国内唯一のクレジットカード国際ブランド「JCB」が、スマホ決済市場に乗り込むことが23日、明らかになった。JCBはこの日、2023年春、独自のスマホ決済サービスを展開する「デジタルバリュープラットフォーム」(仮称)を導入すると発表した。日本の大手クレジットカード会社で、スマホ決済に参入するのはJCBが初めて。
JCB参入の背景には、スマホ決済市場の急拡大があるとみられる。キャッシュレス推進協議会が昨年5月に公表した調査結果によると、2020年のスマホ決済の利用額は4兆2003億円(前年比約3.7倍)に上った。今後も市場規模は拡大を続けていくとみられており、矢野経済研究所によると2024年にスマホ決済市場は10兆円規模に達するという。
この巨大な市場を日本発のクレジットカードで、唯一の国際ブランドであるJCBが本気で狙いに来たようだ。
ネットで指摘される「周回遅れ」
一方で、ここに来てのJCBの新規参入は「周回遅れ感」が否めず、これから若年層を取り込むには相当なバラマキが必要ではないかとの指摘もある。スマホ決済に各社が参入し、「〇〇Pay」が巷に溢れかえったのは2019年。JCBの参入は他社より4年も遅れている中、ネットでは次のような意見がみられた。
すでに銀行口座化しつつあるPayPayを蹴落として普及する未来は見えないなぁ。
ユーザーが手に取る理由を、どこに作り込むのかが一番気になる。
これだけPayPayが広まっているので、すごい特典がなければ「入れなくてもいい」になりそう。
市場調査や消費者動向の調査を手掛けるMMD研究所の「2022年1月スマートフォン決済(QRコード)利用動向調査」によると、スマホ決済のシェアは「PayPay」が45.4%で圧倒的1位。次いで、「d払い」と「楽天ペイ」がそれぞれ16.7%で2位タイ。「au PAY」(13.5%)、「メルペイ」(3.0%)、「LINE Pay」(2.5%)、「FamiPay」(1.5%)、「ゆうちょPay」(0.4%)という順だった。
ネット民が指摘するように、後発のJCBが短期間で、シェアの半分近くを握る「PayPay」を逆転するのは至難の業に見える。ただ、JCBはもともと国内外に1億4000万人もの会員がいる。ゼロから会員を集めなければならなかった他社とは状況は異なる。それに、2位以下は現状、団子状態だ。
スマホ決済の「戦国時代」到来
旅行事業やITオフショア開発事業などを手掛ける、株式会社エアトリが行ったスマホ決済アプリに関する意識調査によると、スマホ決済アプリを「2個以上」ダウンロードしている人の割合は67.9%に上る。
「スマホ決済アプリをどのように使い分けているか」の問いで最も多かった回答は、「キャンペーンごとに使い分けている」で36.6%。「ポイント還元率によって使い分けている」という回答は35.3%だった。ユーザーは、支払い時に最も有利になるアプリを使っているというわけだ。
後発のJCBが、ペイペイの牙城をすぐに崩すのは難しいだろう。そうした中、JCBの当面の焦点は、2つめの選択肢として選ばれるだけの魅力的なサービスを提供することではないか。
ただでさえスマホ決済サービスを提供する企業が乱立する中、JCBのほか、新生銀行グループのクレジットカード会社「アプラス」が今年2月に新規参入を果たすなど、さながら「スマホ決済戦国時代」の様相を呈している。
昨年7月にはグーグルがスマホ決済サービスを提供する日本企業「プリン」を買収。今年中にも日本市場に参入するのではと噂されているが、どこがこの戦国時代を制するか。いずれにしても、さまざまな企業が切磋琢磨することで、利便性がより高まることはユーザーにとって良いことであることは確かだろう。