今回はこの冬話題のハリウッド映画『ドント・ウォーリー・ダーリン』について取り上げたい。アカデミー助演女優賞にもノミネートされたフローレンス・ピューや人気グループ「ワン・ダイレクション」のハリー・スタイルズといった人気俳優が多く登場する話題作だ。
注目したいのはリアルに再現された1950年代の街並みと当時のクルマが多く登場することだ。映画館で見ておきたいビジュアルとストーリーについてご紹介しよう。
文/渡辺麻紀、写真/ワーナー・ブラザース映画
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■ワンDのハリー・スタイルズが出演!
一世を風靡した英国のグループ、ワン・ダイレクションのメンバーとして大ブレイク。活動休止してからはミュージシャンのみならず、演技の面でも才能を発揮しているハリー・スタイルズ。クリストファー・ノーランの第二次大戦映画『ダンケルク』(2017)にもイギリス人兵士のひとりとして出演している。
オルコットのあまりにも有名な小説『若草物語』の映画化『ストーリー・オブ・マイ・ライフ/わたしの若草物語』(2019)でアカデミー助演女優賞にノミネートされ、その確かな演技力で知られる英国の女優フローレンス・ピュー。
それぞれ28歳と26歳。若く才能豊かなスタイルズとピューが夫婦役で共演し注目を集めている映画が『ドント・ウォーリー・ダーリン』だ。
この夫婦、ジャックとアリスが暮らすのはカリフォルニアの砂漠に囲まれた小さな街ビクトリー。清潔で美しく、優雅で裕福な家族のみが暮らしていて、夫は全員、同じ会社に勤め、極秘任務に就いている。
妻たちは、夫が出勤したあとは、近所の奥さんたちとおしゃべりしたりプールで遊んだり。夜は各家庭で開かれるパーティに顔を出しハメを外すほど楽しむこともある。まさにすべてがパーフェクトな生活、のはずだった……というサスペンスタッチの作品だ。
時代設定は明らかにされていないのだが、彼らが暮らすこの街の世界観は1950年代、いわゆるミッドセンチュリー。それぞれの家もファッションも車も、その街の価値観すらもすべてが50年代を模している。
ということはつまり、男性は外で働き、女性は家で家事と子育て。妻たちの話題と言えばファッションやウワサ話。ハズバンドのいうことをよーく聞く従順なワイフである。ところが、アリスがその世界の小さなほころびに気づいてしまったことで、驚くべき事実が明らかにされる。
■深まっていく謎……しかしベストカーWeb的には見どころはクルマ!?
後半には大きな謎が用意されているのだが、それはさておき、ついつい目を奪われてしまうのがパーフェクトなミッドセンチュリーっぷり。とりわけ車好きの目が釘付けになりそうなのが、次々と登場するヴィンテージカーの数々だ。
極秘プロジェクトに就いている夫たちの愛車で、これに乗って出勤し、みんなが一か所に向かって疾走する。その向こうにあるのは、これまたミッドセンチュリー風のミステリアスな建物だ。
主人公のジャックことハリー・スタイルズの車は1955年頃のフォード・サンダーバード。冒頭ではこちらを乗り回しているのだが、中盤あたりで出世すると車もアップグレート。今度はブラックのコルベットスティングレーに乗り換える。
この車を見て隣家の奥さんがいうセリフは「私の夫が発情しそうな車」。それくらいセクシーなのだ。
そんな車を、サングラスをかけ、1950年代の細身のスーツに身を包んで運転するスタイルズはとてもクール。彼のファンは大喜びしそうなサービスショットと言ってもいいくらいだ。
余談だが、スタイルズは車好きで、とりわけクラシックカーを愛し、1966年製のメルセデスベンツ230SLコンパーチブルに乗っている姿を目撃されたこともある。また、1970年製のフォードカプリやフェラーリディーノ等を所有していると言われているから、本作の車にときめいた可能性はとても高い。
本作の車はすべてヴィンテージカーで、このほかにも1953年製のナッシュ・メトロポリタンや、1950年代のステュードベイカー・チャンピオン等が登場する。ナッシュ・メトロポリタンは車好きのポール・ニューマンやエルヴィス・プレスリーの愛車としても有名で映画ファンにも知られている。
このヴィンテージカーの役割は単なる彩やファッションではない。映画の特異な価値観と世界観を決定づけるためにあり、その特異性のなかには、男たちの象徴性もある。つまり、大きくてゴージャスな車が男たちが望む価値を代弁しているということ。本作ではこのヴィンテージカーの存在が極めて重要なのだ。
●解説●
いつも太陽があふれる砂漠の街、ビクトリー。若夫婦ジャックとアリスはその地に暮らすことに何の疑問も抱いていなかった。
ジャックは毎日、車で出勤し、アリスは家で家事。すべてがパーフェクトだったのだが、隣人のひとりがおかしな行動をとるようになる。さらに、アリスは飛行機が砂漠に墜落するのを目撃し、その現場に向かうのだが……。
メガホンを取ったのは、『ブックスマート 卒業前夜のパーティデビュー』(2019)で監督デビューを果たし、高い評価を得た女優のオリヴィア・ワイルド。
ケアリー&シェーンのバンダイク兄弟によるオリジナルの脚本は、ハリウッドの「ブラックリスト」(まだ映画化されていない優れた脚本)の1本に数えられていたもので、それにワイルドが注目し、映画化が実現したかたちだ。
見どころはやはりパーフェクトに作られたビクトリーの街。その街は、カリフォルニアの砂漠のリゾート地、パームスプリングスをモデルにしている。
女性たちのファッションやメイクはブリジット・バルドーやアン=マーグレット、スタイルズのモデルとなったのは1960年~1970年代のグラマラススター、ウォーレン・ベイティだという。この世界観だけでも十分に楽しめる。
また、本作はいくつかのスキャンダルでも注目されている。ジャックの役は当初からスタイルズで進んでいたのだが、撮影が彼のツアーと重なり、代わりに『トランスフォーマー』シリーズのシャイア・ラブーフが登板。
ところが、コロナ禍の影響でツアーが延期となり、再びスタイルズが演じることになったという紆余曲折がある。ラブーフ自身は自ら降板したと言っているが、マスコミは解雇されたと報じた。それによって、ラブーフがいろんな言いがかりをつけるようになったというトラブルもある。
もうひとつは恋のトラブル。本作をきっかけにハリー・スタイルズとオリヴィア・ワイルドが付き合いはじめ(その前から付き合っていたというウワサもある)、ゴシップ欄をにぎわせていた。
女性が10歳上の年の差カップルだが、ふたりの仲は真剣だという説もあれば、そろそろヤバいという声も。映画と同じようにこちらのゴシップも話題になっている。
『ドント・ウォーリー・ダーリン』
2022年11月11日(金)日本公開
配給:ワーナー・ブラザース映画
(C) 2022 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved
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