飛ぶ鳥を落とす勢いのアルファードだが、人気モデルゆえカスタムユーザーも多い。アフターパーツは数万とも言われているが、多くの人が手を入れるのが足まわりだ。
筆頭はタイヤとホイールであるが、アルファード専用のブレーキキャリパーが曙ブレーキから登場!! ご存じの通り曙ブレーキといえばF1マシンにも供給経験のあるブレーキ界の超名門。じつはこの「AWP Brake Caliper」は同社初の市販パーツ。
純正品とは異なりレッドやブルーなどカラバリも豊富! ホイールの隙間から見えるキャリパーがとにかくイイ!! しかも乗り心地も激変するというが果たしてどうなのか!? 今回は曙ブレーキの社長車をお借りして、その実力をテスト!!
文:石川真禧照/写真:奥隅圭之
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純正ブレーキも実は曙ブレーキ製だが……少々物足りない部分も
「曙ブレーキがアルファード/ヴェルファイア用のブレーキキャリパーを市販しているらしいよ」この情報を知ったのは今年の夏だった。
実はこの情報をゲットする前に、「アルファードエグゼクティブラウンジ」の試乗で、富士スピードウエイと東京の間を走ったのだが、そのときにブレーキに関して、物足りなさを感じていた。例えば、街中でのブレーキング時の初期制動の甘さや、停止手前の過度な制動、高速走行でのブレーキペダルを踏んだときの制動力などだった。
「ベストタイミング!」と思い、さっそく曙ブレーキに取材を申し込んだ。もちろん試乗込みの取材を希望した。数日後、「担当の技術者と試乗車を用意しました」と曙ブレーキの広報から連絡が。
聞いてみると、試乗車は宮地社長CEOの社用車というではないか。社長は自らの社用車に、新製品を取り付け、そのフィーリングなどをチェックしているというカーガイなのだそうだ。
曙ブレーキといえば、今年で創業93年という会社。しかも最初からブレーキを製造しているという老舗メーカー。その技術力は、新幹線こだまの時代(1950年代)からディスクブレーキライニングを供給したり、F1でも2000年代から2020年代まで「マクラーレン」のオフィシャルサプライヤーを担っている。
加工無しでポン付け可!! ホイール干渉もなく工賃などコスパも良し
しかし、これまでメーカー純正パーツなどは開発してきたが、一般ユーザーに市販することはなかった。それが今回、アルファード/ヴェルファイア向けに、キャリパーを市販するという。しかも現行モデルだけでなく、先代モデル(20型)にも使えるというのだ。
「市販部品の開発は4年前から行なっていましたが、アルファード/ヴェルファイア向けに決定したのは2年前。東京モーターショーでアンケートを取って、決定しました。」(補修部品事業部門・戦略推進部)
曙ブレーキにとって都合がよかったのがアルファード/ヴェルファイアともに、純正部品として、すでに製品が納品されていたことだった。「純正パーツの構造がわかっているので、それを利用して、取り付けられる構造にできました(同)。」
具体的には、2本のボルトで交換することができる。これは、交換するユーザーには、すごくメリットがある。
「ブレーキの交換は、工賃などを含めて、通常、5~7万円かかります。でも純正と同じボルトを利用するなら、1時間程度なので工賃も安く済みます。」(トヨタディーラーメカニック)
さらに特筆したいのは、「キャリパーの外側寸法も、純正と同じなので、ホイールにあたることがなく、グレードアップできます。」(曙ブレーキ補修品事業部)
待て、社用車のアルファードカッコよすぎる!! オレンジキャリパーは社長のこだわり
前置きが長くなってしまったがいよいよ実車試乗だ。用意されていたのは「アルファード エグゼクティブラウンジ」。走行3万5000km。
装着していたのは、アルパインスタイルBTC basicのホイールに、BSレグノGRVⅡ245/40R20を組み合わせたもの。ちなみに筆者が先月試乗した広報車は、純正ホイールにヨコハマブルーアースE51 225/60R17を装着していた。比較はこのクルマとだ。
黒塗りのアルファード。ホイールの間から「Akebono」ロゴ入りのオレンジ色のキャリパーが見える。
「クルマがクロだから、キャリパーはハデな色にしようと思ってオレンジを選びました」(宮地社長)。ウーン、クルマ好きの発言だ。キャリパーはオレンジのほかにレッド、ブルー、ホワイト、シルバーの全5色が用意されている。もちろん効き味は同じ(笑)。
市街地の停止間際の挙動がお見事!! マイルドなのに思い通りに減速するのも◎
さっそく試乗に出掛ける。新型ブレーキキャリパーの効果は、最初の角を曲がるために減速したときから体感できた。フツー街中で減速して車体が停止するとき、運転に慣れている人はペダルを踏む足の力を瞬間的に抜いている。それは、そのままペダルを踏みつけていると最後に、ギッとブレーキに力がかかり、急に停まるからだ。
その最後の締めつけるような動きがない。ペダルを踏んだ状態でもスーッと停止する。
次に首都高に入り、加速する。前方の車との距離が近くなり、ブレーキを踏む。アルファードは減速するが、このときの動きが、その前に試乗したアルファードと明らかに違っていた。ノーズダイブが少ない。
ブレーキペダルに足をのせ、力を入れる。瞬時にジワッと減速する。その前のアルファードは、踏んだ瞬間に若干だが、空走するような時間がある。いわゆる初期制動がやや甘く感じられるというやつだ。
それがないので、とてもスムーズに減速できる。初期制動が効く、というのはこんなにも安心して高速走行ができるのか、とドライバーは思うに違いない。かといって、スポーツカー的に、ペダルを踏むと、ガツンと効くというのとも違う。効き味がマイルドなのだ。
挙動の良さは新開発の構造が答え。ボディ挙動も制御ってマジ!?
試乗を終え、本社の駐車場に戻る。さっそく開発担当者にインプレッションを告げる。試乗する前にひと通りのレクチャーを受けていたことが、ひとつひとつ納得できた。
マイルドだが、効き味の鋭さは、今回のブレーキキャリパー開発のために考え出された構造によるものだった。その構造というのは、純正のフロントブレーキは、もちろんディスクブレーキなのだが、ブレーキをかけると、まず車輪に近い内側のパッドがディスクに触れ、減速を促す。その後に、外側のパッドが動き、ディスクを押さえる。このタイムラグが、初期制動のタイムラグにもつながる。
一方スポーツカーのようなハードブレーキは、対向ピストンを備えており、内外のパッドが同時にディスクを押さえる。だからガツンと効く。
曙ブレーキがアルファード/ヴェルファイア用に開発した「アケボノダブルピストンブレーキキャリパー」(AWP)は、内側のパッドがディスクを押さえるとほぼ同時、若干のタイム差で即、外側のパッドが押さえ、減速に入るだ。この両側のパッドの動きの時差が、マイルドだが、確実な減速のタネ明しなのだ。このブレーキパッドの効きは、ボディの挙動も制御しているという。
さらにパッドの素材も専用に開発され、ダストの排出も少ない。駐車場に停めたアルファードのフロントホイールを指でこすってみたが、パッドのダストは手につかなかった。
20インチでも乗り心地は不変!! そのワケは20%もの軽量化にアリ
最後にブレーキ性能だけでなく、20インチタイヤを装着していたが、乗り心地がよかった点もつけ加えたら、オールアルミで構成されたキャリパーは、純正キャリパーよりも約20%も軽量化されているという。
足回りパーツで20%の軽量化を実現するあたりにF1マシンなどで培った技術も生かされているのだろう。足回りの軽さが乗り心地につながっているのだ。
この曙ブレーキの市販ブレーキキャリパーは、GR GarageやALPINE STYLEで販売しているが、早くも20/30系ユーザーからの問い合わせがきているようだ。安全性能と見た目のカッコよさを現実にしたミニバンの新しいチューニングだ。
新構造ブレーキキャリパー「AWP Brake Caliper」基本仕様
- 販売名: AWP Brake Caliper
- 製品寸法: 幅307×高さ123×奥行168(mm)
- 製品重量: 5.7kg
- 内容品: フロントキャリパー左右、保証書、保安基準適合書、取り扱い説明書
- 材質: アルミ合金
- 保証期間: 購入日より3年または走行距離6万km
- 発売日: 2022年5月20日
- 型番: AWPK-1101
小売希望価格
30万円(税別、取付工賃別)
取り扱い販売店
GR Garage 浦和美園 (埼玉トヨペット浦和美園支店)ほか全国のGR Garage提携店および福岡、大阪、名古屋、埼玉、横浜のアルパインスタイル各店舗
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