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デジタル版への移行のおしらせ記事にはアクセスが殺到していた(西日本スポーツ電子版)

九州のブロック紙・西日本新聞社は6日、同社が発行するスポーツ紙「西日本スポーツ」の紙面での発行を23年3月末で休止すると発表した。今後はウェブサイトを主体とするデジタル媒体に完全移行する。元サンケイスポーツ記者で作家の本城雅人氏に、今回のニュースについて見解を聞いた。

ついに始まったか、という感じです。私がサンケイスポーツを退社した2009年時点でも、将来的に紙媒体は減っていくだろうと言われていました。来るべき時が来たのだと思います。今後、ドミノ的に他のスポーツ紙や一般紙の再編成が続く可能性もあり得るのではないでしょうか。

日本新聞協会によると、スポーツ紙全体の発行部数は2000年は630万7162部だったのに対し、2021年には236万9982部まで低下。この20年ほどで3分の1近くまで減少している。

スポーツ紙の経営が難しくなった理由は、ウェブの台頭だけでは説明できない背景があるという。

90年頃までは、スポーツ紙の取材範囲はほとんど日本国内に限られていました。ところが、90年代からスポーツの国際化が進み、メジャーリーグや欧州サッカー、テニス、フィギュアスケートなどさまざまな競技で世界的に活躍する日本人選手が登場し、取材範囲が世界へと広がっていったのです。

海外に記者を駐在させたり、東京からアメリカやイギリスまで出張に行く機会が増加。取材コストが増大したという。

日本人アスリートの国際化もスポーツ紙の取材コスト増大に…(jetcityimage /iStock)

速報性だけでなく…

紙の紙面が消えていくことに、残念な思いはあるという。

紙の紙面は、スマホなどで見るネット情報に比べ、自分の興味のなかった情報に触れるチャンスが多いと言えます。それが意外な発見につながることもある。新聞広告に目を通すことで、世の中の大きな流れを感じることもあります。ネット記事は、どうしても情報が偏っていく傾向があると思います。

とはいえ、ウェブが主流となっていくのは時代の流れではある。

ネットは速報性も大事ですが、それだけを追っていれば良い時代ではないでしょう。文字数やスペースに制限はないので、これまで以上に人の心に残るような読み物に力を入れて欲しいなと思います。コロナ禍では、どのスポーツ紙も往年の名試合などを振り返ったプレーバック記事を掲載していましたが、読み応えのある記事が数多くありました。

西日本スポーツはデジタル移行後も「弊社が九州のスポーツを愛し、報道する姿勢は不変です」と表明している。これからの時代のスポーツ紙はどう変わっていくのか、期待したい。