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Image:testing/Shutterstock.com

2016年に中国の国有ロケット開発会社である中国運載火箭技術研究院(CALT)は「長征9号」の設計開発をスタートした。この次世代大型ロケットはNASAのSpace Launch System(SLS)に似通ったデザインで、コアステージの脇をブースターが固める完全な使い捨て型のロケットになることを想定していた。

長征9号は推進剤にケロシンを用いるなど、SLSとはまったく違うところもあるが、基本的な考え方は共通するように見える。宇宙飛行士を月へ送り届けるための端末の超重量級ロケットとして、2030年までに完成、打ち上げを目指していた。

ところが、米国では民間のSpaceXが、完全に再利用可能なコンセプトのもとでStarshipの開発を押し進めて完成に近づきつつあるのを見て、中国も再利用可能ロケットの可能性に関する計画を立ち上げているようだ。

CALTの総設計部長Liu Bing氏は、中国南部で開催中の珠海航空ショーで中国中央電視台(CCTV)のインタビューに応え、最新のロケットの計画について、使い捨てを想定した長征9号に対し、新しい方向性の計画があることを確認した。

そのうえで次世代ロケットがサイドブースターを持たない、高さ108m、直径10m、重量4180トンの3段式ロケットになり、地球低軌道には150トン、月遷移軌道(LTO)で50トン、火星遷移軌道には35トンの物資を輸送する能力を持つと説明した。またその最初の試験飛行は2030年ごろを予定しているという。

ただ、次世代ロケットはまだ最終的な設計を確定していないとも述べ、最適な開発パスを追求する中で設計に変更を生じる可能性も高いとした。また非公式ながらケロシン燃料でなくメタン燃料を採用したバージョンの計画もあり、こちらは2035年までに完成する可能性があるとした。

中国当局は最近、ケロシン燃料を使用する非常に強力なロケットエンジン「TF-130」の燃焼テストを実施した。これは当初、長征9号に搭載されると考えられていたものだが、再利用可能な方向に進路を変えたロケット開発の流れのなか、このエンジンが適用されるかどうかは不透明になりつつある。

珠海航空ショーでは、長征5号Dengyue(月面着陸)または長征5号Gなどと呼ばれる新しいロケットも展示されている。こちらは27トンのペイロードを月面に着陸させる能力を持ち、有人宇宙船と着陸用スタックを別々に月軌道に送り込む能力を持つという。これによって2人の宇宙飛行士が月面着陸できるようになるとのことだ。

ちなみに、NASAやその他の宇宙機関は通常、打ち上げたロケットが大気圏に再突入する際、再突入で燃え残った残骸が都市部に落ちたりするなどの被害をおよぼさないよう制御している。

しかし中国は現行の使い捨て型ロケット長征5号Bの運用において、これまでに複数回、軌道からロケットを無制御で大気圏に落下させている。先日も落下ルートの下にあたる欧州諸国が、万が一に備えて空域閉鎖などの対応を余儀なくされている