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 11月5日、栃木県のモビリティリゾートもてぎで開催されたスーパーGT第8戦『MOTEGI GT 300km RACE GRAND FINAL』の公式予選。GT300クラスのQ2では、ランキング2位につけるSUBARU BRZ R&D SPORTが、アタックラップでクラッシュを喫する衝撃のシーンがあった。予選後井口卓人、そしてアタックを担った山内英輝に、状況と翌日の決勝に向けて聞いた。

 チャンピオンがかかった最終戦。今季これまで4回もポールポジションを獲得していたSUBARU BRZ R&D SPORTが、ビクトリーコーナーを果敢なラインどりで攻め、立ち上がってきた。タイトルを争うライバルたちにプレッシャーをかけるべく、今回も山内の渾身のラップが記録されるかと思った刹那、信じられない光景が飛び込んできた。アウト側の縁石に乗った直後、BRZが突如姿勢を乱しスピン状態に。サインガード側のコンクリートウォールに激しくクラッシュしてしまったのだ。

 タイトルを争うリアライズ日産メカニックチャレンジ GT-Rまではわずか2.5ポイント差。連覇という大きな目標に向け、「いくしかない」という意気込みで臨んでいたSUBARU BRZ R&D SPORTは、11月5日の予選Q1では井口がアタックを担当。1分46秒133から1分45秒863と2周連続でタイムを上げ、2番手でQ2進出を果たした。

 GT500のQ1を挟み、迎えたQ2。アタッカーを務めた山内は「あのラップに集中していました」と全セクターで最速タイムを更新していく。面目躍如の走りで素晴らしいタイムが記録されるか……と思った瞬間のクラッシュだった。

「アウト側の縁石はグリーンの部分までは使わないのですが、縁石ギリギリまで入っていったところ車体の下部が当たってしまい、コントロール不能になってしまいました」と予選後、キッズピットウォークを終えた後もまだ目に光るものを溜めながら、山内はしぼり出すように状況を語った。

 過去に記憶にすらないほどの山内の単独走行でのクラッシュ。タイトル争いのプレッシャーとは思えないが、「スーパーGTのレースウイークでクラッシュするのは、たぶん初めてだと思います」と自身、ショックを隠しきれていない様子だった。一方、ピットで見つめていた井口も「セクター途中まではすごく良かったので『これはきたな』と思ったのですが……。驚きました」と衝撃を隠せなかった。

 このクラッシュで、SUBARU BRZ R&D SPORTは第8戦を16番手からスタートすることになる。空力にその速さを依存する部分が大きいBRZにとって、グリッド中団からのスタートは大きなハンデになるのは間違いない。

 しかし、ふたりはスタンドで、そして全国で応援するファンのためにも、まだ諦めの表情をみせていない。「本当に……もう……応援してくださるファンの皆さんに申し訳ないという気持ちでいっぱいなのですが、この状況のなかでも諦めず、精一杯レースを頑張りたいと思っていますし、メカニックさんもみんな諦めず、クルマを修復してくれています」と山内は顔を上げた。

「明日は自分がやるべきことを、しっかりとやっていきたいと思います」

 そしてその言葉を受け井口は「最後まで諦めないという気持ちがいちばんなのですが、何かあったとき、まわりが助けるのがチームですから」と力強く語り、追い上げを誓った。

「今まで山ちゃん(山内)にたくさんポールポジションを獲ってもらいましたし、昨年も山ちゃんがいなかったらチャンピオンは獲れませんでした。そのお返しを、チームみんなでしなければいけないです」

 そう井口が語った直後、山内の目からふたたび大粒の涙がこぼれ落ちた。

2022スーパーGT第8戦もてぎ 予選Q2でクラッシュした山内英輝が申し訳なさそうにBRZに手を置いた。
2022スーパーGT第8戦もてぎ 予選Q2でクラッシュした山内英輝が申し訳なさそうにBRZに手を置いた。
2022スーパーGT第8戦もてぎ 予選Q2でクラッシュしたSUBARU BRZ R&D SPORT
2022スーパーGT第8戦もてぎ 予選Q2でクラッシュしたSUBARU BRZ R&D SPORT
2022スーパーGT第8戦もてぎ 予選後、R&D SPORTのピットでは修復作業がスタートしていた。
2022スーパーGT第8戦もてぎ 予選後、R&D SPORTのピットでは修復作業がスタートしていた。