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東京オリンピック・パラリンピックを巡る汚職事件が、新展開に突入したようだ。東京地検特捜部は6日、出版大手「KADOKAWA」の元専務、芳原世幸容疑者と、同社担当室長だった馬庭教二容疑者の2人を贈賄容疑で逮捕した。あわせて、大会組織委員会の元理事・高橋治之容疑者を受託収賄容疑で再逮捕した。特捜部はこの日、KADOKAWA本社や角川歴彦会長の自宅などの捜索を行った。

NHKなどによると、芳原容疑者と馬庭容疑者は東京オリンピック・パラリンピックのスポンサー選定の際に、便宜を受けたことへの謝礼として2019年から昨年までに高橋容疑者側にあわせて6900万円の賄賂を提供した疑いが持たれている。

事件報道後、ネットで注目が集まるKADOKAWAの川上量生取締役(右、当時)と角川歴彦会長(2017年撮影=写真:つのだよしお/アフロ)

ツイッターで「カワンゴ」飛び交う

高橋容疑者とKADOKAWAの間に、贈収賄があったのではと報道された3日以来、ネットでは、当時、KADOKAWAの社長だった川上量生氏が関与しているかに注目が集まっている。ツイッターでは数日前から、このニュースに合わせて川上氏の愛称である「カワンゴ」のキーワードが飛び交っている。

ニコニコ動画などで知られるドワンゴの創業社長だった川上氏は、ドワンゴとKADOKAWAの経営統合により2014年、統合持株会社「KADOKAWA・DWANGO」の代表取締役会長に就任。2015年には、同社代表取締役社長に就任した。

しかし、同社は主力事業「ニコニコ動画」が奮わず2019年3月期第3四半期に38億円の減損損失を計上。売上高は10.4%減の2070億円、経常利益は68.1%減の29億円、純利益は54億円から、43億円の赤字へと転落した。この業績不振の責任を負う形で川上氏は、2019年3月に代表取締役社長を退任した。

再注目される五輪絡みの“古傷”

今回、川上氏が社長を務めていた当時のKADOKAWAの贈賄が疑われているわけだが、この機に川上氏の東京オリンピック・パラリンピック絡みのある“古傷”がネットで注目を集めつつある。

川上氏は、東京オリンピック・パラリンピックの機運醸成として東京都が行った「Tokyo Tokyo FESTIVAL」(TTF)で企画の中心的な役割を担う統括プロデューサーに就任していたが、2018年6月27日付で辞任した。

この辞任を巡って当時、ひと悶着があった。産経新聞(18年7月18日)は川上氏の統括プロデューサー辞任の理由を次のように報じている。

都は「川上氏と都の方向性にずれが生じた」と説明。一方で、小池百合子都知事の肝煎りで立ち上がったTTFの事業スキームや川上氏の起用を自民党が都議会で問題視した経緯があり、関係者の間では都議会での追及が引き金になったとの見方が出ている。

2017年6月、第23回東京芸術文化評議会に出席した小池知事と川上氏(右列の最奥、都庁サイトより)

音喜多都議が都のコンプラ違反指摘

この状況を、より詳しく解説しているのは、日本維新の会の参院議員で当時は東京都議会議員だった音喜多駿氏のブログだ。音喜多氏は、川上氏の公式ブログに掲載された統括プロデューサー辞任の声明文を引用し、「このブログで川上氏が告白していることが事実だとすると、東京都側の対応にすでに重大な疑念が生じています」と述べたうえで、東京都の対応を重大なコンプライアンス違反だと指摘している。

統括するイベントの実働部隊として、ニコニコ超会議(ドワンゴ)のスタッフを使うつもりであった川上氏に対して、「それでは利益相反(都民の公金を恣意的に川上氏の会社に投資する事態)になるので、公募する代理店を通して発注したい」と東京都が持ちかけたという事実が、赤裸々に語られています。

公募する広告代理店が発注する先を事前に決めておくなど、悪質な迂回発注でもはや「裏取引」とも言えるレベルのものであり、事実であれば重大なコンプライアンス違反です。~中略~ 川上氏の発言が事実だとすると、こうした「やり口」が都庁内で横行していたことが推察されます。

なお、この件に関して、川上氏は自民党の川松真一朗都議との公開討論会に臨むなどして事実関係を説明。一方、小池都知事は都議会でも追及を受けたが、曖昧な返答に終始した。

現在、足を骨折して入院中の川上氏。先日の参院選で初当選した「ガーシー」こと東谷義和議員の発言などを巡ってのNHK党の立花孝志党首とバトルを繰り広げるなど、このところ何かと騒動が多い。そんな中、今回降って湧いた東京オリンピック・パラリンピックの汚職問題で、川上氏は今後何らかの発言をするだろうか。