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 ドイツ・ハノーバーで9月20日~25日にわたり開催された「IAAトランスポーテーション2022」は、それまでの商用車トレードショーから、将来のトラック輸送を各社が提案するイベントへと趣旨を変えたものだ。そのトレンドを現地取材から紹介する。

 欧州以外のトラック完成車メーカーとして参加したのが、東風、比亜迪(BYD)、徐工(XCMG)という中国メーカー3社だ。出展規模は異なるが、いずれもEUの車両型式認証(WVTA)を取得したEVモデルを展示、乗用車やバスに続いて、トラックでも欧州市場に進出する姿勢を示していた。

文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部


東風/日産技術を活用した新小型トラックが登場!

東風の「キャプテンEV45」。中国国内では「キャプテンe-スター(凱普特e-星)」と呼ばれる最新型の小型EVトラックである

 中国を代表する大手メーカー・東風汽車は、グループの東風軽型車が供給している「凱普特(キャプテン)」ブランドの小型トラック・小型商用車を4台出品し、うち3台がバッテリーEV(BEV)だった。

 グリルレスのフロントデザインを持つのが、2020年秋に発表された新小型EVトラック「キャプテンEV45」で、IAA開催直前にEU WVTA認証を取得、EU域内で販売可能になったと発表している。室内もモダンなデザインで、メーターパネルは全面カラーLCDとなっている。

 車両総重量(GVW)4.25トン車だが、キャブ幅は1.9mで、日本のワイドキャブ車よりもさらに幅広である。容量81.14kWhの寧徳時代(CATL)製リン酸鉄リチウムイオン電池と、連続出力81.5ps・最高出力163psの走行用モーターを搭載、ドライブラインはプロペラシャフトを用いた従来型で、2速AMT(機械式自動変速機)と組み合わせているという。最大積載量は1.2~1.5トン程度、航続距離は350km前後とされている。
 
 唯一のディーゼル車である「キャプテン・ネビュラ」は、キャプテンEV45と同時に発表されたGVW7.5~12トンの小中型トラックの最新モデルだ。EV45とともに、開発には日産自動車が関与、特に日産基準の開発手法を導入することで、優れた性能・安全性・耐久信頼性が実現できたという。キャブプラットフォームがF24系アトラス/キャブスターの延長線上にあることもうかがえる。

 展示された「キャプテン・ネビュラ」は、東風カミンズ製の185ps・4.0リッター直4エンジンと、カミンズの特許技術である尿素SCR・DPF一体型の排ガス後処理システムを搭載したホイールベース3.8mモデルで、中国製バンボディを架装していた。

 残る2台のEVは、GVW3.5トン小型EVトラックの「キャプテンEV35」と、GVW3.0トンワンボックスEVバンの「キャプテンEV30」で、以前から中国国内で設定されているモデルである。

比亜迪(BYD)/欧州市場を意識したEVトラックの完成度!

BYDの「ETM6」。アルファロメオやランチア、アウディの乗用車デザインを手掛けてきた実績を持ち、現在はBYDのデザイン責任者であるヴォルフガング・エッガー氏によるデザインだ

 BYDは、以前から欧州でEVバスを販売してきたが、今秋からEV乗用車の導入をスタート、そして今回のIAAでは、欧州市場向けに開発したとされるEVトラックの公開へ進んできたわけで、市場参入のステップがうかがえそうな動きである。
 
 IAAで欧州デビューを果たしたトラックは、GVW7.5トン小型EVトラックの「ETM6」と、GVW19トン大型EVトラック「ETH8」の2台。キャブのエクステリアそのものは、すでに中国国内で発売されているものとほぼ同じである。

 「ETM6」は、GVW7.5トン・全幅2.0m車という小型トラックでも大きめの車格のクルマで、キャブ付シャシー状態の最大積載量は3.8トン、航続距離は200kmを確保するという。

 個性的なキャブのデザインは、欧州メーカーで乗用車のデザイナーとして活躍してきたヴォルフガング・エッガー氏(現・比亜迪デザインダイレクター)によるもので、コンパクトな印象を与えるが、実際の車格は前述のとおりである。

 BYD独自の容量126kWhリン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池、5in1コントローラユニット(モーター制御・分電盤・DC-DCコンバータ・ステアリング制御・エアコンプレッサを一体化)、最高出力203ps・最大トルク550Nmのeアクスル(モーター組込式駆動軸)、水冷式バッテリー温度管理システム、充電率(SOC)20%→100%まで1時間の急速充電システムなど、EVメーカー(実は内燃エンジン車も生産しているが)として評価を得てきただけに、そのスペックは優秀である。

 「ETH8」は、GVW19トン車は2軸4×2シャシーで、キャブ付シャシー状態の最大積載量は11.2トン、航続距離は200kmとする。

 「Xフェイス」と呼ばれるデザインテーマを採り入れたキャブだが、基本的なムードはETM6と共通で、やはり実際の車格のイメージとは少し離れた印象がある。しかし内装の質感の高さは想像以上で、ドライバーの快適性を重視する欧州市場を意識していることが、十分にうかがえるものだった。ショーモデルだけの特別仕立ての可能性もあるが、10年前の中国製トラックと比べるともはや別次元である。

 最高出力248ps・最大トルク450Nmのeアクスルを装備してプロペラシャフトを廃しており、LFP電池パック8個をシャシーフレームの中央(サイドレール間)と左右に搭載、総容量は255kWhに達する。SOC20%→100%までの急速充電に要する時間は2時間だ。
 
 なお、BYDでは、次世代リン酸鉄リチウムイオン電池技術として話題の「ブレードバッテリー」を搭載する、大型EV路線バス向けの新開発プラットフォーム・コンセプトもIAAで発表している。

徐工(XCMG)/EU型式認証を取得した大型EVトラックも!

徐工の「E5エレクトリックミキサトラック」。キャブバックに高電圧バッテリーを搭載、その電力を直接シュヴィンク社が開発した電動油圧ユニットに送って、ミキサドラムを回転させる

 徐工集団は中国の大手建機メーカーグループの一つだが、傘下に大型トラックメーカー・徐工汽車(通称・徐工重貨)を所有(もともと系列外の地方トラックメーカーを買収)しており、大型セミトラクタや大型トラックシャシーを「漢風」ブランドで供給している。

 出品したのは大型トラック3台で、そのうち2台がバッテリーEVである。実は、プレスデー時点ではまだブース設営中だったため見られなかったのが、中国国内で実証試験が進められている高電圧バッテリー交換システムの縮尺モデル展示で、全体では特装車のBEV化を、バッテリー交換システムとともに提案する意図があったようである。

 まず、大型EVトラックの1台が「E5エレクトリックミキサトラック」だ。「漢風P5」GVW31トン・8×4シャシーをベースに、容量282kWhのCATL製LFP電池をキャブバックに設置、連続出力1563ps・最高出力3263ps(この数値はリダクションギヤで増幅した値とみられ、モーター単体のスペックは連続出力383ps・最高出力550ps)のモーターを搭載してBEV化した上で、独・シュヴィンク社製の電動油圧ユニット(モーターにより油圧ポンプを駆動)と徐工製ミキサードラム(容量12立方メートル)を架装し、フル電動ミキサ車として仕上げたものである。

 もう1台の大型EVトラックが「E7エレクトリックトラクタ」連結総重量33トン・4×2セミトラクタで、同社によると「EU WVTA認証を取得した初の中国メーカー製4×2トラクタ」とのことで、EU域内で販売可能になったとしている。

 E5ミキサと同じく容量282kWhのCATL製LFP電池をキャブバックに搭載、こちらはモーターの連続出力383ps・最高出力550psとモーター単体の数値が掲示されており、E5ミキサでは未公表だった航続距離も246kmとしている。

 なお、中国市場向けには、6×4セミトラクタEV「漢風E7」が製品化されているが、E7エレクトリックトラクタのキャブデザインは、基本的にそれと同じものだった。また、架装していた第5輪カプラも中国メーカー製だった。

 残る1台はディーゼル車の「漢風P9トラクタ」で、欧州ハイエンド車を意識したGVW25トン(連結総重量は不詳)6×4セミトラクタとしている。

 漢風P9も中国市場で販売中だが、展示車は中国のトラックでは珍しい後輪エアサスペンションを装着したもので、Euro-6排ガス規制適合のウェイチャイ製550ps・12.5リッター直6エンジン、油圧リターダ付の法士特製16速AMTを搭載、第5輪カプラもヨースト製を架装するなど、確かに欧州志向の仕立てとなっていた。

 現地メーカーが強い欧州市場に、中国製トラックが食いこんでいくのはやはり難しいと考えられるが、一部では価格競争力のあるトルコ製トラックが見られるようになってきたのも確かで、今後の推移が気になるところである。

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