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「QuietComfort Earbuds II」。カラーはブラック。価格は3万6300円(Boseオンラインショップの場合)

ボーズの最新完全ワイヤレスイヤホン(TWS)、「QuietComfort Earbuds II」(QC Earbuds II)が発売になった。ボーズが力を入れて作った製品だけに、確かにかなり魅力的なTWSに仕上がっている。

ちょうど第2世代AirPods Proが出たばかりということもあり、両者の比較が気になっている人もいるのではないだろうか。今回はそのあたりも含め、実際に使いながら考えてみよう。

9月23日に発売になった「第2世代AirPods Pro」。価格は3万9800円(アップル直販の場合)

耳への「付け心地」にも2社の違いが

TWSがヘッドホン/イヤホンの主力市場になって、すでに数年が経過している。その起爆剤になったのがアップルの「AirPods」であるのは間違いない。当然、オーディオメーカーとしては競合を考える必要に迫られ、各社が積極的な製品展開を行ってきた。

「QuietComfort Earbuds II」の箱は黒。白のAirPods Proとは好対照だ

ボーズもそんな会社の1つだ。特に同社は「ノイズキャンセル」機能で支持されてきた企業でもあり、TWSでもノイズキャンセルで負けるわけにはいかない。これまでも決して劣っていたわけではないが、さらに機能を磨いた新機種として出てきたのが「QuietComfort Earbuds II」というわけだ。

ケースのサイズ的にはAirPods Proより少し大きいが、手のひらに入る程度のサイズ感、という意味ではあまり大きな違いはない。イヤホン本体は、耳から飛び出る部分が棒状で小さく見えるAirPods Proに対し、幅が広く大きめではある。

左がQuietComfort Earbuds II、右がAirPods Pro。横幅はAirPods Proの方が大きく、縦の長さではQuietComfort Earbuds IIが長い。結果としてQuietComfort Earbuds IIの方が大きくは感じる

耳へ入れた時の安定度でいえば、QuietComfort Earbuds IIの方が高いと感じた。ただし、その分耳への負担というか「装着している感」は、AirPods Proの方が軽くなっている。

QuietComfort Earbuds II本体。耳への圧迫感が多少あるが、AirPods Proより安定感がある
左がQuietComfort Earbuds II、右がAirPods Pro。サイズ自体はそこまで差がないのだが、耳から飛び出す「棒」の長さはAirPods Proの方が長い

両者の違いは「存在感・安定感の強いBose」と「あくまで自然さを重視するアップル」という、両社のキャラクターの違いがはっきりと出ている印象を受けた。このことは後述する「音質」にも影響してくる要素だ。

Boseは騒音を消す「快適さ」、アップルは「自然さ」

まず、やはり競争の軸である「ノイズキャンセル」から。単純に「騒音が消える」という意味では、QuietComfort Earbuds IIの方が上手く消えていると思う。第2世代AirPods Proも初代に比べるとノイズキャンセルが強化されているが、比較的高い音や人の声は強くキャンセルしない傾向にある。それに対してQuietComfort Earbuds IIは、全域でノイズキャンセルが強目にかかる。

一方、これは個人差もありそうなのだが、QuietComfort Earbuds IIは少し耳への圧迫が強く、静かな環境では逆にホワイトノイズも気になった。このノイズキャンセルについての違いは、おそらく両社のポリシーの違いなのだと思う。

QuietComfort Earbuds IIの装着イメージ(Image:Bose)

ポリシーの違いは、「外音取り込み」(QuietComfort Earbuds IIでは「アウェア」という名前になっている)からもわかる。ノイズキャンセルに使う外界音取り込み用のマイクを活かし、周囲の音をヘッドホン利用中にも耳に届ける「外音取り込み」機能は、多くのヘッドホン・イヤホンに搭載される機能になっている。

この機能の方向性が、AirPods ProとQuietComfort Earbuds IIでは大きく異なっている。第2世代AirPods Proは、とにかく「自然」だ。外音取り込みがオンの状態で使うと、まるでイヤホンをつけていないかのように感じるほどだ。

それに対してQuietComfort Earbuds IIは、やはり「マイクで聴いている」感が強い。一方、外音自体が耳障りでない音量にチューニングされていて、声はむしろはっきり聞こえる。

耳障りな音を自動的に小さくする、という要素は第2世代AirPods Proにもあるのだが、アップルの考え方は「耳に悪影響を及ぼす大きな音(85dB以上)のみ小さくする」という考え方になっている。それに対してQuietComfort Earbuds IIは、数値で示されないのではっきりとはわからないものの、そこまで大きな騒音でなくても小さい音にし、耳に届けているようだ。

「自然さ」と「快適さ」という面で、やはり2社は同じような機能でも、向いている方向が違うように感じた。

音質も異なるキャラクター、「空間オーディオ」の価値で評価が分かれる

では「再生される音楽の音質」はどうだろうか? どちらの製品も、いわゆる「ハイレゾ」には対応していない。音声伝送に使われるコーデックは、両者ともSBCおよびAAC。この点は過去の両社製品から変わりはない。だがTWSの利用シーンを考えると、ハイレゾでなければならない場面は少ない。圧縮伝送であっても「そのシーンで快適に良い音が聞けるか」という点が重要だ。そこは両モデルともに十分クリアしている。

率直にいえば、音質の点で第2世代AirPods ProとQuietComfort Earbuds IIは「甲乙つけがたい」と感じる。正確には「キャラクターが違うのでどっちが上とは言いがたい」というところ。QuietComfort Earbuds IIはボーズらしく低音が豊かで、広がりがある音。第2世代AirPods Proは全体に自然で、中域から広域の煌めき感が豊か。どんな楽曲を聴くかによって相当に好みが分かれそうだ。

ただ第2世代AirPods Proは、Dolby Atmos楽曲を中心とした「空間オーディオ」へ対応していることが大きい。ヘッドトラッキングを使った位置認識に加え、iOS 16では個人の顔や耳の形状に応じた最適化も行われている。そのため、第2世代AirPods Proは特に、iPhone+Apple Musicの組み合わせで使ったとき、音の広がり感という点で大きな違いが生まれる。QuietComfort Earbuds IIは、このポイントについてはちょっと不利だ。

アップルは「空間オーディオ」を訴求している(Image:Apple)

アップル製品特化か、それとも「万能性」を選ぶのか

第2世代AirPods Proは、iPhoneなどのアップル製品と組み合わせた時に、やはり最大の価値を発揮する。例えば、iPhoneで音楽を聴いた後にMacで再生を切り替えたり、Apple TVで使いたいと思った時など、Bluetoothのペアリングを自然に適切な機器へと切り替えてくれる。この快適さは、なかなか他のデバイスでは味わえないものだ。

ただ、それはやはりアップル製品同士でのことだ。好みの音にいじって楽しむ、Androidでも使うという要素があるなら、QuietComfort Earbuds IIは第2世代AirPods Proよりも良い点が多い。

これはセットアップについても同様だ。アップルはiOS/iPadOS向けに特化しており、AirPodsのセットアップをOSの機能に組み込んでいる。一方でQuietComfort Earbuds IIはOSプラットフォーマーが作っているわけではないので、そういうわけにはいかない。

ただし今はアプリ(Bose Music)をインストールすれば、そこから設定が行えるようになっている。アプリを入れさえすればどのプラットフォームでも簡単に行えるという言い方もできる一方で、「アプリを必ずインストールする必要がある」ともいえるわけだ。

ペアリングを含めた設定は、iPhone・Androidともに「Bose Music」というアプリから行う
Bose Musicの画面。音量調整や各種設定、ペアリングして使う機器の切り替えなどはこのアプリから行う
イコライザー機能があるので、音の感じはある程度好きなように変更できる

アプリが必要ではあるが、QuietComfort Earbuds IIはアプリからイコライザーを使って、音質をかなりいじれる。第2世代AirPods ProもiOSからならば、ある程度変更も可能だが、あくまでちょっとした補正といった趣である。

そういった点を含めても、「アップル製品同士に特化した際に最大の価値を発揮する第2世代AirPods Pro」と、「そこまで機能的付加価値はないが、どの製品と組み合わせても高い価値を提示するQuietComfort Earbuds II」は、向いている人が違う製品、といえるだろう。

そして、そのあたりの違いは、充電に使う端子がLightning端子(AirPods Pro)か、USB Type-C端子(QuietComfort Earbuds II)かという、細かなところにも表れているのだ。