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2000年にスペシャルドラマとして誕生して以来、国民的ドラマとして定着した『相棒』。11月9日(水)には、最新作相棒season21の第5話が放送される。

テレビ朝日では新シーズンのスタートを記念し、「相棒インタビュー企画」を実施。各界の“相棒ファン”の著名人に、同作への熱い思いを語ってもらった。

今回は、タレントの麻木久仁子へインタビュー。

「右京さんは北極星のような存在」と語る麻木に、同作との出会いやシリーズを通じた魅力、オススメのエピソードなどについて聞いている。

◆「子どもたちにこそ『相棒』の全シーズンを見て欲しい」

もともと2時間ドラマが好きだったという麻木。『相棒』をはじめて見たのはプレシーズンだそうで、「これは今までの2時間ドラマにない新しいタイプだ」と感じたと語る。

麻木:「とにかくリアリティがあるんです。今までの日本の刑事ドラマだと、わりとバーンと投げ飛ばして逮捕するみたいな、そういうタイプが多かった。でも、実際には手続きがあったり、法的に証拠として認められるか認められないかとか、逮捕状が出るのか出ないのかとか、いろいろあるじゃないですか。

(『相棒』は)一つひとつの捜査の過程とか、証拠の見つけ方とか、証拠も入手する手段が違法だと使えない、みたいな。それぐらいリアリティがあったのがおもしろかったです」

今シーズンで久しぶりに復帰した亀山薫(寺脇康文)と杉下右京(水谷豊)のコンビも好きなポイントのようだ。

「右京さんと亀山くんのキャラの対比は、プレシーズンのときからハッキリとしていました。

頭がすごく回って、もうアンドロイドかと思うぐらい人間を超えたレベルの知性の持ち主と、熱いハートで勝負している亀山くん。このコンビネーションもすごくおもしろかったですね」

そんな麻木にとって、杉下右京というキャラクターは「法治国家の正義を体現する存在」なのだという。

麻木:「杉下右京さんの正義というのは法の正義なんです。この法治国家の正義というものは、みんなで支えて守っていかなければいけない。一人ひとりの有権者が守っていかないと、あっという間に崩れ去ってめちゃめちゃな世の中になってしまうようなものなんですよ。

人には感情があるから、かわいそうだから見逃したいときもある。気の毒で許してやりたいときもある。決められたものを守るのは、すごくつらい場面もあります。そのつらさをいつも亀山くんは直接受けている。

でも、どんなにつらくても大変でも、守るべきものは法の正義だ、ということを右京さんは教え続けてくれる。そういう意味では容赦ない人なんですよね。だけど、それが法治国家というものです」

麻木は続ける。

麻木:「なんか大仰な話だけど、すごい大事なことをエンタメで教えてくれるキャラクターなんですよ。学校の授業みたいに難しくない。だから、こんなに教育に良い番組はないです。子どもたちにこそ、『相棒』の全シーズンを見て欲しい。

とにかく杉下右京というキャラクターは、私にとっては先生ですね。ニュースを見ているときも『右京さんならどうする?』『右京さんならこれ何とコメントする?』と考えると、間違いないと思うんです。

人の心に寄り添っていくと、ときどき間違えてしまう。悪いと思っていても心が動いてしまう。それもまた人間ですけど、何があろうと正しいことを言うのはやっぱり右京さん。だから、右京さんは私の心の中にいる、羅針盤のような、北極星のような存在ですね」

◆「今話してても鳥肌が立つ」オススメのエピソード

プレシーズン以来、22年間にわたって毎シーズン『相棒』を見続けてきた麻木。オススメのエピソードを尋ねると、「亀山くんの活躍が心に残る回」として「裏切者」(『season5』第15話)を挙げた。

©テレビ朝日・東映

麻木:「ある銃撃事件で主婦の人が亡くなってしまうんですよね。で、なぜこの人が殺されてしまったんだろうと捜査をしていたら、実は警察の裏金問題や不正があるんじゃないかというのが浮かび上がってくる。調べれば調べるほど、警察内部の秘密に踏み込むことになっていく。

そうすると、法の正義は明らかですけど、人情で言ったら暴ける問題ではないんです。親しい人や尊敬する人も秘密に関わっているので。それでもう、亀山くんの心が引き裂かれてしまうんですね。

微動だにせず法の正義を体現する右京さんの横で、亀山くんが本当に苦しんでしまう回なんですよ。今話してても鳥肌が立つんですけれど、私も見てて自分が引き裂かれてしまいました。これ自分だったらどうする? って」

さらに麻木は、もう一つオススメのエピソードとして「最後の砦」(『season7』第7話)を紹介する。

©テレビ朝日・東映

麻木:「右京さんと亀山くんのキャラクターの対比がハッキリする回なんです。これもやはり、警察の内部に不祥事があって、取り調べ中に被疑者が亡くなってしまったんですね。

ところが、取り調べが公正に行われているかどうか監督する人は『不正はなかった』と証言したので、何もなかったことになる。それはおかしいぞということで特命係が調べはじめると、実は隠蔽があったんじゃないかということが見えてくるんですよ。

やっぱり右京さんが法の正義を体現する一方で、徐々に真実が明るみに出てくると、亀山くんは心が動かされてしまう。亀山くんは、一体どこまで真実を暴くべきなのか、暴くことによってはたして幸せになる人はいるのかと悩むんです。

しかも最後の最後に泣かせるような展開があるんですよ。途中まで『この人が悪い』と思って見ていたら、その人にも事情があることがわかって、そんなに単純じゃないんだと。見終わった後はもうソファにずっしりと埋まっちゃいました」

最後に、麻木は『相棒』のこんな楽しみ方を提案する。

麻木:「『相棒』を見ていたら『ああ、こういう相棒が欲しいな』って思うはずです。友だちでもない、恋人とも家族とも違う関係。同僚とも少し違うんですよね。自分の人生の“相棒”は誰だろうと思ったら、私だったらあの人かなとか、こういう人間関係を築けばいいんだなとか、そんなふうにも楽しめると思います」