近年発売の国産新型車には、必ず安定した走行をサポートする「横滑り防止装置」が装着されている。これは、2012年10月以降に販売されるクルマに義務付けられているからだ。
しかしこの便利な装置には、解除スイッチも取り付けられている。ほとんどのドライバーは使ったことがないと思われるが、これはどのようなときに使用するものなのだろうか?
今回は横滑り防止装置を解除するスイッチの使い時を解説しよう。
文/藤田竜太、写真/ベストカー編集部、AdobeStock(トップ画像=gballgiggs@AdobeStock)
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■義務付けられた装備なのに「解除」スイッチ?
2012年10月以降、国産の新型車とフルモデルチェンジしたモデルには装着が義務づけられているESC(Electric Stability Control)=横滑り防止装置。
トヨタはVSC、マツダやBMWはDSC、日産はVDS、ベンツはESP 、ホンダはVSA、ポルシェはPSMなどと、メーカーごとに呼称が違うが基本的に中身は同じで、ESCが統一名称。
システムとしては、Gセンターやヨーレートセンサー、各ホイールの回転センサーからの情報を専用コンピュータが演算処理して、スリップやスライドの危険性を感知した際、エンジン出力の制御や四輪個別にブレーキ圧を制御して、アンダーステア、オーバーステア、スピンなどを回避し、安定した姿勢を保てるように働く仕組みになっている。
独立行政法人自動車事故対策機構の調べによると、ESCのついているクルマは、単独事故が約44%も減少するとのこと。その効果は折り紙付きだ。
にもかかわらず、ESCにはカットボタンが用意されている! どんな場面でESCのカットボタンを押すことを想定しているのだろう?
■ESCを解除したい場面とは?
●滑りやすい路面でスタックしたとき
ぬかるみや雪道、凍結路でスタックしたときに、ESCが働くとアクセルペダルを踏み込んでも出力が上がらなくなってしまう。
しかし、滑りやすい路面でスタックしてしまったときは、ある程度タイヤを空転させないと脱出できないことがあるので、こうしたときはESCのカットボタンを押して、アクセルをゆっくり踏み込みつつ、わざと少しだけ空転させて、脱出を試みてみよう。
上手くいかないときは、前進と後進を繰り返すのも有効だ。
●車検の検査ラインを通るとき
ディーラーや整備工場に車検整備を依頼する場合は先方任せでかまわないが、ユーザー車検で陸運支局の検査ラインに入るときは、あらかじめESCをカットしておくといい。
「受検に際して必要な指示事項」にも、「トラクションコントロール装置、横滑り防止装置、坂道発進補助装置等については、検査コースに進入する前に当該装置の作動状態を確認するとともに、必要に応じその機能を解除すること」と書かれているので、あらかじめ取扱説明書をよく読んで、設定方法を十分に理解しておくことが肝要だ。
●ジムカーナやドリフトの練習をするとき
サーキットやジムカーナ場などで、アクセルで積極的に向きを変えていきたい、ドリフト走行やパワースライドを練習したいといったときは、横滑り防止装置=ESCは邪魔になる。
こうした場面では、ESCをオフにするしかない。
しかし、派手な走りではなく、サーキットでタイムを出せるような走りを目指すのなら、ESCはONのまま、サーキット走行をするのがおすすめ。
スポーツ走行とはいえ、ESCが介入してくるということは、タイヤのキャパシティを越えて、アンダーステアもしくはオーバーステアが出ようとしたということに他ならない。
その原因は、突っ込みすぎによるオーバースピードだったり、ステアリングの切りすぎだったり、アクセルオンが早い、アクセルを踏む量が多い、荷重の過不足といろいろある。
いずれにせよタイヤへの期待値と、実際のタイヤの性能にギャップがあったということなので、そこは素直に反省し、自分のドライビングを見直す必要がある。
とくに雨の日や、気温が低く、タイヤが温まっていない状態では、ESCがあると安心。
ある程度上達して、どうしてもECSの介入が気になるという段階まで来たら、ESCを「スポーツモード」に切り替えるといいだろう。
「スポーツモード」にすれば、多少の横滑りは許容するようになり、ドライバーがコントロールする幅が広がるので、サーキット走行時はこの「スポーツモード」がおすすめ。
ESCを毛嫌いするのではなく、ESCと上手く付き合う方法を考えた方が、ドライビングテクニックもより早く、より安全に上達するはずだ。
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投稿 安全装置なのにオフにできる? 横滑り防止装置になぜオフスイッチがあるのか は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。