2022年11月10~13日に愛知県と岐阜県で開催される「フォーラムエイト・ラリージャパン2022」に、コペンGRスポーツが参戦する。軽自動車のWRC参戦は1993年のサファリに挑戦したスバルのヴィヴィオ以来となる。当時よりも安全装備の義務付けが厳しく、WRCの基準を満たすロールケージや安全燃料タンクの装備が必要で、「エントリーにこぎつけたこと自体、凄い!」という声が上がっている。
そのコペンをドライビングする相原泰祐さんとチーム代表の殿村裕一さんにラリージャパンへの意欲を聞いてみた。ちなみにお二人ともダイハツの社員で、コペンの商品企画を担当している。
TEXT/ベストカーweb編集部 PHOTO/西尾タクト、ダイハツ
■モータースポーツで見せつけられた「現場の力」
相原さんは全日本ラリーやラリーチャレンジに参戦、殿村さんは全日本ジムカーナに参戦と、コペンGRスポーツは軽自動車ながら大排気量モデルに果敢に挑む姿が人気となっている。
もともと2019年に開催が予定されていたラリージャパンへ出場することを念頭に準備を進めていて、3年間待たされたかたちではあるが、ここにきていい流れができた。
相原さんが今年2月にトヨタのGRカンパニーの開発部門に出向となったのだ。
相原さんは「GRの『モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり』を学ばせていただいており、『開発のスピード感』や『もっといいクルマにする挑戦の文化』から学んでいます。私がラリーに参戦する目的は、開発者が自らステアリングを握り、モータースポーツに参戦し、今後のダイハツ車にその知見を活かすことにあります」と謙虚に語る。
さらに、
「今シーズン印象的だったエピソードがあります。5月の全日本ラリー選手権の丹後半島ラリーで、目の前で起こった不具合に対して、コペンのラリーチームのメカニックをはじめ、トヨタとダイハツの技術者が集まり、『ワイガヤ(大人数で忌憚なく議論すること)』をやって改善しました。その時に参加したダイハツの技術者は、『ひとりひとりがラリーの現場で役に立とうという積極性、すぐに話し合い、改善するスピード感』を感じ、その学びをほかのダイハツの技術者に広めるために、職場の壁にゼッケンを貼り、訪れる人に、その経験を話しているそうです。こうして仲間が増えていることがうれしく思います。今後のダイハツ車はきっとよくなると思います。ご期待ください」
と語ってくれた。
■コペンの活動でダイハツ社内も変わりつつある
チーム代表の殿村さんにとって、全日本ジムカーナ選手権王者の(本誌テストドライバーとしてお馴染み)山野哲也氏は大学の自動車部の2年先輩にあたり、ドラテクも山野さんに教わったという。その後、三菱自動車に入社し、パリ~ダカやWRCの活動にも携わった。トミ・マキネンがランエボで4連覇した頃だ。ただ、三菱自動車がモータースポーツ活動を縮小し、時代が小さなクルマに向いていくことを肌で感じ、ダイハツに転職する。
そして、2010年から現行コペンの開発に携わり、2014年の発売以降、今に至るまでコペンに関わってきた。現行コペンの開発に当たって、コペンオーナーの気持ちを探ろうと始めたのが、学生時代にかじったジムカーナだ。
そんな殿村さんはラリーの意味をこう語る。
「コペンでラリーに参戦することはダイハツにとって意義のあることだと思います。例えばラリーチャレンジは全国で12戦が行われていて、地方の足としての軽自動車の魅力が発信できるからです」
さらに、「『モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり』というものをダイハツもやっていこう。ダイハツらしいやり方でやっていこう。というふうに会社も変わりつつあります。今回のラリージャパンは最高峰の厳しい条件のなかを走破します。完走が目標ですが、そこで得られた知見を社内のクルマづくりに持ち帰りたいと思います」と教えてくれた。
ラリーを始めモータースポーツの活動を通じてダイハツの社内に変化が生まれていることは興味深い。今後ダイハツからスポーツモデルが誕生することや、コペンに続く「ダイハツ車のGRスポーツ」が期待できるかもしれない。
ラリージャパンにエントリーする38台のうち、コペンは一番最後の38番目にスタートし、ラリージャパンの4日間いずれも一番最後に戻ってくる。モンスターマシンの「Rally1」から軽自動車のコペンまで、いろいろな個性のあるクルマが見られるのもラリージャパンの魅力。愛知と岐阜の皆さん、沿道で赤いコペンを見かけたら「がんばれ~!!」と声援を送ってほしい。日本の国内規格である軽自動車は、国内規格のまま世界の舞台で戦います。
投稿 ラリージャパン開幕直前!! 世界へ挑むスーパー軽「コペンGRスポーツ」を全力応援 は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。