アメリカ政府は2日、台湾に対し11億ドル(約1540億円)相当の武器を売却することを承認したと発表した。バイデン政権下での台湾への武器売却としては、最大規模となる。
内訳は、対艦ミサイル「ハープーン」60基が3億5500万ドル、空対空ミサイル「サイドワインダー」100基が8560万ドル、レーダー警報システムが6億5500万ドルなどと報じられている。
対艦ミサイル「ハープーン」はアメリカの航空機メーカー「マクドネル・ダグラス」社が開発した対艦ミサイルで、1977年から運用が開始された。射程は100~200km。速度はマッハ0.85(1040km/h)。ウクライナ侵攻では、デンマークから同国に供与されたことでも知られており、海上でロシア海軍に脅威を与える「ゲームチェンジャー」とも評された。
元山口組系団体組長で作家の猫組長氏は、「結構マズい雰囲気だねえ。」とツイートし、警戒感を示した。
結構マズい雰囲気だねえ。#Yahooニュースhttps://t.co/uZjfmcUJYf
— 猫組長 (@nekokumicho) September 3, 2022
保守系の政治団体、日本第一党の中村和弘幹事長は「終わることのない米国の代理戦争が日本と台湾に押し付けられる様相です。日本は国産兵器により防衛力を強化し他国に対する抑止力を持つべきであり、米国のみを頼りにするべきではありません」と言い、国産兵器の増強が必要であると訴えた。
終わることのない米国の代理戦争が日本と台湾に押し付けられる様相です。
日本は国産兵器により防衛力を強化し他国に対する抑止力を持つべきであり、米国のみを頼りにするべきではありません。
アメリカの力頼りでは国民を守れず、台湾海峡の安全と平和を維持できません。https://t.co/hqfPFBfeK2
— 日本第一党 中村 かずひろ 消費税廃止 超積極財政 (@Arms_Hiro) September 3, 2022
一方、武器売買によってアメリカは利益を得ているという反発の声もあった。
台湾有事を煽っているのは中国ではなくアメリカ。手口はウクライナの時どころか、いつも同じ。麻生副総裁が「日本で戦争が起きる可能性ある」と発言したのも、アメリカに対するリップサービス。アメリカはレンドリース法を復活させたので、武器を売るだけでなく、貸すこともできるようになっている。
在米中国大使館の劉鵬宇報道官はアメリカに対し、以下のように要求した。
米国が台湾軍に武器を販売することは「一つの中国」という原則と上海コミュニケなど両国間で交わした3文書の規定に重大に違反している。米国に対して台湾への武器販売を停止することと、台湾に軍事的接触を行うことを停止するよう要求する。
中国のネット空間では、こんな書き込みもあった。
中国と台湾の統一に向けて、大きな一歩だな
万一軍事衝突が起きた場合、台湾は中国に統一されるという意味だろう。
武器売買こそ、アメリカの真の目的に違いない。
「在庫の数量が増えただけ」
だが、台湾メディアによると、バイデン政権下では最大規模といっても、過去の武器販売の経緯と比較すると、それほど特別なものではないという。台湾メディア「中時新聞網」は、以下のように評した。
これらの武器はすでに台湾が所有しており、在庫の数量が増えただけと言える。備えあれば憂なしとはいえ、台湾軍の戦力増強にはまったくならない。
「中時新聞網」の論調は比較的中国寄りと見られており、武器販売についても意外なほど冷淡な見方をしていた。
また、国民党系のシンクタンク「国家政策研究基金会」副研究員の掲仲今氏は、こう述べている。
米政府高官は武器販売を公式発表する前に、「米中関係の緊張を高めるような新たな能力を持つ武器は提供しない」との声明をメディアに非公式に流していた。中国政府が台湾問題を悪化させるなと要求していたことに、米国が応じたことを意味する。
そして、どこまでが事実かは不明瞭だが、アメリカと中国が水面化で事前にある程度のすり合わせを行っていたとの見方を示す。
何ら敏感な要素のないこの程度の武器販売にも関わらず、バイデン政権は小心翼々としており、非公式ルートで中国政府に釈明をしているのだ。
「小心翼々」とは「気が小さく、いつもびくびくしているさま」もしくは「細かいことにまで気を配り、慎み深くするさま」を言う(出典:デジタル大辞泉)。バイデン政権の対応に冷めた見方をしているようだ。
いずれにせよ、ペロシ下院議長の訪台以後、情勢が緊迫する中にあって、アメリカ・中国・台湾と、それぞれの思惑を一致させるのは難しそうである。