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Image:Ascannio/Shutterstock.com

最先端のチップ製造技術には多額のコストがかかる。プロセスルール(半導体の回路線幅)を微細化させるとなると、なおさらだ。

先日、アップルが台湾TSMCの値上げ要求を拒否したことが報じられたが、今回再び、TSMCが来年から最大6%値上げすると、多くの顧客へ通知したとの噂が報じられている。

TSMCは現在、8インチと12インチのウェハー(シリコン単結晶でできた薄い板)を提供している。台湾メディアの経済日報によると、8インチウェハーは6%、12インチは3〜5%の値上げになるという。

今回の報道でもアップルが一度は値上げを拒否したことを再確認しており、もう1つの大手顧客であるNVIDIAもそれに追随する(同じく拒否した)としつつも、TSMCが値上げを踏み切る意図に水を差すものではないと報じている。アップルはTSMCの年間売上高のうち25%以上を占めると推定されているが、いずれはTSMCの要求に屈せざるを得ないようだ。

とはいえ、他の半導体ファウンドリーがチップ不足のなかで大幅に値上げしたのに対して、TSMCの価格は比較的緩やかだったため、現状では低めの価格に収まっている。そのため今回の値上げも不合理ではない、と市場では捉えられているようだ。

事実、先日の報道では、先端プロセスについて6~9%程度の値上げを行う予定だとされていた。さらに値上げ幅も同業他社と比べ高くなく、「仏心」と言える水準と評されていたこともあり、アップルとしても価格据え置きの無理強いはやりにくいかもしれない。

2023年の「iPhone 15 Pro」と「iPhone 15 Ultra」に搭載される「A17 Bionic」(以上、すべて仮称)は、TSMCの改良型3nmプロセスで製造されると噂されている。そのチップ製造コストも上昇する可能性が高まった格好だ。

さらにアップルは、「iPhone 15 Pro」と「iPhone 15 Ultra」の差別化をさらに推し進めるとのアナリスト予測もある。これに円安の進行も加わったとしたら、来年のiPhone上位モデルはかなりの値上げを覚悟した方がよさそうだ。