新型クラウンクロスオーバーが2022年9月1日に正式発売されてから早くも2ヵ月あまりが経った。販売は好調のスタートを切ったようだが、評価はどうなのだろうか?
そこで、2.5Lハイブリッドと、2.4LデュアルブーストハイブリッドのRSに試乗した、モータージャーナリストの石川真禧照氏が徹底考察。
はたして、メルセデスベンツ、BMW、アウディといったドイツ競合車の壁を超えたのだろうか?
文/石川真禧照
写真/ベストカーweb編集部、メルセデスベンツ、BMW、アウディ
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■これまでのクラウンとまったく違う新型クラウンはオジサン世代には受け入れられるのか?
2022年7月15日、トヨタ自動車は千葉県幕張メッセで大々的にクラウンの発表会を行なった。これまでクラウンといえば、初代の1955年からずっと国内専用モデルというポジショニングだった。それが、16代目になりワールドワイドなクルマとして開発されたのだ。今後グローバルに約40の国、地域に展開していくというのだ。
そのためにかなり大胆な車種展開を行なった。
これまでクラウンといえば、4ドアセダンだけだった。一時期、ステーションワゴンを作ったこともあったが、セダンが主流。それが、7月の発表会では、一気に4車種のクラウンが登場したのだ。
セダン、スポーツ、クロスオーバー、エステートと名付けられ、公開された。しかし、そのときに公表されたのは、「第1弾としてクロスオーバーを、秋頃に発売します」。
取材をしてみると、「あとの3車種は2023年中には出すつもりです」(開発関係者)との返事が返ってきただけ。発表会場に展示された4車種のクラウンも、「実際に動くのはクロスオーバーだけだった」(開発関係者)ようだ。
そのクロスオーバーも、秋にプレス関係者が試乗できたのは、9月に入ってからだった。試乗車は、2.5Lのシリーズパラレルハイブリッド車だけ。クロスオーバーのメインモデルではあるが、2.4Lのデュアルブーストハイブリッド車は、さらに1ヵ月後にようやく試乗車の用意ができた。
こちらはカタログでもRSとAdvancedの2グレードしかないスポーティ仕様。プレミアムガソリン仕様で、エンジンは272ps、460Nm。モーターはフロントが82.9ps、292Nm、リアに80.2ps、169Nmが搭載されている。
ちなみにメインモデルの2.5Lはレギュラーガソリン仕様で、186ps、221Nm。モーターはフロントが119.6ps、202Nm、リアが54.4ps、121Nmの組み合わせだ。
動力性能は、当然だがRSのほうが上。クローズドコースでの0~100km/h加速はRSが5秒台。2.5Lは8秒台だ。実走燃費はRSが8.6~15.3km/L、2.5Lは16.4~28.3km/Lを記録した。
■クラウンクロスオーバーはドイツ御三家を超えたか?
で、ここからが本題。この2種類のクロスオーバーが、ドイツ御三家(メルセデス、BWM、アウディ)を超えたか、ということだ。
内外装の質感、動力性能、車種揃え、デザイン、ユーザーの反応などを比較してみた。最初に断っておきたいのは、車両価格のことだ。当然だが、輸入車のなかでもクラウンと同じクラスの上級車の価格は高い。
新型クラウンクロスオーバーの価格は、2.5Lハイブリッドである「X」と「G」は435万~570万円、2.4Lターボハイブリッドの「RS」は605万~640万円。
メルセデスベンツEクラスセダンの価格は、873万円のE200SPORTSから1041万円のE350de SPORTS。BMW5シリーズセダンは523iの768万円から530eの911万円。アウディA6セダンは40TDIクワトロスポーツの779万円から55TFSIクワトロSラインの1118万円。
実際にこれから比較する3メーカーのモデルは、クラウンの約2倍はする。そこを追求したら、このハナシはオワリ。クラウンのほうが上ということになる。いくつかの不満点はあっても「この価格なら、いいか」となる。
しかし、今度のクラウンは、ワールドワイドに販売するという。ということは、御三家の本拠地であるドイツをはじめ、北米市場でも戦うことになるわけだ。この地域ではクラウンは輸入車だ。そこでの評価、ということで比較してみた。
現時点で発売されているクラウンは、クロスオーバーの2車種だけ。しかし、内装のクオリティや装備の使いやすさは、まったく見劣りしない。
ライバルはメルセデスは、Eクラス、BMWは5シリーズ、アウディはA6が同じクラスだ。バリエーションに関しては、クラウンはクロスオーバーだけ。これはステーションワゴンやSUVも揃えている御三家にはかなわない。2023年中に発表するといわれているセダン/スポーツ/ステーションワゴンが揃ってからの勝負だ。
現時点で見劣りするのはパワーユニットだ。クロスオーバーは、ハイブリッドだけ。せめてプラグインハイブリッドは用意したかった。もちろん可能ならEVも見せてほしかった。
御三家は、こうした次世代に加え、V8やディーゼルというコンベンショナルなユニットも揃え、先進と伝統を両立させている。メーカーの規模では格下の御三家に対し、トヨタの展開の限界が感じられる。
気になるのは、ボディデザインだ。デザインに関しては、各人の好みもあるので、あまり評価しない。でも一般の人がクルマを購入するときに、一番気になるのがデザインだ。
クラウンは先代の15代目でトランク部分を短くしたファストバックのデザインを採用した。これはジャガーXJのように、新しいセダンを狙ったものだが、成功したとはいえない。
その証拠に、その前14代のセダンがいまでもハイヤーや社用車に使われている。14代クラウンといえば、デビューは2012年。いまから10年前だ。その人たちが乗り替えていないのが、15代目のデザインを受け入れていないわけだ。それはジャガーも同じだった。
16代目は、さらにデザインは新しくなった。韓国のヒョンデの高級ブランド、ジェネシスも同じ路線。ジェネシスは欧州のデザイナーの先端デザインだ。
一方、ドイツ御三家は、EVでもグリルなど一部で冒険しているが、基本は3ボックスセダンの形状を踏襲している。ハッチバックモデルはリアゲートを付け、使いやすさを提供している。これで世界を戦っている。北米市場で、御三家と戦えるクルマになるかが、クラウンの評価どころではないだろうか。
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