大切なクルマはできるだけいい状態で長く乗りたいもの。そのためにメンテナンスなどに気を使っている人も多いだろう。だが、そうとは知らずにクルマの健康寿命を縮めてしまっているケースもある。
今回は、ガソリンやバッテリーなどが空になるまで給油や充電を行わない“ギリ走行”のデメリットを紹介し、愛車を長持ちさせるコツを考えていきたい。
文/長谷川 敦、写真/写真AC、マツダ、日産
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知ってますか? ガス欠のダメージ
燃料タンクの残量表示が空になっていることに気がつかず、燃料切れによってエンジンが停止してしまうのがいわゆる「ガス欠」だ。ガス欠によるストップ自体も大きなトラブルだが、実は、ガス欠で引き起こされる弊害も意外に多い。
最初に紹介するのは燃料を噴射するインジェクターの過熱だ。高圧力で燃料を吹き出すインジェクターには、その機能上発熱しやすいという性質がある。燃料を噴射し続けているなら、その燃料自体がインジェクターの冷却と潤滑も行っているので問題ないが、ガス欠状態だと“空ぶかし”になり、インジェクターにダメージを与えてしまう。
これは燃料ポンプでも同様で、燃料タンクが空になった状態で燃料ポンプの作動を続けると、ポンプ内部のモーターが過熱し、それが摩耗の原因にもなる。一度ダメージを受けたモーターは、給油を行っても元の状態には戻らない。
そして最後はスターターの劣化。ガス欠したクルマに給油し、再びエンジンを始動するためにスターターを回すが、燃料パイプ内に燃料が行き渡るまでには数回スターターを回す必要があり、これもスターターモーターやバッテリーの負担を増やすことになる。
このように、ガス欠には弊害も多く、場合によっては周囲の交通状況にも影響を与えてしまう。やはり残量表示はマメに確認して、ガス欠を起こす前に給油するのが最善と言える。
“電欠”だって問題は深刻
次に考えたいのが最近急速にシェアを拡大しつつあるBEV(バッテリー電気自動車)の電欠について。ガソリン車でもエンジンの始動を始め、ライトやエアコンなど、さまざまな用途にバッテリーが活用されていて、そのバッテリーが上がってしまうと一大事だが、バッテリーのみで走行するBEVではどうなのだろうか?
内燃機関(エンジン)によって発電と充電を行えるハイブリッドカーとは違い、BEVの場合は電欠によって即走行不可になってしまう。これはある意味ガス欠と同様だが、給油を行えばすぐに走行できるガス欠に対し、ある程度の充電時間が必要なBEVの場合、充電設備のある場所までレッカー移動が必要など少々やっかい。そして、電欠ではさらに大きな問題もある……。
BEVに使われるバッテリーの多くに、過放電に弱いという性質がある。過放電されたバッテリーはダメージを受け、次に充電を行っても、本来のバッテリー容量まで充電されない可能性もある。だからこそ、バッテリーを空にしないよう心がけるのが大切なのだが、それを意識するあまりの“急速充電の多用”と“ちょこちょこ充電”もまたお薦めできない。
短時間で充電できる急速充電は便利だが、これは大きな電流をバッテリーに押し込むことによって成立している。当然ながら急速充電中のバッテリーは発熱も大きくなり、これがバッテリーへの負担となる。
最近ではバッテリーの状態に応じて充電電流量を調整する急速充電もあるが、やはり通常充電に比べて大きな電流を使っていることに変わりはない。BEVのバッテリーを長持ちさせたいなら、時間に余裕を持って通常充電をメインにするのが得策だろう。
そしてもうひとつ重要なのが、ちょこちょこ充電を行わないこと。携帯電話のバッテリーも、ある程度残量がなくなってから充電するのと、マメなちょこちょこ充電によって常に満充電に近い状態にしておくのとでは劣化の進行が変わってくるという話を聞いたことのある人も多いはず。この場合、劣化が進みやすいのはちょこちょこ充電のほう。詳しい説明は省略するが、BEVのバッテリーも基本的には携帯電話と同じだ。
つまりバッテリーの寿命を延ばしたいのであれば、残量20%くらいまで使った後に100%まで充電し、次に充電するのは再び残量が20%くらいになってから、といったサイクルを繰り返すのが正解。道路上での電欠が怖いのは当然だが、それを恐れるあまりバッテリーの負担を増やすのも考えものだ。
エンジンオイルのギリ使いには要注意!
ベストカーウェブ読者なら、エンジンオイルの定期的な交換が必須というのはご存じのはず。ただし、なぜオイル交換をしなくてはいけないのかを詳しく知っている人はどのくらいいるだろうか?
エンジンオイルとは、その名の通りクルマのエンジンに使われるオイルで、主な役割は可動部品の潤滑だ。もしエンジンオイルが空になってしまうと、そのエンジンはすぐに焼き付きを起こして使いものにならなくなる。空になるのは極端としても、使用するに従ってエンジンオイルは汚れてしまい、これがエンジンに悪影響を及ぼす。
エンジンの内部には燃焼で生じたカーボンなどの汚れが付着するが、エンジンオイルには潤滑と同時にこうした汚れを吸収する役割もある。これでエンジンの状態が保たれるのだが、当然ながらオイルは汚れてしまい、やがてそれが限界に達する。さらにエンジンオイルが大気中の水分を取り込んで乳化し、これもまたオイルを劣化させてしまう。
この他にもエンジンオイルを劣化させる要因はいくつかある。このため、エンジンオイルを定期的に交換して良好なコンディションを維持しておきたい。エンジンオイル交換の際には当然ながらオイルの量もチェックされるので、なんらかの原因でオイルが減ってしまっていても焼き付きを起こす前に対処できる。
さすがにエンジンが焼き付いてしまう状態までオイルが減るケースは少ないが、オイルにとってのギリ走行にならないよう用心しておくに越したことはない。
タイヤの空気圧は「過ぎたるは及ばざるがごとし」
一般的な自動車は空気入りのゴムタイヤを装着している。このタイヤに入れる空気の圧力によってタイヤの形状は維持され、空気圧が足りないと、タイヤは車重や走行時の荷重によって大きく変形し、本来のグリップ力を発揮できないばかりか、偏摩耗を起こす要因にもなる。何よりそんな状態のタイヤで走るのはとても危険だ。
タイヤの空気圧は、走行するに従って徐々に低下してしまう。これはバルブやホイールなどのほんのわずか隙間から空気が漏れてしまうため。ただし、この空気圧低下は通常ゆっくりと進行するので、日常使用であれば、自車のタイヤ空気圧は月に一回程度の頻度でチェックし、必要に応じて空気を補充してやればいい。
もちろん、このようにタイヤ空気圧のケアを実施している人は多いはず。だが、漏れた時に備えて日常的に空気圧を高めにセットしている場合は注意してほしい。実は、空気圧の低下は危険だが、高すぎる圧力もまたタイヤにとっては良くないのだ。
タイヤの空気圧が高すぎると、そのタイヤは本来想定した形状よりも“丸く”なり、路面に対してタイヤが平らに接地しなくなってしまう。これはグリップ力の低下につながり、タイヤ中央部の摩耗を速めることになる。
そして高すぎる空気圧は乗り心地も悪化させる。これは高圧によってタイヤが硬くなり、本来が持っているはずの衝撃吸収能力が低下するから。そして硬すぎるタイヤは、適正空気圧のタイヤに比べて、道路の段差を乗り越えた際などにダメージを受けやすい。
以前はタイヤの空気圧をメーカー推奨時より高めにすれば、転がり抵抗の低下によって燃費が向上するというウワサもあったが、これはあくまでウワサにすぎず、タイヤはメーカー推奨の空気圧で使用するのが最も効率的なのは言うまでもない。
空気圧低下によるギリギリ走行を避けたいがために、パンパンな状態で走行するのもNG。「過ぎたるは及ばざるがごとし」はタイヤにとっても言えることだ。
愛車を長期間良好な状態に保ちたいのはオーナーなら当然のこと。クルマのコンディションは安全性にも直結するので、無理なギリ走行は控えて、安全かつ快適なカーライフを送りたい。
ちなみに燃料切れやパンクやバッテリー上がりでJAFの救援を呼んだ場合の料金は以下のとおり。救援を呼ぶのは想像以上に高い! やはり、万一のためにもJAFは入っておいたほうが安心だ
・燃料切れ=JAF会員は無料(燃料代のみ実費負担)、非会員は16,770円(燃料代は別途負担)
・パンクによるスペアタイヤ交換=会員は無料、非会員は13,330円
・バッテリー上がり=会員は無料、非会員は13,130円
・故障車けん引=会員は15kmまで無料、非会員は13,130円(※けん引料730円(1km毎)別途)
※JAFへの救援はナビダイヤル0570-00-8139(もしくは#8139)
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投稿 クルマの健康寿命を縮める!! “ギリ走行”が愛車泣かせのワケ は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。