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 モビリティリゾートもてぎで開幕した2022年のスーパーGT最終戦。予選から緊迫した争いとなったGT500クラスでは、2.5ポイント差で逆転を狙う12号車カルソニック IMPUL Zが3番手を獲得し、3号車CRAFTSPORTS MOTUL Zが4番手と揃って上位グリッドにつけた。タイトルを争う同じ陣営の2チームに、予選後の手応えを聞いた。

■バケット渾身のアタックで今季ベストグリッド獲得の12号車。平峰一貴も「楽しみ」と笑顔

 午前中の公式練習でトップタイムを記録し、最終決戦に向けて好調なスタートを切った12号車。その勢いは、予選になっても衰えることはなかった。Q1では平峰一貴が担当し、1分36秒244をマーク。激戦のQ1でギリギリ8番手通過を果たした。続くQ2ではベルトラン・バケットがステアリングを握り、各コーナーで火花を散らしながら1分35秒752と大幅にタイムを伸ばし、3番グリッドを手にした。

「まずはフリー走行でトップタイムを取れたのが良かったし、すごくポジティブな状態で午後の予選に臨めた。そこでも良いアタックができて3番手を獲得できた。チームが素晴らしい仕事をしてくれて、今シーズンではベストグリッドだし、なにより3号車の前で予選を終えられたのは大きい。決勝ではそのままの順位を維持したい」と、笑顔のバケット。それもそのはず、実は12号車としては今季ベストの予選結果だったのだ。

「今シーズンは予選のペースに苦労していて、良くても7~8番手くらいだった。それが、この最終戦で今季ベストのグリッドポジションを獲得できた。本当にチームが素晴らしい仕事をしてくれた。特に前回(第7戦オートポリス)から今回で予選ペースを大きく改善することができた。すごく良い予選だった。何より3号車の前に出られたというのが、今日一番の収穫だった」と、バゲット。

2022スーパーGT第8戦もてぎ ベルトラン・バゲット(カルソニック IMPUL Z)
2022スーパーGT第8戦もてぎ ベルトラン・バゲット(カルソニック IMPUL Z)

 今回の予選では同じくタイトルを争う17号車Astemo NSX-GTが10番手に沈んだ一方で、奇跡の逆転を狙う100号車STANLEY NSX-GTがポールポジションを奪った。バケットはホンダ勢の動きを警戒しつつも、一番のライバルは3号車になるだろうと予測した。

「100号車とはポイント差も大きいし、仮に彼らが優勝したとしても、僕たちが表彰台圏内に入れば問題ないと思っている。もちろん17号車の存在も気をつけなければいけない。予選ポジションでは後方になったけど、レースでは何が起こるか分からない。FCY(フルコースイエロー)やSC(セーフティカー)の導入タイミングで、流れが大きく変わることだってあり得る。だから、明日は運も必要になるだろう」

「でも、もっとも警戒しなければいけないのは3号車だ。彼らは間違いなく決勝でも強いとも思うし、ミシュランタイヤはロングランが強くて、スティントの後半で速さをみせる傾向があるから、予選で前に出たからと言って油断はできない。たぶん彼らが一番のライバルになるだろうから、そこに打ち勝つために今夜しっかりとデータを見直して、明日のウォームアップも含めて、決勝に向けてさらに良いセットアップを見つけていかなければいけない。レースはタフな展開になるかもしれないけど、とにかくベストを尽くすことだけに集中したい」

 相方を務める平峰も「タイムとポジション自体は良かったのかなと思います。ただ、大事なのは明日なので。明日も同じような内容で終えられると良いですけど……何も変に期待することなく、いきたいですね」と、予選を振り返るコメントとしては控えめだったが、その表情からはかなりの手応えをつかんでいる様子だった。

「こういう経験は、なかなか出来ないことですからね。いつもピリピリした感じでやってはいるのですけど、最終戦でシリーズタイトルを争っているという経験は今までなかったので、すごい楽しみだなと思っています。もちろん、よい緊張感もあるし、チームのみんなも感じていることなので、しっかり自分たちの持っている力を出し切りたいなと思います」

 また、ライバル勢のグリッドポジションについては「(ライバルのポジションを)気にしているとか気にしていないとかではなくて、みんなお互いに良い意識を持ってやっているので、正直走ってみないと分からないところがあります」と冷静に分析している様子。

 決勝のログランペースについても「悪くはないと思います。それが周りと比べてどうなのかは、これからミーティングをして、みんなで確認しますけど……今のところは悪くはなさそうですけど、別に飛び抜けて僕たちが良いわけでもないので、良い勝負になるのだろうなと思っています」と語っていた。

■「悔いが残る予選」と3号車の高星明誠。12号車の後ろの順位に悔しさを滲ませる

 一方、ランキング首位で最終戦を迎えた3号車は予選で12号車の背後となる、予選4番手。気温と路面温度が他の大会と比べても低いということもあり、各車ともウォームアップは念入りに行なっていたが、ミシュランタイヤを履く3号車は、Q1担当の千代が計測2周目、Q2担当の高星が計測3周目と早めにアタックラップに入っていった。

「だからと言って、僕たちがソフトだったというわけではありません。ミシュランが持っているポテンシャルを活かした戦術だった」と高星。その作戦が効力を発揮したのか千代が7番手でQ1を突破し、Q2の高星が1分35秒916で4番手につけ、明日の決勝を考えても好ポジションを獲得した。

 だが、予選後のふたりに笑顔はなかった。「12号車の後ろということだけが悔しいところですね。12号車の前で4番手ならばすごく嬉しかったと思うし、そういう意味ではランキングを考えても、悔いの残る部分ではあるかなと思います」と高星。

 同じく千代も「予選のポジションも悪くはないですけど、12号車がひとつ前にいるので、そこは抑えたかったところではあります」と悔しさを滲ませていた。

 ポールポジションを獲得した100号車をはじめ、10番手から追い上げを狙う17号車の動きも気になるのだが、ふたりとも12号車をかなり警戒していた。

「明日は12号車との争いになると思います。その点では、明日はひとつ抜かなければいけないという仕事が残っているので、その仕事をちゃんとこなせるように、チーム全員で頑張りたいです。向こう(12号車)も、この順位は絶対に守ってくるだろうと思っています。もちろんニッサン勢としては、2台でぶつかるとかはやめてほしいと言われていますし、それで100号車とか17号車に(チャンピオンを)持っていかれるのは癪(しゃく)ですからね。ただ、コース上に出たら真剣勝負なので……とにかく良いレースをしたいです」(千代)

「正直、100号車があれだけ速いというのは思っていませんでした。もし彼らが勝って、僕たちが8位とか9位だったら(チャンピオン争いでは)やられてしまうだろうし、そういう意味では100号車も見ていますし、17号車も見てはいます。ただ、一番のライバルは12号車なです。ポイントや予選の順位など総合的に考えても、直接的なライバルは12号車だと思っているので、まずは彼らをカバーしていきたいなと思っています。ミシュランはウォームアップも良いし、ロングランも強い方なので、そこをフルに活かして、レースに挑んでいきたいなと思います」(高星)

 自力での逆転チャンピオンの可能性を残していた17号車が、後方に沈んだことを考えると、実質的に12号車と3号車の一騎打ちという雰囲気になってきたのは確か。予選結果を踏まえて、さらにお互いを意識して警戒をしている印象だったが、それが決勝レースでどう影響してくるのか。今年もGT500王座をかけたバトルは、最後まで予想がつかない展開になっていきそうだ。

2022スーパーGT第8戦もてぎ 千代勝正と高星明誠(CRAFTSPORTS MOTUL Z)
2022スーパーGT第8戦もてぎ 千代勝正と高星明誠(CRAFTSPORTS MOTUL Z)