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 ドイツ・ハノーバーで9月20日~25日にわたり開催された「IAAトランスポーテーション2022」は、それまでの商用車トレードショーから、将来のトラック輸送を各社が提案するイベントへと趣旨を変えたものだ。そのトレンドを現地取材から紹介する。

 毎回大規模な出展を行なっている欧州の大手トラックメーカー5社の第3回目は、オランダのDAFとイタリアのイヴェコ。ドイツ、スウェーデンのトラックと競合してきただけに、展示内容もそれらとはヒケを取らない濃さがある。

文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部


DAF/新大型トラックXDシリーズ発表、EVも設定

欧州の「インターナショナル・トラック・オブ・ザ・イヤー2022」に選出されたDAFの新大型トラック「XFシリーズ」のフラッグシップモデル「XGプラス」(向かって右)、「XG」(同左)

 米PACCARグループのDAFは、「インターナショナル・トラック・オブ・ザ・イヤー2022」を受賞した新世代「XF」シリーズ、同・イノベーション部門賞を受賞したFCEV「XF H2」に、このIAA2022で発表された新型車「XD」シリーズの架装バリエーションもならべるという、IAAらしいバラエティに富む内容だった。
 
 新型車「XD」シリーズは、2021年6月に一新した長距離大型トラック「XF」シリーズ(XF/XG/XGプラス)に続くDAFの新世代モデルで、現行の「CF」に相当するレンジをカバーし、今秋から生産が開始される。

 新世代モデルにおけるXDシリーズは、キャブフロア高さがXFに対して17cm低く設定されており、都市内配送用途向けシャシーの「XD」と建設系特装車向けシャシーの「XDC」で構成される。なお、XFの建設系特装車向けシャシーの「XFC」も併せて発表された。

CF後継車として発表された新大型トラック「XDシリーズ」には、EVモデル「XDエレクトリック」も設定された

 IAAでは、DAFの新世代モデルをベースとする大型EVトラックも同時に発表された。こちらは「XFエレクトリック」と「XDエレクトリック」で、23年から生産を開始する。容量105kWhの高電圧バッテリーパックを2~5個を搭載、航続距離200~500kmを実現し、急速充電に要する時間は45分(バッテリーパック3個仕様、充電率0→80%)という。

イヴェコ/なんとEV・FCEVメーカー・ニコラが前面に!

イヴェコ・ブースの主役は、米・ニコラと共同生産するトレBEVの燃料電池仕様車「トレFCEV」。フロントフェイスは端正なデザインに仕上げられている

 欧州大手5社で最も異色だったのがイヴェコで、米国の大型電動トラックのスタートアップ企業・ニコラの大型EVトラック「トレBEV」、そしてIAA2022が初公開となる大型FCEVトラック「トレFCEV」を大々的に展示したのである。

 もちろんイヴェコとニコラに関係がないわけではない。「トレBEV」「トレFCEV」ともにイヴェコ最新の長距離大型トラック「Sウェイ」のコンポーネントを活用し、ドイツに新設した合弁工場で生産される電動トラックという背景があるのだ。もっともイヴェコは、代替燃料車として天然ガス車(NGV)に力を入れてきたものの、2030年代に内燃エンジン車に代わるとしている電動車を「トレ」で補完する意味もある。

 展示された「トレBEV」は、4×2セミトラクタと6×2セミトラクタ。後者は北米市場で展開済みだが、イヴェコIAA資料には4×2のみ記載されており、アナウンスがないモデルである。前者の4×2は連結総重量(GCW)44トン仕様で、高電圧バッテリー容量738kWh、連続出力652ps(480kW)のFPT製eアクスルを搭載し、航続距離530km、175kW急速充電器による充電率10→90%に要する時間は162分としている。

ニコラ・トレBEV 4×2セミトラクタ

 初公開の「トレFCEV」は、出力100kWのFCパワーモジュール(ボッシュ製とみられる)2基と重量換算70kgの水素を70メガパスカル圧力タンク、容量164kWhの高電圧バッテリーを備えた、GCW44トンの6×2セミトラクタだ。BEVと共通のeアクスルを搭載し、航続距離は800kmを確保する。2024年にも欧州市場へ投入する計画である。

 また、イヴェコ自身も欧州ベストセラーの小型商用車「デイリー」のEVモデル「eデイリー」の新型を発表している。こちらは車両総重量(GVW)3.5~7.2トンというレンジにわたって、パネルバン、キャブ付シャシー、小型バスを展開する。車両の性格は異なるものの、三菱ふそうの「eキャンター」と車格的にほぼ同じで、EV導入ソリューションの提供など共通する特徴も多く、EVトラックの方向性を指し示す重要なモデルといえる。

イヴェコ・デイリーのEVモデル「eデイリー」。選択できる高電圧バッテリー容量、特装車に対応するePTO(電動パワーテイクオフ)など、eキャンターと共通する特徴を備えている

 そしてeデイリーも、eキャンターと同じく高電圧バッテリーモジュールの搭載数が車格・用途によって選択できるようになっている。1基・37kWhで航続距離110~120km、2基・74kWhで航続距離120~235km、3基・111kWhで航続距離180~300kmとしている。モーターは最高出力190ps(140kW)・最大トルク400Nmを搭載。架装用のePTO(出力15kW)も設定しており、ブースでは、GVW4.25トンの「42S14E」冷凍車とGVW5.2トンの「50C14E」高所作業車が展示された。

 さらに、韓国・ヒョンデ自動車と燃料電池車「eデイリーFCEV」の共同開発も発表した。eデイリーGVW7.2トンシャシーをベースに、ヒョンデ製FCシステム(出力90kW)と重量換算12kgの水素を搭載するもので、最大積載量3トン、航続距離350kmを実現するという。

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