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現代のクルマは基本的に安全。でもクルマのブレーキが効かなくなったときの対処法は身に付けておくべし!

 「走る・曲がる・止まる」がクルマの3大要素といわれるが、安全を考えるうえで特に大切なのは「止まる」だ。現代の乗用車は、止まることに関してはいくつもの安全対策を講じているが、整備不良や経年劣化などが原因になり、「自動車のブレーキが効かなくなる」といった不測の事態は起こり得る。

 そこでまさかの時のために、「ブレーキが効かなくなったときの対策」について、覚えておきたい。

文/藤田竜太、写真/ベストカーWeb編集部、Adobestock

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ブレーキには二重三重の対策が施されているが……

クルマのメカニカルトラブルでもっとも怖いのはブレーキトラブル。一般的にブレーキの油圧経路は安全を配慮し2系統用意されている(Imaging L@AdobeStock)

 クルマのメカニカルトラブルでもっとも怖いのは、ブレーキが効かなくなるトラブルだ。

 あってはならないトラブルなので、自動車メーカーも設計時にフェールセーフをかなりしっかり考えていて、一般的にブレーキの油圧経路は2系統用意され、片方の配管にトラブルが発生しても、もう一系統でフォローする仕組みができている。

 具体的には、FR系は前輪側と後輪側の二系統に分かれていて、FFやFFベースの4WDは、対角線上の前後輪を結んだX配管になっていることが多い。

 こうしたフューエルセーフがあるので、仮にどこか一か所ブレーキホースなどが破れたとしても、X配管のクルマなら通常時に対し、およそ2倍の制動距離、前後二系統タイプのクルマで前輪ブレーキだけが働いたときは1.5~2倍、後輪のみなら2~2.5倍の制動距離で止まることがわかっている。

 ちなみにブレーキブースターが壊れたり、エンジンを切った状態でブレーキを踏むと、ブースターが効かない分、普段通りの踏力でブレーキを踏んだ場合、制動距離が1.5~2倍伸びるといわれている(全力でブレーキペダルを踏めば、ブースターなしでも制動距離は変わらない)。

もっとも起こりやすいのはフェード現象

 とはいえ、長い下り坂などで、ブレーキをずっと踏み続けたりすると、ブレーキの熱容量以上に負荷がかかり、ブレーキの熱の放散が間に合わなくなって、ブレーキの効きが悪くなってくることがある。

 いわゆるフェード現象というヤツだ。それともうひとつ、熱の影響でブレーキフルードに気泡が入り、その気泡の影響で油圧が弱まるベーパーロック現象というのも起こりうる。

 これらの現象が起きたとしても、急にブレーキがまったく効かなくなることはなく、徐々に効きが悪くなり、やがてブレーキペダルを踏んでも制動力が立ち上がらないという場面を迎える。

 前兆として、「ブレーキの効きが悪くなってきた」「ブレーキペダルの踏みごたえが柔らかくなってきた気がする」「ブレーキペダルのストロークが増えてきた」「何かが焼ける(焦げる)ような異臭がしてきた」などがある。

 このような異変を感じたときは、そのままクルマを走らせず、安全な場所にクルマを止めて、ブレーキを冷ますのがベスト(20~30分)。

電動パーキングブレーキでもクルマは停められる

非常時の停止手段としてサイドブレーキをひく方法もある。電動パーキングブレーキでもスイッチのレバーを引き続けていれば作動する(bizoo_n@AdobeStock)

 万が一、フェード現象やペーパーロック現象の予兆に気づかず、そのまま走り続けてブレーキがまったく効かなくなったらどうするか。

 まずはシフトダウンしてエンジンブレーキで速度を落とす。MT車なら3速→2速→1速と丁寧に一段ずつギアを落としてアクセルは全閉。AT車でもパドルシフトなどを使って、落とせるだけギアを落とす。

 プランBは、パーキングブレーキを使って止める方法。パーキングブレーキは、フットブレーキとは異なる独立したブレーキ系統なので、フットブレーキが効かなくなっても、パーキングブレーキは作動するはず。

 パーキングブレーキはリア2輪にしか効かないので、制動距離は前述の通り、通常のブレーキの2~2.5倍の距離、50km/hでドライのアスファルト路面を走っているときなら、4.5~5秒ぐらいで完全停止させることができる。

 このパーキングブレーキで止まるときのポイントは、できるだけハンドルを真っ直ぐにした状態で、徐々に徐々にブレーキをかけること。一気にパーキングブレーキを引くと、リアがロックし、クルマが暴れたりスピンすることもあるので要注意。

 電動パーキングブレーキでも、スイッチのレバーを引き続けていればパーキングブレーキは作動するので覚えておこう。

後続車に減速することの意志表示を!

山道であれば、道路脇に砂利や土を盛った「緊急退避所」に進入する方法もある

 もうひとつのトラブルとして、「ノックバック」というのもある。

 「ノックバック」は、ブレーキパッドがローターにより叩かれ、パッドとローターのクリアランスが正常時より広がり、ブレーキペダルを踏むとはじめの一回だけ深くペダルが沈み、その次からは正常に戻る現象だ。カーブ手前の減速ベルト(凸凹の舗装)やキャッツアイ、縁石を踏んだときに起きやすい。

 ノックバックは、ペダルを二度踏みすれば解消することが多いので、アレッと思ったときは一度ブレーキペダルから足を離し、もう一度踏み直してみるといい。

 シフトダウンやパーキングブレーキで減速するときも、後続車に減速する意思を伝えるため、ブレーキペダルを踏み続け、ブレーキランプを点灯させ、できれば緊急事態を知らせるべく、ハザードランプなども併用するようにしたい。

 その他、山道であれば道路わきに用意されている砂利や土を持って上り坂道状にした「緊急避難所」に進入する方法もあるし、最後の手段としては、クルマの側面をガードレールや壁、路肩に擦りつけ、その摩擦力で停車する方法もある。

 いずれにせよ、運転中にブレーキが効かなくなることほど怖いことはないので、ブレーキ関係は定期的にしっかり点検し、ブレーキパッドは摩擦材の残量が5mm以下になったらそろそろ交換、3mmなら即交換だ。(※法的にパッドの残量に規定はないが、定期的な点検こそ安全への最高の保険だ=編集部註)。

 ブレーキフルードも車検ごとに交換し、ローターの歪みやクラック、ブレーキホースの状態などもプロにチェックしてもらい、トラブルの発生を事前に防ぐことが肝要だ。

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