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フェラーリ ローマ

 スーパーカーは好きですか? 当編集部は大好きです!! 百年に一度の変革期にあって「社会におけるクルマの位置づけ」が変わりつつあるなか、「趣味としてのクルマ」はそうした世間の風潮とは隔絶した世界観のなかで、それでも進化を続けています。

 21世紀のスーパーカーはどんなふうに進化しているのか?? 自動車評論家の石川真禧照氏がじっくりしっかり動画付でお届けする当連載。今回は、V8エンジンを搭載する2+2クーペ、フェラーリ「ローマ」をご紹介する!

文/石川真禧照、写真/萩原文博、動画/吉田海夕、コペル

【画像ギャラリー】美しすぎるクーペ! フェラーリ「ローマ」のデザインを写真でじっくりチェック!!(16枚)画像ギャラリー

■エレガントなデザインの新世代フェラーリ

 フェラーリがV8エンジンをフロントに搭載し、後輪を駆動するスポーツカーを発売したのは2008年の「カリフォルニア」から。このシリーズは「カリフォルニアT」「ポルトフィーノ」「ポルトフィーノM」と続き、現在も人気モデルになっている。

「ローマ」はこの路線とは別の、ラグジュアリーロマン的路線のニューモデルだ。イメージはローマに住む富豪が所有するフェラーリ。

 サーキットを豪快に走るというより、アウトストラーダをツーリングしたり、近郊のレストランに食事に行くときに乗る(もちろん美女を助手席に招待し)スーパーカーとして登場した。

2019年11月に発表されたV8エンジン搭載のFRクーペ「ローマ」。価格は2682万円!!

 その存在はこれまでのフェラーリとはやや違う世界にある。そのためにボディデザインもこれまでのフェラーリとは一線を画している。例えばテールランプは丸型ではない。フロントマスクもグリルとヘッドライトのデザインは最近のフェラーリのイメージではない。それは1960年代あたりの「250GT」「275GTB」「410スーパーファスト」のイメージに近い。

 当時のデザイナーやエンジニアたちは、同じクラスで最高の空力パフォーマンスを実現させるために、多くの先端技術を開発し、実用化した。「ローマ」もそうした例にもれず、最先端の技術が導入されている。

シンプルで流麗なリアデザイン。湾曲した小さなリアウインドウには、可動式のリアスポイラーが組み込まれている

 例えばリアウインドウと一体化した可動リアスポイラーもそのひとつ。格納時はフォーマルなボディの一部になり、高速走行時は自動で起動し、安定したダウンフォースを発生する仕組みだ。

 内装に関してもパドルシフトのレバーはコラムから生え、指の動きでダイレクトにシフトするが、他の操作は大半がタッチスイッチになってしまった。トグルスイッチやプッシュボタンのコクピットが懐かしい、とちょっぴり過去に浸ってしまうほどに、ローマの操作系は未来指向になっている。

 ドライバーの目の前には16インチのHDスクリーンが備わっている。ここに7500~10000回転がレッドゾーンのエンジン回転計を中心とした計器や操作系が浮かび上がる。全面をナビ画面に切り替えることもできる。

 センターパネルには8.4インチのHDディスプレイが2基、備わっている。インフォテイメントや空調の調節はここで行なう。と、ここまでは他の最新スーパーカーに備わっている装備。

助手席の前にも、オーディオやナビが操作できるタッチパネルを設置

 ローマは、助手席の前にも8.8インチのフルHDカラータッチスクリーンを備えている。助手席のパッセンジャーが独自に目の前のスクリーンで車両のパフォーマンスの数値や状況を確認できる。さらに音楽の選択、カーナビの確認、エアコンの調整などの操作ができる。果たしてこのクルマの助手席に乗るような女性がこうしたことに興味があるか疑問だが、新しい試みではある。

 他社のスーパースポーツモデルがこの装備を採用するのも時間の問題かもしれない。

 室内では+2の後席にも触れておきたい。このシートはクッションもなく、頭上も身長150cmが限界。レッグスペースもツマ先は前席下に入るものの、広さはミニマム。左右1名分ずつのスペースはコートなどを置く場所と割り切ったほうがよさそうだ。後席の背もたれは上半分が、トランクのスイッチにより前倒することができ、トランクと一体化できる。ゴルフバッグも収納できる。

■620馬力のV8ターボエンジンを搭載するローマの走りは?

本革とカーボンパネルをあしらった豪華なインテリア。運転席と助手席をシンメトリカルに分けるデュアル・コクピット・コンセプトを採用

 運転席に乗りこむ。ローマの室内のために空間と形状を決める新しいアーキテクチャコンセプトが開発された。それはドライバーとパッセンジャーが別々の空間に居るというもので、別々の”セル”を生み出す手法なのだ。

 これはフェラーリの他のモデルで導入されているデュアル・コクピット・コンセプトの進化版だそうだ。違いは、デュアルコクピットの理念を進め、ダッシュボードからキャビン全体に拡大したことだ。

 パワートレインはV8、3.85Lツインターボ。すでに他のミッドシップモデルでも展開されているV8エンジンをさらにブラッシュアップしている。最高出力は620ps。これに新開発の8速ATが組み合わされている。

フロントミッドシップに収められた3.85L、V8ツインターボエンジン。最高主力620ps/5750~7500rpm、最大トルク760Nm/3000~5750rpmを発揮する

 センターパネルのAボタンを押し、ハンドルスポークに備わるハンドリング性能とグリップ性能を選択できるスイッチで、「コンフォート」をチョイスし、スタート。Aレンジで停止してもクリープのない走りは、1800回転からアクセルペダルに対しての反応が俊敏になる。

 試しにクローズドコースで0→100km/h加速を計測したが、手持ちのストップウォッチで3.8秒を記録(カタログ値は3.4秒)し、その実力を見せてくれた。このときもV8エンジンはレッドゾーン入口の7500回転まできれいに回っていた。

 一方で街中では60km/h8速900回転というアイドリングのような回転数でも走行した。これは新8速ATのセッティングの凄さで、7、8速はハイギアード化されているので、1500回転あたりでも余裕がある。ちなみに100km/h巡航は8速1500回転、7速2000回転だった。

 ハンドリングに関してはコンフォートモードでは路面からのザラつきやゴツゴツ感、上下動のキツさもない。スポーツモードも試してみたが、乗り心地こそ硬めに感じたが、クイックなハンドル操作ではボディのロールやゆり戻しも体感するほどに、コンフォートモード的。もちろん、このクルマにはこういうセッティングが合っているのだ。

 この先のことを考えると、おそらく「ローマ」は最後のピュアガソリンターボエンジンを搭載したモデルになるかもしれない。

 ラグジュアリーなフェラーリを求めている裕福な方は、すぐにでも購入契約書にサインすることをすすめたい。

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