にふたりとも経験がないですし、(大立健太)トラックエンジニアも今年が初めてで、経験と基準がないなかでずっとレースをしていて、本当にすべてのことが初めてのことになります。なので昨日のサッシャのスピンも仕方なく、プッシュした結果だと思います。ただ、それがなければというタラレバはあります」
そんな初めてづくしの37号車は残り1戦となった今季、ポイントランキングトップの3号車CRAFTSPORTS MOTUL Z(千代勝正/高星明誠)から20点差のランキング5位につけ、最終戦での逆転チャンピオンに望みをつないでいる。
「とはいっても、やはりGRスープラが厳しいということはランキングで証明されています」
宮田が言うように、他のトヨタ勢は14号車ENEOS X PRIME GR Supra(大嶋和也/山下健太)がランキング6位でチャンピオンへの権利を残しているものの、それ以外のチームはすでにタイトル争いからは脱落という状況になっている。
また、前戦SUGO終了時点でトヨタ内ランキングトップだった37号車は、この後に最終戦の舞台であるモビリティリゾートもてぎで行われるタイヤテストへの参加が決まっており、宮田はそのタイヤテスト参加がチャンピオンへのカギを握ると語った。
「僕らにとって(テスト参加は)すごくいい機会です。しっかりとテストを行い、もてぎでも最終戦らしいパフォーマンスを発揮できるようにしたいです。また、その最終戦ではしっかりとポールポジションを獲り、そして優勝してチャンピオンを獲ることができるように、このオートポリスでの反省点を踏まえて分析していければいいなと思っています」
宮田とフェネストラズはともに1999年生まれで23歳のGT500最年少コンビ。もし最終戦で逆転チャンピオンに輝くことになれば、2017年に同じく37号車KeePer TOM’S LC500のステアリングを握った平川亮/ニック・キャシディ組の最年少王者記録に並ぶことになる。マシンはGRスープラとなったが、同じくKeePerカラーを纏う37号車が最終戦もてぎでどんな戦いをみせてくれるのか期待したい。