みなさん、こんにちは! スペイン・バルセロナに留学中のバイク大好き大学生、ウチノアミです! 今回は11月4日から6日にかけてスペイン・バレンシア州にあるリカルド・トルモサーキットで開催された、MotoGP最終戦のバレンシアGPを観戦して来ました! 実は今回、スズキの方々のご厚意で、パドックにも招待していただけました。パドックと観客席の両方から、写真を多めに交えて雰囲気をお伝えします!
では、早速スタートです! レースウィーク木曜日、大学の授業を15時半に終えて、急いでバスターミナルに向かいます。バレンシア行きのバスの発車時刻は16時半。なんとか乗車して、約4時間。バスの中は、冷房がこれでもかとガンガンに効いていて、凍えながらバレンシアに向かいました。
20時半に到着。タクシーでホテルに向かい、チェックインします。今回はPole Position Travelという会社のツアーパッケージを利用しました。チケットやホテル、サーキットへの送迎などをも込みなので、手軽&気軽です。
金曜日。ゲストパスを受け取った後、スズキの担当者の方にピットボックスを案内していただきました。このバレンシアGPは、今シーズンの最終戦というだけでなく、2022年でMotoGP参戦を終了するスズキにとってのMotoGPラストレースでもあったので、ピットボックスの壁には世界中のファンからのメッセージがびっしり! アレックス・リンス、ジョアン・ミル両選手のヘルメットは、チームスタッフ全員の写真がペイントされたスペシャル仕様。マシンのテールカウルには、さまざまな言語で“ありがとう”と書かれていました。ピットボックスの至る所に散りばめられた感謝の表れに、ぐっと込み上げてくるものがありました。
ピットボックスでは、リンス選手のマシンにまたがらせていただいた上に、リンス選手のメカニックの方にマシンのスイッチなどの解説もしていただけました。カラフルなボタンに押し間違い防止のカバーなど、ライダーが時速300キロ以上で走りながらも操作できる工夫が随所に。印象的だったのは、マシンのスイッチを入れた際にチームの写真がスクリーンに現れたこと。ここにもスズキのチーム愛をひしひしと感じました。
その後、ピットボックス内からセッションを見学。マシンの爆音と緊張感のある雰囲気を肌で感じながら、セッションの進め方やスタッフとのコミュニケーションを間近で見ることができたのは、とても面白かったです。
午前中のFP1はコースのすぐ横、コースマーシャルさんやカメラマンさんなどがいるサービスロードに入れるパスを貸していただき、ロケハンをするスズキのカメラマンさんと一緒にサービスロードを通ってコースの周りをぐるりと1周しました。
バレンシアサーキットは比較的小さめで平坦なサーキットなので、1周歩いても体力の消耗はありません。ここでカメラマンさんと一緒にセッションを撮影。自分の短いレンズでは限界がありましたが、MotoGPマシンの走行を近くから見て、撮影することができて、大興奮でした!
さらに、MotoGPのFP2のセッション中にスズキの方にピットウォールまで連れて行ってもらいました。MotoGPマシンのストレートの走りをすぐ目の前で見ることもできました。バレンシアサーキットは小さめのサーキットとはいえ、トップスピードは時速330キロ以上。全日本のレースなどでピットウォールから走りを見た経験はありましたが、鼓膜が痺れるほどの爆音と目がまったく追いつかないほどの速さは段違いで、ただただ圧倒されました。
金曜日の夜は、ツアーで用意されているディナーへ。このディナーでは毎回スペシャルゲストが登場するそうなのですが、今回のゲストはライディングスポーツでもお馴染みのマヌエル・ペチーノさんとTwitterでよく意見を参考にしているサイモン・パターソンさん。MotoGPの有名ジャーナリストおふたりのお話をたくさん聞くことができ、有意義な時間でした。
翌土曜日は観客席とパドックを行き来して、ダブルで楽しみました。前述の通り、バレンシアサーキットは、小さめで平坦なサーキットです。そのため、観客席がコースをぐるりと囲むスタジアム状になっていて、どの席からもコースのほぼ全体を見渡すことができます。
通常のサーキットでは、多くても3〜4個のコーナーしか見ることができず、レースの様子を知るにはスクリーンやケータイで見るビデオ、アナウンスなどに頼ったり、後から見返したりする必要があります。でも、バレンシアではレース展開を自分の目でほとんど追うことができます。現地観戦ならではの音や速さ、雰囲気だけでなく、レース内容まで楽しみ尽くせます。
私が取ったエリアはピットボックス上のメイングランドスタンド。私の席からは最終コーナーだけ少し見にくかったものの、コースの他の部分は、はっきりと見ることができました。さらに、すぐ近くに大きなスクリーンがあり、アナウンスも明瞭だったので、レースやセッションの流れの把握も簡単でした。
FP3のセッションと予選は観客席から見ていたのですが、ストレートを見てスピードに感動したり、ひとつのコーナーを見つめて色々なライダーのラインやフォームの違いを比べたり、ひとりのライダーを追ってみたりと、同じ場所にいながらさまざまな楽しみ方ができました。
また、同じツアーで日本人の同年代の女の子ふたりとの出会いもありました。女子たちとのおしゃべりも新鮮でとても楽しかったです。
Moto2クラスのセッションでは、アラゴンGPの時に引き続き小椋藍選手の旗を観客席から振っていたのですが、ちょうどメインストレートを映すカメラが目の前にいたので、国際放送カメラにすっぱ抜かれました(笑)。
決勝では前述の女の子ふたりが日本国旗を持ってきていたため、3人で小椋選手の旗と日本国旗を振りまくったところ、合計5回(多分)国際映像に映りました(苦笑)。少しでも応援が伝わっていれば嬉しいなあと思います。
驚いたのはバレンシアGPの観客の多さです。土曜の予選時にはスタンドは、ほぼ満員。日曜日はさらに多く、空席はありませんでした。公式発表の観客数は金曜日1万6374人、土曜日6万1840人、日曜日は9万2166人で、合計17万380人。9万人以上の人が同じ場所に集まり、同じレースを観ていて、自分もその中のひとりとしてその場にいることができたのは感慨深いです。
セッションがない時間は、ほとんどパドックで過ごしていました。日本GPのパドックやWorld SBKのパドックは入ったことがありますが、MotoGPのヨーロッパラウンドのパドックは初体験。
日本GPでは輸送の関係でホスピタリティ(ホスピ)は仮設のコンテナ、ピット前も質素ですが、コンチネンタルサーカスと呼ばれるヨーロッパでのグランプリでは、ピット前にトラックがずらりと並び、大きな建物のようなホスピがその後ろに建っています。
映像では何回も見ていたものの、いざその景色を目にすると圧巻で、MotoGPの世界最高峰レースとしての誇りや威厳が伝わってきます。
ピット前のトラックは、クラスが上がるにつれて豪華になっています。MotoGPのワークスチームのほとんどのトラックは周りを改装してひとつの建物のようになっているほか、MotoGPクラスのチームのピット前には所属ライダーの大きなボードが掲げられています。このボードのおかげで、MotoGPにあまり詳しくないゲストでもチームとライダーを認識できるほか、撮影スポットとしても人気でした。
チームが多くのゲストを迎えるための施設であるホスピは、形も大きさも色も多種多様ですが、どこのホスピもマシンが展示されていたり、電飾でデコレーションされていたり、とても豪華です。
ウィーク中はスズキのホスピでランチをいただきました。イタリアンシェフの料理をビュッフェ形式で。どれもこれも美味しそうで、気づいたらお皿が山盛りでした(笑)。幸せな時間でした!
そして何と言っても、パドックの一番の醍醐味はライダーに遭遇できるところ。MotoGPのトップライダーでも、一瞬気づかないくらいにナチュラルにスクーターで駆け抜けて行ったりして、何人かのライダーの写真を撮ることができたのでご覧ください!
土曜夕方の楽しみといえば観客席側のステージでのライダートークショー。これはほぼ毎戦行われていて、アラゴンGPの時も堪能させてもらいました。今回も予選後にパドックを出て、ステージに向かいます! しかし、アラゴンGPの時よりも格段に観客の数が多く、危うく埋もれそうになったので、堪能というわけにはいきませんでした。
このステージの側には、メーカーのブースやグッズショップが並んでいます。アラゴンでは点在する観客席と共にショップも分散していましたが、バレンシアは一極集中。その分たくさん見ることができました。
土曜夜はスズキのラストパーティーに参加。暗くなると同時にホスピがバーに変身し、音楽を流して踊る様子は、昼間の少しピリついたパドックとは打って変わり、とても陽気な雰囲気でした。
そして決勝の日曜日。この日は朝から大賑わいです。バレンシアGPでは、パドックの入口付近の観客が入れるエリアに“ヒーローウォーク”という場所が設置されており、金曜日から日曜日まで、朝のセッション前に各クラスのライダーがファンサービスをしに訪れます。ピットウォークは木曜日のみで、パドックの解放はないため、ライダーと触れ合える貴重な機会です。
11月初めのバレンシアは1日の気温差が激しく、決勝日の朝の最低気温は9度だったのに対し、最高気温は27度。正直朝の寒さをなめていたのでGジャンにTシャツしか着ていなかったのですが、あまりの寒さにグッズ売り場で慌ててトレーナーを購入。温かい上に可愛いので早速お気に入りになりました。
決勝日はほぼパドックには行かず、観客席で過ごしました。レースとレースの間隔はテレビ観戦していると長く感じますが、現地にいると、ひとつのレースの後にトイレに行って、食べ物を買って観客席に戻ると、もう次のレースが始まるので、なかなか時間がありません。
トイレも食べ物の売店も観客席の近くにありますが、レースの合間は大行列。面白いのはビールを買っている人が多いこと。運転はどうするんだろう……という疑問を頭の隅に残しつつも、お酒を飲みながらレース観戦するのは、楽しそうです。
観客席は満席。思い思いの格好で推しのライダーやメーカーを応援する人でスタンドがびっしりと埋まっており、コロナ禍での無観客レースやスカスカの観客席にとてつもない寂しさを感じていた私は、この光景だけでテンションがかなり上がりました!
さて、いよいよレース本番。最終戦のバレンシアGPの醍醐味はレースだけでなく、チャンピオン争いも同時に楽しめるところです。今シーズンはMoto3クラスでは既にイサン・ゲバラ選手がチャンピオンを決めているものの、Moto2クラスではアウグスト・フェルナンデス選手と小椋藍選手の、MotoGPクラスではフランセスコ・バニャイア選手とファビオ・クアルタラロ選手のタイトル争いが最終戦にもつれ込んでおり、その行方を追いながら現地でハラハラすることができるのは、最終戦ならではです。
レースの結果はサラッと。Moto3クラスではチャンピオンを獲得したゲバラ選手とデニス・オンジュ選手が後続を引き離し、ラストラップで一騎討ち。後半セクションで前に出たオンジュ選手が勝つかのように思われましたが、最後の最後でぎりぎりゲバラ選手が前に立ち優勝。観客席で見ていてどちらが勝ったか一瞬わからなかったほどのバトルを制したゲバラ選手の走りは、さすがでした。
次にMoto2クラス。同学年の日本人ライダーが最終戦までタイトル争いをしているということもあり、観客席にいながらものすごく緊張していました。
9.5ポイント差でフェルナンデス選手を追いかける小椋選手は、レース序盤フェルナンデス選手より前をバトルしながら走っていましたが、8周目に転倒し、リタイヤ……。見ている側もとても悔しく、しばらく呆然としていましたが、シーズンを通して小椋選手の力強い走りを見ることができたことはとても嬉しかったです。レースは、序盤から勢いがあったルーキーのペドロ・アコスタ選手が優勝。来年のタイトル争いでの小椋選手のライバル候補の筆頭。早くも来シーズンが楽しみです。
最後にMotoGPクラス。レースは5番グリッドから抜群のスタートを決めたスズキのリンス選手がホールショットから一度もトップを譲ることなく走り抜け優勝。スズキの有終の美を飾ったリンス選手のあまりのかっこよさに、観客は総立ちでスタンディングオベーション。素晴らしすぎる最後であったと共に、スズキのMotoGP撤退が余計に惜しまれる優勝でした。
チャンピオン争いでは、クアルタラロ選手が4位、バニャイア選手が9位でゴールしたものの、最終戦前に23ポイント差をつけていたバニャイヤ選手がチャンピオンを獲得。どのクラスのレースも見応えがあり、20数周があっという間でした。
レース後は、パドックを散策した後、アイスを食べてからホテルに戻りました。翌月曜日は朝9時から授業のため、仮眠を取った後、深夜バスでバレンシアを発地、朝方バルセロナに戻るというハードスケジュールでした(笑)。
ずっと憧れていたバレンシアGP。実際に行ってみると、サーキットのレイアウト的にも設備的にもレースを存分に楽しむことができ、最終戦ならではの雰囲気をたくさん味わうことができました。バレンシア市内からも近く、交通の便もよいので、海外観戦の初心者の方にもオススメです。
今年はヨーロッパのいくつかのサーキットに足を運びましたが、一番観戦が“ラク”で楽しかったのは、間違いなく、このバレンシアです。ちなみに、今回お世話になったツアー会社のPole Position Travelさんには日本人の添乗員の方がいらっしゃったので、気になる方は是非、チェックしてみてください。
最後に……チーム・スズキ・エクスターの皆様、本当にお疲れ様でした! 最終戦の優勝、おめでとうございます!! そして、大変お世話になりました、ありがとうございました!!!
なんだかスズキ寄りのレポートになってしまいましたが、スズキの方々にとても楽しませていただいたので許してください!
さて、私はこれからイタリア・ミラノで開催中の欧州最大のモーターサイクルショー、EICMAに向かいます。ホットなネタを紹介予定なので、楽しみにしていてください!
それでは皆様、Gracias, y hasta pronto!