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課題もけっこう多い? 「伝統的価値観」とはかなりのギャップも?? クラウンクロスオーバー公道初試乗でわかったこと

 ついに日本の街へと走り出したトヨタ 新型クラウンクロスオーバー。今回はRAV4と同じ2.5Lハイブリッドエンジンを積んだモデルに自動車評論家、鈴木直也が試乗レポート。意欲的なエクステリアは日本の風景の中で違和感なく馴染むだろうか? 乗り心地は?? さっそくその走りを試しに行こう!

※本稿は2022年10月のものです
文/鈴木直也、写真/TOYOTA、ベストカー編集部 ほか、撮影/平野 学
初出:『ベストカー』2022年11月10日号

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■「新たなクラウン」の大きな物語の1ページ目

クラウンクロスオーバーで街に走り出すと、道行く人が振り向いて視線を送ってくる。高い注目度を実感。そして、街の風景に、意外なまでに溶け込んでいる

 クラウンの劇的な変貌ぶりに、いま自動車業界は話題騒然だ。

 まぁ、セダンのままモデルチェンジしても今さらどうにもならないことは素人でもわかる。

 ベストカーのスクープでも、「変わるとすれば、SUV志向だろう」とみていたが、そのヨミは間違っていなかった。

 ところがですよ。7月15日のワールドプレミアで明らかになったのは、予想外の4車種イッキ出し。これにはさすがにビックリだ。

 今回ついに試乗が実現したクラウンクロスオーバーをはじめ、セダン、スポーツ、エステートと、今度のクラウンは「群戦略」でブランド再構築を仕掛けてきたというわけだ。

 こうなると、今回試乗する新型クラウンクロスオーバーをどう評価するべきか。どういうモノサシを当てるべきなのかが悩ましい。

 長い歴史とその過程で育んだ膨大な“ロイヤルカスタマー”。

 これこそライバルが羨むクラウン最大の資産だったわけだが、完全なグローバルカーに生まれ変わった新型クラウンには、既納ユーザーへの忖度はほとんど感じられない。

今回試乗できたのは2.5Lエンジンを搭載するTHS・E-Four

 従来クラウンと同じモノサシを当てたら、なんだか素っ気なくて日本的な「おもてなし」感覚が薄いなぁ……。たぶんそう思われるに違いない。

 大事なご贔屓筋を切り捨てたとまでは言わないが、「新しいユーザーが来てくれないとクラウンは生き残れない!」。そっちの覚悟を強く感じるのだ。

 ただ、そうは言いつつも悩ましいのは、トヨタの手の内にはまだ新型クラウンのカードが3枚も残っていること。

 早計に「今度のクラウンはもう日本のお客さんを見ていない」と決めつけたりすると、来年登場予定の「セダン」が伝統的なクラウンユーザーの受け皿になっていて赤っ恥とかもあり得るし……、現時点では迂闊なことは言えないんだよねぇ。

 というわけで、今回の新型クラウン試乗にあたっては、「これはクラウンという大きな物語の1ページ目だぞ」と、そう自覚して臨むこととしたわけでございます。

■使い勝手に優れた「マルチパーパスカー」

着座位置が高く乗り降りがラク!

 新型クラウンは『クロスオーバー』の名が示すように、最低地上高を一般的なセダンより20mm程度高い145mmまで高め、全高が1540mmとなるのがポイント。

 フロアが高いので前後席ともに座面が高く、乗降性に優れている。

 225/55R19~225/45R21という、SUVサイズの外径の大きなタイヤを履き、艶消しブラックのフェンダーモールをまとったエクステリアはまさにセダンとSUVのクロスオーバー。

 リフトバック風の傾斜角のリアウィンドウはラウンドしたルーフラインからつながり、4ドアクーペというか、ファストバック的なプロポーションを作り上げている。トランクは別体の3BOXだ。

前席の座面地上高は630mm、後席は610mmで、一般的なセダンに対し20mm程度高い。これによって乗降時にスッとお尻の出し入れができ、膝をかがめる負担が軽減されたのは嬉しい

 新型クラウンのボディサイズは全長4930mm、全幅1840mm、全高1540mmでホイールベースは2850mm。

 カムリやRAV4、ハリアーなどにも使われる「GA-Kプラットフォーム」をベースに、リアマルチリンクサス周りなどを完全新設計。

 長いホイールベースによる、後席居住性の高さも特筆ポイント。使い勝手に優れたマルチパーパスカーが新型クラウンクロスオーバーだ。

■キャラクターはかなり強烈 インテリアについてはビジネスライクすぎるか

運転していて「おっ!」という新鮮な驚きはあまり感じないのだが、これこそが開発陣の狙ったところ。「意識させないよさ」だ

 新型クラウンクロスオーバー初試乗に用意されたのは、THS方式の2.5Lハイブリッドモデルのみ。

 生産立ち上げ時期などの関係で、注目の6ATと2.4Lターボハイブリッドは「次回のお楽しみ」となった。

 こうなると、われわれジャーナリストの悪い癖で、つい先まわりして「GA-Kプラットフォームに2.5LのTHSだから、基本はRAV4といっしょだよね」てなことを言いがちになる。

 まぁ、大きなくくりでは、あながちそれも間違いじゃない。

 最初はモーターで転がり出して、アクセルを踏み込むとシュンとエンジンが掛かり、前後モーターの力強いアシストともに加速する。お馴染みトヨタハイブリッド(E-Four)の乗り味だ。

 しかし、基本プラットフォームとパワートレーンを共用しつつも、新型クラウンのキャラクターはかなり強烈だ。

 まずエクステリア。これは言葉で説明する必要はないと思うけど、実車はボリューム感があって写真以上に存在感アリ。

 街を走っていても周りの注目度も高く、「おっ、もう売ってるんだ!」とか、「これが新型クラウンですか!?」といった声をかけられることもしばしば。劇的に変貌したクラウンの認知度はかなり高いことがわかる。

 いっぽう、インテリアについては率直に言ってビジネスライクすぎると思う。

 内装各部に使用されるマテリアルも、高級車としては「中の下」といったところで、伝統的なクラウンの価値観とはかなりギャップがある。

 最近のトヨタ車としては珍しく「見えるところを削ったな」とキツイことを言いたくなる。

■シャシー性能は徹底的に磨き上げられた

ラウンドしたルーフラインからつながるトランクリッド。ファストバッククーペのようなフォルムが特徴的なクラウンクロスオーバー

 そのかわりと言ってはなんだけど、シャシーはかなり凝ってるし、お金もかかってる。

 リアサスをまるまる新設計のマルチリンクとしたほか、後輪操舵システム(DRS)を全車に標準装備。ナックルをアルミ鍛造製とするなど、気合の入り方は尋常じゃない。

 その成果は操安性と乗り心地にしっかり反映されたと言っていい。

 恥ずかしながら、DRSがあまりに違和感なくシャシーに統合されているもので、最初は「このグレードには付いてないのかな?」と勘違いしたほど。

 でも、スッとスムーズに横移動する感じの高速レーンチェンジや、狭い市街地で縦列駐車がやけにラクチンなんだよねぇ……。で、エンジニアの人に確かめたら「全車標準です」というお答え。

 残る課題は平滑な路面でもわずかに残る“ぴょこぴょこ”した乗り心地だが、それをクリアしたら「新型クラウンでGA-Kプラットフォームは一皮むけた!」と絶賛しますよ。

 以上、クラウンという大きな物語の1ページ目を記すファーストインプレッションだけど、今後予定されているモデルバリエーションが登場するたびに、この物語はつぎつぎ書き換えられていいくんだろうね。

●トヨタ クラウンクロスオーバー(G アドバンス)主要諸元
・価格:510万円
・WLTCモード燃費:22.4km/L
・全長:4930mm
・全幅:1840mm
・全高:1540mm
・ホイールベース:2850mm
・車両重量:1770kg
・最小回転半径:5.4m
・最低地上高:145mm
・エンジン:直列4気筒DOHC、2487cc
・最高出力:186ps/6000rpm
・最大トルク:22.5kgm/3600-5200rpm
・フロントモーター出力/トルク:119.6ps/20.6kgm
・リアモーター出力/トルク:54.5ps/12.3kgm
・システム出力:234ps
・サスペンション:ストラット/マルチリンク
・タイヤサイズ:225/55R19

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