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<土曜ナイトドラマ『ジャパニーズスタイル』第3話レビュー 文:横川良明>

親友でありライバルという関係性は、人の胸をたぎらせる。

仲野太賀と菅田将暉も、高校時代からの親友であり、互いの才能を共に認め合う仲。映画『タロウのバカ』や、本作の脚本を務める金子茂樹氏が書き下ろした『コントが始まる』(日本テレビ)など、数々の作品でコラボレーションを見せてきた。

そんな2人が《ほぼ本番一発勝負》というシチュエーションでどんな化学反応を巻き起こすか。『ジャパニーズスタイル』は、第3話にして最大の山場を迎えることとなった。

◆MF市川がパスを回し、FW菅田が華麗にゴールを決める

菅田将暉が演じるのは、哲郎(仲野太賀)の高校時代の友人・小野。

いつものようにルーシー(市川実日子)と浮野(KAƵMA)がUNOに興じているところへ、小野がやってくる場面から物語は始まる。アウェーの場に飛び込む形となった菅田にとって“肩慣らし”のようなファーストシーンだ。

が、“肩慣らし”どころかいきなり勘の良さを存分に発揮してくるあたり、さすがは菅田将暉。この場面、3人のやりとりがとにかく軽妙なのだ。

まずは小野が哲郎の知人であると知り、浮野が舌打ちをするところでしっかり笑いの先制ゴールを決め、3人で卓を囲んでUNOを始めてからは、まるで次々とUNOのカードを切っていくように、切れ目なく会話が続いていく。

相手の台詞の終わりの1音にかぶせるようにして次の台詞につなげていくこのテクニックは、実に舞台劇らしいもの。通常のドラマだともう少し間を入れる。だけど、これはライブのお芝居。だからこそ、間を極力つめていくことで観客を飽きさせずに自分たちのワールドへと引きずり込んでいく。

特に市川実日子の台詞回しが冴えている。2センテンス以上の長い台詞でも句読点を置かずに一気にまくし立て、テンポを緩めさせない。それでいて、単語ごとに微妙に緩急をつけているから意味が流れない。市川実日子がミッドフィルダーとなって、台詞というパスをさばき、グイグイ敵陣へ攻め込む。

そこへ、フォワード・菅田将暉が「僕も中2のとき、間違えて学校に母親の日傘を持っていったら『貴婦人』って呼ばれてました」という勝負台詞をしっかり決め、笑いのゴールネットを揺らす。そんな見事な立ち上がりで第3話は始まった。

◆仲野&菅田が火花を散らす、NG無しの約6分の生バトル

地元のテレビ局に勤める小野は、池の水を入れ替えるというどこかで聞いたことのあるような番組の企画として、(このドラマの舞台である)旅館「虹の屋」の池を使いたいと言う。

だけど、池にこだわりのある水質管理責任者の梅さん(柄本明)は猛反対。ルーシーも梅さんの肩を持つが、それによりあらぬ疑いの目を向けられることになり……というのが第3話のストーリーだ。

やはり見どころは終盤約6分に渡る仲野太賀と菅田将暉の2人芝居だろう。池の中から“あるもの”を発見した小野は哲郎を問いつめる。

まずは、“あるもの”の中身がバレるとマズい哲郎が、しかめっ面の小野を「お前、今日疲れてるか」「ブドウ糖がいいらしいぞ」と肩を揉んで文字通り懐柔しようとするところが面白い。特に2発目の「ブドウ糖がいいらしいぞ」の何とも言えない力の抜き加減が笑いを誘う。

そこからどんどん激しくなる小野の追及に対し、哲郎が蛙の置物を相手に「言うてますわあ」「太田から買ったのか」「哲郎」と掛け合い漫才の合いの手のような一言を入れる。この気持ちのいいテンポと、菅田と仲野の台詞の強弱の差がアクセントになって、どんどん笑いのツボがくすぐられていく。

そして、「こんなクソ人間に真剣に怒ってくれて、もう感謝しかないっすわ」で腕を胸の位置でクロスする、明らかに全然反省していない仲野のポーズが、哲郎のクズっぷりを際立たせ、腹が立つんだけどつい吹き出してしまった。

仲野は、演じようによっては視聴者をドン引きさせる哲郎というキャラクターを、ギリギリセーフのラインで巧みに演じていると思う。

一方、菅田は生真面目な性格の役だけに、なかなか遊びづらかったとは思うけど、「なんかめちゃくちゃ怒ってるから」と嘘泣きする哲郎に「当たり前だろ!!」とブチギレするところなど、これ以上ないキレと間の良さでしっかり笑いをとっていた。

これをたった1日の稽古で仕上げてきていると思うと、改めて役者ってすごいとため息が出る。数々の難役をなしとげてきた菅田将暉が、「(この作品を続けていたら)マジで化け物が育つと思うよ」と感想を述べていたのが印象的だった。

俳優たちの集団芸術とも言うべき息の合った掛け合いでこれからも視聴者を笑わせてほしい。(文:横川良明)