もっと詳しく

シボレーのピックアップにV8エンジンを搭載した、比較的軽量で扱いやすいサイズの一台。ボンネットに搭載された5.7リッターユニットは、スポーツカーアイコンのコルベットから移植されたものだ。

米国のメーカー、シボレーと大型V8エンジン。一見すると、スパゲッティとボロネーゼのように相性が良さそうだ。しかし、実際にはそれとはほど遠い。80年代から90年代にかけて、アメリカ人は扱いやすい大きさ、つまり比較的軽い「S-10」にせいぜい6気筒エンジンを搭載するくらいが関の山だった。軽量ボディにハイパワーエンジンの組み合わせは、とても楽しいことなのに、残念だ。

だが、その時、シボレーが残した隙間は、一部の個人愛好家が埋めた。eBayをご覧あれ。そこでは、「シボレー コルベット」のV8とマニュアルトランスミッションを搭載した、クールな「シボレーS-10」が現在売りに出されている。価格?20,000ユーロ(約280万円)という比較的リーズナブルで魅力的な価格だ。

このピックアップは、非常にセンスの良いデザインで、典型的な目立ちたがり屋を排除している。

この「シボレーS-10」は、ドイツ人の自動車整備士のマスターによって改造された個体だ。

最初に広告を見たとき、すぐに目に飛び込んでくるのが写真にある外観だ。ピックアップにありがちな目立ちたがり屋を排し、センス良くデザインされたピックアップを見ることができる。なによりも、ドイツのナンバープレートがちゃんと装着されていることがうれしい。これは、V8への換装がすでに承認され、登録されていることを示唆している。そのため、新しいオーナー候補は、うまくいけば出来のいい車を、必要な書類がすべて揃った状態で購入できることになる。

ボンネットの下には、コルベットの5.7リッターパワーユニットが搭載されている。LT1は306馬力を標準としている。

このことは、このクルマがドイツで完全にレストアされたものであることが裏付けているのだろう。どうやら、誰かがシボレーをきちんと整備し、完全に作り直したような感じの一台である。ボンネットの下には、「コルベットC4」に搭載された5.7リッターLT1 V8が、少なくとも306馬力のパワーを轟かせる。エンジンはオーバーホールされ、新しいベアリングが装着されている。また、5速マニュアルギアボックスとロック付きリアアクスルがある。

リアには、モノリーフのリーフスプリングを採用。ミシモト製のアルミラジエターと電動ファンで、V8が十分に呼吸できるようにする。コイルオーバーサスペンションは、フロントとリアの伸縮調整が可能だ。ダッシュボードを含むインテリアは、サドラーによって張り替えが行われた。売主は、シボレーは日常的な使用に完全に適しているが、ドライバーが望めば地獄のように速いと説明している。

情報によれば、シボレーの内装は、革張り職人に大枚をはたいてレザーで覆ってもらったそうだ。見た目の状態は素晴らしいものだ。

シボレーを購入する前に見るべきもの

出品された「シボレーS-10」のような個性的なクルマは、購入前によく吟味する必要がある。もちろん、これはどの中古車にも当てはまることだ。しかし、特に大規模な改造では、注意が不愉快な驚きからあなたを守る。改造を含め、実際に車検にちゃんと合格した車なのか? エンジンを搭載したマスターメカニックは? このマスターはどんな経験をしているのか? 彼と話すことは可能なのか? 改造やレストアがすべて記録されているか?

調整可能なサスペンション部品は、試乗で試してみることをおすすめする。クルマと調和しているか? ドライバー自身が期待する乗り心地と合致しているか? 売主は広告で、このピックアップはリッターあたり約7.7kmの燃費(かなり良い)で長距離走行が可能だと書いている。

技術的にはシボレーは問題ないとされている。エンジン、ギアボックス、シャシーなどは複雑な構造ではなく、多くのことに耐えることができる。それでも、メンテナンス費用などはきちんと用意しておこう。

【ABJのコメント】
「タイフーン」、って車あったの皆さん覚えてます?
1992年から1993年のたった一年間だけ、5,000台に行かない台数を生産されたGMCの車で、S15の「GMCジミー」の高性能モデルであった。4.3リッターV6エンジンに三菱のターボを装着し、280馬力と49.7kgのトルクを持ちフルタイム4輪駆動の3ドアボディを(多分)強引に走らせた、そんなモデルであった。たしか、自動車好きのかまやつひろしさんも一台持っていたはずで、おそらくそれは、「面白そうだから」買って乗っていたのと、かまやつひろしさん流のシャレだったのだろうと思う。

今回のピックアップトラックを見てつい思い出したのはあの「GMCタイフーン」だったのだが、こちらのモデルは、なにせコルベットのV8エンジンだから、「タイフーン」よりも過激に速いことは予想がつく。5速MTでおそらく後輪だけを駆動することになるから、じゃじゃ馬というか、路面のコンディションによってはかなり危険な状況になることも予想される。乗る場合には必ず空荷ではなく、ある程度の重量物は積んでおいたほうが良いだろうし、コーナーには思い切り減速して突入しないとおそらくスピンしてしまうのではないだろうか。まあそんなことをまじめに考えるような人には、はなっから向いていない一台であることも確かではあるけれど。(KO)

Text: Lars Hänsch-Petersen
加筆: 大林晃平
Photo: ebay.de/hille426