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 パトカーといえば代表的な車種であるクラウンが全国に配備され日夜各地で活躍しているが、一方で珍しい車種のパトカーも少なくない。スポーツカータイプでは、栃木県警で活躍するレクサスLC500やGT-R、ホンダNSXなど目を引く車種も多いが、今回ご紹介する佐賀県警察では、すっかり古参となってしまった日産セドリックや、トヨタコンフォートなど、アッと驚く珍車が多数現役で活動をしている。今となってはレアパトカーとなってしまった佐賀のパトカーたちを現地レポートでお伝えしよう。

文・写真/有村拓真

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県警本部玄関に集結した現存する3台のセドリックパトカー。当初取材は2台の予定だったが、幸運にももう1台が県警本部に来ることになり、この並びが実現した。令和の時代とは思えない光景だ

九州最後のセドリックパトカー3台が現役最後の花道へ

 パトカーといえば日産セドリックとトヨタクラウンの2台が昔から定番の代表的車種だった。セドリックはハードトップ系がY32型にフルモデルチェンジした1991年以降もセダンがY31型のまま継続生産され、パトカー仕様はこのY31型セダンが引き続き製造され、納入されてきたが、2002年をもってY31セダンは生産を終了。タクシー用に残った一部モデルも2014年に生産を終了し、セドリックパトカーは2000年代以降、新規導入の歴史に終止符を打った。

 国費での最終納入は1997年のこと。すでに25年が経過していることから全国的にセドリックパトカーの退役は進んだ。そんななか、全国でも数少ない生き残りのY31型セドリックパトカーが佐賀県警察に存在し、しかも九州では最後の白黒パトカーであるこれらの車両が年内いっぱいで一線から退くということで取材を敢行した。

 セドリックパトカーの所属は本部交通指導課(2台)と交通機動隊だ。同県警察本部ではツイッターのアカウントを開設しており、6月16日のツイートで、『セドリックパトカーが年内いっぱいで引退する』というつぶやきがあった。これに反応した全国のパトカーマニアの間で話題となり、引退日などを問い合わせるマニアも多く、実際に撮影のために連日のように訪れたマニアが数多くおり、まだまだ問い合わせがあると担当者の方が話されていた。

 取材時は本部交通指導課に所属する150系クラウンレーダーパトカーも並べていただき、セドリックとクラウンの共演も実現した。2022年なのにフェンダーミラーの警察車両ばかりが並ぶ光景は他では見られない。

セドックと同年代の150系クラウンパトカ―の並びも実現した。こちらもまだまだ現役続行だという

 佐賀県警察のセドリックパトカーは3台ともに搭載されたレーダーで速度計測を行う仕様で、現役当時は県内各所の幹線道路などで速度違反取り締まりに従事したという。引退表明後も、県内の各警察署に貸し出して運用を行い、あちこちで活躍したということだ。型式はE-YPY31、VG30エンジンを搭載し、総重量約1.8トンのボディを軽々と走行させる。3台の中で最古参の車両は平成10年(1998年)登録車だ。続いて平成11年、平成14年の登録となっている。いずれも県費で導入されており、大切に使われてきたことがわかるコンディションだ。

 担当者は、「部品の供給がないため、部品探しにも苦労している。最悪の場合は、いずれかの車両を部品取りとして扱い、残りの車両で引き続き何とか運用を行いたい。」と話す。引退表明したものの、第一線からは退くものの、当面は予備車として扱われるということで、しばらくは余生を過ごすことになるという。

超レア! トヨタコンフォートのパトカーも引退へ

 古風で年季の入ったエクステリア、シフトはMTと歴代クラウンパトカーとは一線を画す雰囲気のトヨタコンフォートのパトカー。県内に2台が現存するが、パトカーとしては微妙な車種選定である。コンフォートはトヨタがタクシー用に開発をしたセダンだ。

伊万里警察署のコンフォート。後継車が到着するまでは使用を継続するとのことだ。佐賀県県警にはこのほか唐津警察署にもコンフォートパトカーが現役で使用されている

 なんとこの2台、元は運転免許試験場の教習車だったのである。それを物語るように、運転席と助手席側には大きなドアバイザーが。その影響で助手席に備わるナビミラーもかなり下の位置に装着されている。登録年は平成14年(2002年)となっている。伊万里警察署の個体は走行距離約7万9000kmとなっているが、元が教習車だっただけに、メーターが最低でも一周はしているのではないかと担当者。リアバンパーには仮免許などのプレートを差し込む基台が備わっていたことを連想されるネジ跡や、フェンダーミラーにも補助ミラーが備わっていた跡が残っている。

 肝心の走りはどうなのか尋ねたところ、「MT車なので加速もよく、特に不都合なく運用できている」とのことだった。後継の車両が到着次第、完全引退するということだ。ちなみに愛知県警察と静岡県警察にもコンフォートパトカーが存在するが、両県ともすでに引退した模様。

まさかの魔改造! 一風変わったプレミオとプリウス白黒パトカー

 初代を含め、歴代モデルが一部の県警に県費で導入されているプリウスパトカー。トヨタが誇る元祖ハイブリッドカーだけに、もっとパトカーで増えてもいいのではと思いたいが、メンテやパトカーという任務の特性上、思ったように配備は進んでいない。一方で、東日本大震災を教訓に停電時の信号を動作させる電源車という意味合いも含めて宮城県警察や熊本県警察などではプリウスPHVが導入された例もある。

 佐賀県警察のプリウスは、20系後期型が使用されている。年式のわりに赤色灯が200系クラウンパトカーから装着され始めたタイプが装備させている。

 なにやらか違和感が……、と話を伺うと、元々は佐賀県の公用車だったプリウスを改造してパトカーになったということだ。なんともすごい話である。ちなみに兵庫県で道路パトカーなどの公用車がパトカーとして再利用されるケースなども少なくはないが、元々緊急車両ではない、県の公用車だった車両がパトカーに再利用されるケースは稀である。余談だが、滋賀県警察が2000年初頭に、県所有の黒塗り150系クラウンなどの公用車をパトカーに再利用した事例は存在する。

 そしてもう一台のパトカーであるプレミオ。こちらは兄弟車であるアリオンは歴代モデルが捜査用覆面パトカーとして採用されており、そちらではなじみの存在。静岡や広島ではアリオンの白黒パトカーも存在するが、兄弟車のプレミオが警察車両として活躍していること自体が珍しいのだ。しかも白黒パトカーではなおのことである。

鳥栖警察署に配備される20系プリウス(左)のとプレミオ(右)。プレミオは前面警光灯の位置が左右で微妙に異なっている。導入から10年以上が経過しているが、まだまだ第一線で活躍するということだ

 このプレミオパトカーは、地元団体からの寄贈で警察署に導入されたもの。前面警光灯も無理やり装着した感もあるが、なんとも味があっていい雰囲気が出ている。導入から年数がかなり経っているが、現在のところ引退の予定はないという。

無骨な100系ランクルパトカーに感じた違和感の正体は!?

 最後にご紹介するのは100系ランドクルーザーパトカーだ。ランクルのパトカー自体、全国的にもあまり導入されておらず、100系ランクルは高速隊の事故処理車として一部の県警に国費で配備されている程度である。ちなみに福井県警察には120系ランクルプラドのパトカーが存在している。

 佐賀県の山間部など積雪する地域を管轄する警察署に配備されたランクルパトカーは、その性能にふさわしい場所で活躍している。しかしなにかがおかしい。目を凝らすとドアや屋根に「何か」が取り付けられていた跡や金具が存在する。

 担当者に話を伺うと、元は機動隊の現場指揮官車だったものを改造し白黒パトカーに仕上げたという。現場指揮官車とは『DJポリス』でおなじみの屋根の櫓から警察官が指示を出すあの警察車両だ。リア扉も国内仕様には存在しない観音開きとなっており、市販車両ではないことがわかる。

佐賀北警察署古湯警察官駐在所にて活躍するランドクルーザー。元は機動隊の指揮官車だったというから驚きだ

 新たにランクルクラス等の4WD車を新規導入するとなると高額になってしまうため、このような導入の経緯になったようだ。

 このように佐賀県警察では古参車両をはじめ、公用車など様々な車両を独自の架装技術でパトカーとして新たな魂を込めている。県警架装担当者らの技術は、相当レベルが高いものだとうかがい知ることができる。そしてこれらのパトカーを取り扱う警察官らもまた、愛情を持って車両を運用しているのだ。ドライバーの皆さんはこれらの車両のお世話にならないように引き続き安全運転で!!

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