シトロエンはいよいよ昔の偉大さに戻る?シトロエンC5 Xプラグインハイブリッドの初テスト。新型シトロエンC5 Xは、過去の華やかさを少しだけ蘇らせるはずだ。我々のテストは、これが本当に有効かどうかを示すものだ。
シトロエンには、大型の高級車の伝統がある。今では少し忘れ去られているかもしれないが、忘れられないモデルである「CX」や「XM」「C6」だ。現在そのレンジは「DS」が担っているとも言えるが。
さて、最後のミッドサイズ「C5」は、これらの名車シリーズに属するとは言い難いかもしれないが、それさえも5年前にそっとこの世を去った。そして、新型「C5 X」で、シトロエンは再びそんな上のセグメントへと踏み出す。果たして成功するだろうか?
いずれにせよ、新型車はクラシックなノッチバックサルーンにすることは許されなかった。このポジションは、現在独立した子会社DSの「DS 9」が担っているのだ。そこでシトロエンは、「C5 X」でやや異なるアプローチをとっている。エレガントなセダン、実用的なステーションワゴン、頑丈なSUVをミックスしたような車(クロスオーバー)を世に送り込んだ。
全長4.81メートル、幅1.87メートル、高さはやや高めで、確かに風格のある佇まいだ。長いフロントオーバーハング、フラットなボディ、伸びやかなリアなど、面白いほど個性的なデザインとなっている。丸みを帯びたリアなど、「C6」との近似性も若干見て取れる。
C5 Xはクロスオーバーデザインで登場
クロスオーバーとは、SUVとステーションワゴンの中間に位置するモデルとして、SUVとワゴンの両方の要素を採り入れたモデルのことだ。シトロエンはインテリアにも愛情を注ぎ、巨大なダッシュボードにドライバー用の7インチとマルチメディア用の12インチタッチスクリーン(シャイン装備)の2つのディスプレイを備え、さらにあらゆる美しいディテール、凝ったステッチ、さまざまな素材の選択肢を備えている。
柔らかな布張りのカジュアルから快適なシートも、うれしい伝統だ。横方向のサポートはないが、別料金(機器により800ユーロ=約11万円より)で8種類のマッサージプログラムがあり、中には猫の足や蝶々などロマンチックな名前のものもある。しかし、ステアリングコラムを十分に引き出せないため、背の高いドライバーは若干足を後ろに曲げて座らなければならないのが残念だ。
そして、シトロエンはいくつかのスペシャリティな装備を持たなければ、シトロエンとは言えない。シングルスポークのステアリングホイール、虫眼鏡のようなスピードメーター、コントロールサテライトなど、伝統的なものもある。「C5 X」では、2つのディスプレイをさまざまに構成することができるが、運転席のメーターは皮肉な意味でしかない衝撃的なシンプルなグラフィックデザインであり、12インチのタッチスクリーンは混乱した操作性で正確に自分の行きたい道を見つけるのは難しい・・・。
音声コントロールがあまり聴き取れない
ステランティスグループの他の車とは異なり、ショートカットキーは2つしかなく、音声コントロールは再トレーニングが必要で、ボリューム用の回転式コントロールは乗客の頭の反対側にあり、ギアボックス用の硬いスライダーも非実用的である。
しかしそれでも、エアコンの操作パネルが独立していること、運転席ドアのミラー調整でヘッドアップディスプレイの高さ調整ができることは良いアイデアだと思える。
背中の上からすぐにきつくなる
スペースは、シトロエンのサイズから想像されるほど広くはない。「C5 X」はクラスとしては十分な広さを持ち、特にリアでは十分なニールームが確保されており、ヘッドルームは過不足なく確保されている。
比較のため、フロントでは、「A4」に比べて2cm、「Q5」に比べて4cm、リアでは「A4」に比べて半分、「Q5」に比べて6cm不足している。つまり、背の高い人は頭を下げなければならないのだ。もちろん、これはクロスオーバーデザインの結果であって、「C5 X」は完璧なSUVではないので、その結果に耐えなければならないのだ。
ラゲッジルームは485~1,580リットルの容量があり、スイッチ操作で背もたれを2つに折りたたむことができる。積載量は394kgと控えめで、牽引力も1.35トンとタイトだ。
シトロエン、グループのハイブリッドソリューションを採用
技術的には、「C5 X」は、「オペル アストラ」や「プジョー308」、そしてシトロエンの他の多くのモデルにも採用されている「EMP2」プラットフォームをベースにしている。駆動方式は、180馬力の1.6リッター4気筒ガソリンエンジン、110馬力の電動モーター、12.4kWhのバッテリー、アイシン製8速ATで、システム出力は224馬力となる。
標準充電は3.7kWだが、充電速度を2倍(7.4kW)にする場合は400ユーロ(約5万6千円)の追加料金が発生する。シトロエンは電気航続距離を60kmとしているが、テストでは47kmだった。このシステムはなかなかスムーズかつ流暢に仕事をこなしている。
しかし、それでも残念ながらいくつかの場面では常に少し遅れて反応し、圧力がかかるとかなり荒いトランジションも見せる。1.6リッターエンジンは、エネルギッシュだ。
C5 Xは敏捷性に欠ける
ハイドロニューマチックは搭載されなくなったが、プラグインハイブリッドには、センサーが路面の状態を探り、各ホイールのサスペンションを個別に調整できるアダプティブ アドバンスト コンフォート アクティブサスペンションが搭載されていて、これがよく効いている。「C5 X」のサスペンションは、特に長い起伏のあるところでは、すばらしく柔らかく滑らかである。
ステアリングは滑らかだが、機敏さとは無縁のものだ。しかし、深くリラックスした心地よさとも言えるだろう。
価格: 44,980ユーロ(約630万円)より
また、適正な価格であることから、リラックスして過ごすことができる。「C5 Xプラグイン」は、非常に完成度の高いベーシックな「Feel Pack」仕様で44,980ユーロ(約630万円)から、テスト車の豪華な「Shine Pack」仕様で49,980ユーロ(約700万円)から販売される。
シトロエン C5 X ハイブリッドのテスト風景
結論:
この「シトロエンC5 X」は好感の持てるタイプだ。もちろん完璧ではないが、面白いデザインや内装で、まさにシトロエンファンが喜ぶフランス車らしいものだ。
【ABJのコメント】
シトロエンが最近発表する新型モデルは、どれもなかなか斬新でありながらシトロエンらしい柔らかさと快適性を持ったものが多く、この「C5 X」もその例に漏れない仕上がりらしい。写真ではものすごく大きく見えるボディも実はそれほど巨大ではないし、エンジンの大きさもそこそこなこともあり、価格的にも魅力的な展開となっている。さらにエンジンバリエーションもハイブリッドシステムを持つこともあり、なかなか燃費もいい、とくれば人気を博して当然なのだが、悩ましいのはDSという兄弟分の存在である。
DSはシトロエンよりもさらにデコラティブでデザイン性が強いが、内装などは明らかにシトロエンよりも洗練され質感が高い。今回の「C5 X」もデザインなどはかなり頑張っているが、よくよく内装などを眺めてみればちょっと安普請な部分や妥協しているところも多いように見うけられる。それでも昔のシトロエンを知っている者にとっては豪華で装備も素晴らしく充実しているし、各種電子デバイスなども決して劣っていない。そう考えると今、シトロエンという選択は大いにありだし、なかなか旬な存在だと思う。あとはくどいようだがDSとシトロエンと、さらにプジョー(これもまた魅力的なモデルが多い)の中からいったいどれを選べばいいのか、という楽しい悩みになかなか結論が出ないことだろうか。とにかく今のフランス車は、どれも魅力的だと言い切ってよいと思う。(KO)
Text: Dirk Branke and Mirko Menke
加筆: 大林晃平
Photo: Stellantis N.V.