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東京オリンピック・パラリンピックを巡る汚職事件で、出版大手「KADOKAWA」社員で元五輪担当室長が容疑を認めていることが分かった。毎日新聞によると、元室長は大会スポンサーに選定された謝礼として、大会組織委員会元理事の高橋治之容疑者に、あわせて約7600万円を送金したという趣旨の供述をしているという。

このニュースにネットでは、「役員が勝手に7000万円以上も動かせるわけがない」などと、KADOKAWAが会社ぐるみで元理事側に賄賂を渡していたのではとみる向きも少なくない。そうした中、SNSのある投稿が注目を浴びている。

東京地検特捜部が入る霞が関の検察庁総合庁舎(creampasta /PhotoAC)

見城氏「角川歴彦氏の大ワンマン会社」

投稿の主は、KADOKAWAの前身である角川書店元社員で、出版大手「幻冬舎」創業社長の見城徹氏。角川書店元社長の角川春樹氏に見いだされ、1975年に同社に入社した見城氏は、編集者として数々のベストセラーを手掛けた功績が認められ「月刊カドカワ」編集長、取締役編集部長などを歴任。1993年に同社を退社し、幻冬舎を設立した。

見城氏は7日、SNS「755」に次のように投稿した。

僕は角川書店(現・KADOKAWA)に17年いたし、当時の部下はまだKADOKAWAにいる。だから、解る。今のKADOKAWAは角川歴彦氏の大ワンマン会社である。ある程度の案件は角川歴彦氏が了解していなければ何も進まない。今回の場合は角川歴彦氏が企画立案し、部下に下ろしたものだと僕は確信する。

7600万円という金額を決裁できるのは角川歴彦氏しかいないという。

久し振りに会った(角川歴彦氏・談)コモンズ2の深見氏(編集部注・KADOKAWAが資金提供したコンサルタント会社の代表)にスポーツ全般コンサルタント料として7600万円支払いの決定を直ぐに出来るのは角川歴彦氏以外にない。僕が話したKADOKAWAの社員は全員そう言っているが、僕も全くその通りだと思う。

さらに、8日には、冒頭の元五輪担当室長が容疑を認めたニュースに絡めて、「元・室長が贈賄を認めたのか。上司である専務と2人だけの決断であるはずがない」と改めて強調していた。

事件のカギを握るKADOKAWA角川歴彦会長(左、右は当時社長の川上量生氏=写真:つのだよしお/アフロ)

「決裁権ない」角川氏は関与を全面否定

見城氏に名指しされた格好のKADOKAWAの角川歴彦会長だが、問題のSNS投稿2日前の5日、記者団の取材に応じ、汚職事件でKADOKAWAの元役員が逮捕され、同社も捜査対象になっていることについて、「本当に思いがけない感じでね。戸惑ってることばかりなんですよ」と述べた。

また、KADOKAWAが元理事側に7600万円を支払っていたことについては、「僕は決裁権がないんですね」「僕はそれを全然知らない」と自身の関与を明確に否定していた。

さらに、賄賂を渡した認識はないのかと記者から問われた角川会長は語気を強めて次のように述べた。

全くありません、全くありません。僕はそんなに心が卑しくね、今まで50年も経営をしたことはないんですよ。それ一緒にしないで!それは皆さんの企業だって、10年に1回はこうやって言いがかりみたいな事件ありますよ。でもその時にね、自分たちがそんなさもしいことをしなきゃね。だって、こんな小さなことなんですよ、KADOKAWAにとっては。そのために自分たちの精神を汚してまでも仕事をしろなんて言いませんよ。

なお、KADOKAWAは元役員が逮捕されたことを受け、6日に次のようなプレスリリースを発表した。

当社は、本件を厳粛に受け止めており、東京地方検察庁の要請に誠意をもって対応するなど、引き続き、当局の捜査に全面的に協力してまいります。関係者の皆様に多大なご心配とご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げます。

見城氏が指摘するように、この件に角川歴彦会長が全面的に関与しているのか。あるいは、角川会長が主張するように、自身は一切かかわりないのか。捜査の進展が注目される。