今回は私の連載での原則を破って“元T教会”を実名で呼ぶことにします。元々、しらじらしい配慮でしたが、以下の名称変更の話は宗教団体名が匿名だと訳が分からなくなるからです。
今回は実名にする理由
現在の世界平和統一連合を多くのメディアは旧統一教会と呼んでいますが、名称変更のことを考えるときには少し略しすぎです。設立以来、世界組織全体の日本語での正式名称は「世界基督教統一神霊協会」で、設立時の宗教法人としての国内での名称は「日本統一教会」です。「きょうかい」の漢字表記が異なっていて誤植っぽい感じですが、彼らのホームページ(「1950年代」のタブを開く)に従っておきます。宗教法人名がえらく短いのは、書類仕事(たとえば裁判とか)のときの効率優先なのでしょうか。
現在、悪評ロンダリングとして問題にされているのは、後者が2015年に現在の「世界平和統一家庭連合」と改名された件です。今度はまた、安物の海鮮丼屋の「全部載せ」みたいな名前ですね。「平和」と「家庭」……夫婦喧嘩の仲裁でもするのでしょうか。そもそも何を「統一」するために、誰が「連合」するのでしょうか。
彼らの言い分では「そもそも『世界平和統一家庭連合』への名称変更は90年代から世界各国で進めていたことです」ということなのですが、ホームページにはそれらしい内容はありません。重大なことなのに、経緯どころか改称の理由が全く公開されていません。
もう少し調べてみると、1994年5月1日(統一教会創立40周年)、文鮮明は統一教会の時代が終わったことを宣言し、新しい組織を発足させた、という報道(参照:ワシントンポスト)があるようで目的は不明です。
統一教会はキリスト教を超えた?
少し推理をしてみましょう。「統一教会の時代が終わった」と言いながら「統一」の文字を残すのなら、脱教会宣言なのではないでしょうか。実際、80年代には彼らが「基督教」を名乗っていることに、本家のカトリックやプロテスタント教会から批判が出ていました。教義や犯罪活動以前に、「イエスキリストより上位の存在を置くのなら、その宗教はキリスト教ではない」という定義の問題です。
同じ理由で、モルモン教なども宗教学上はキリスト教系の新宗教ということになっています。考えてみれば、新約聖書を使っている一神教はすべてキリスト教だとすると、イスラム教まで含まれてしまいます。さらに、同じ理屈で言えば、キリスト教自体がユダヤ教の一宗派になってしまいます。
逆に言えば、統一教会がキリスト教を名乗っている限り、文鮮明教祖もイエスキリストの弟子ということになります。よって、自分はイエスキリストを超えたという教祖の自覚が、本当の改名の理由なのではないでしょうか。ついでに、日本での霊感商法を続けるためには宗教色の弱い名前にしたという可能性も否定できません。
でも、ならばなぜ一番目立つと思われる「統一」という言葉を残したのでしょう。いくら考えても、改名の理由が分かりません。当時の文部省も、理由がわからないと改名を受理することに抵抗があったのは当然でしょう。
ちなみに、むしろ改名すべきは「勝共連合」の方でしょう。今時、「共産主義に勝つぞ」と拳を振り上げてみても、「弱い者いじめはやめろ」とか「むしろ、負けるほうが難しいぞ」とか突っ込まれるだけです。
いずれにしても、その場その場でいい加減なことばかりしながら、お金だけはしっかり巻き上げていく集団としか、言いようがありません。
旧統一教会批判攻撃に見る姫の迷言
いい加減といえば、国際政治学者の「差し障り姫」。あいかわらずやらかしてます。前回指摘したように、この人には、当たり障りの無い発言と当たり障りそのものの発言しかないのですが、今回、爆弾をぶち込んでくるパターンのひとつが見えてきました。議論がコンセンサスを得られそうになると、見当違いの反論が飛び出すというやつです。
最近の話ですが、姫はツイッターで以下のようなコメントをしたようです。
世間の統一協会への反発は、過度な献金強要や囲い込みだけでなく主張にもむけられています。「反日」という言葉はリベラルが従来使わなかった言葉ですが、統一協会(原文ママ)に関してはメディアでもSNSでも多用されていますね。反応の年代差を説明する要素として、韓国への反発の強さは連関があると思いますよ
そして、相手を批判したいがばかりに『反日』という言葉を使ってしまった影響は今後尾を引くことになるでしょう。この言葉がさまざまなところへバックファイヤーすることを予想できない人びとの存在は、わたしの合理的思考の範囲を超えています
『統一協会との関係』問題が多数の政党に燃え広がって燃え尽きると(これも予想できたはずだがなぜか予想しなかったらしい)、安倍さんの存在も霞み、Y(原文実名;安倍元首相暗殺事件の容疑者)も存在感を失い、韓国へのバージョンアップした反感と、いつもの左右対立だけが残った。その焼け跡から何が生まれるかも予想していないらしい。
教義の中で、「日本はサタン(=悪魔)の側の国」と言い切る宗教を、反日と呼んで何が悪いのでしょうか。リベラルでも極右でも、そうとしか言いようがないでしょう。確信犯ですから悪口にすらなっていません。
「反応の年代差を説明する要素として、韓国への反発の強さは」……ちょっと何言ってんだか分かりません。統一教会への嫌悪感や「韓国への反発」などほとんど関係ありません。また、このことで「韓国へのバージョンアップした反感」「いつもの左右対立」が残るわけもないじゃないですか。彼らの教義が極めて特殊で普通の感覚ではとてもついて行けないほどバカバカしいからです。変な宗教は世界中にあるもので、韓国人や朝鮮人のせいにする意見には説得力がありません。あくまで彼らのそして彼らだけの問題です。
ひょっとして自民党から出馬?
姫の議論でもうひとつ笑えるのは、「安倍さんの存在も霞み、Yも存在感を失い」のくだりです。あれあれ、姫は前回見たように、仮に統一教会批判が正しいとしても元総理暗殺事件がきっかけで大きな流れができてしまうと、今後の政治的テロを誘発する可能性があるとの立場だったはずですが、ならば「Yが存在感を失う」のは大歓迎のはずです。世直しの英雄としていつまでも語り継がれ、後に続く者が絶えない方がいいのでしょうか。
姫は自民党から選挙にでも出るつもりなのではないでしょうか。今後学者を続けるには、あまりにも「合理的思考の範囲」が狭くて、簡単に「バックファイアー」する人だと知られ過ぎてしまいました。なんでもいいから旧統一教会批判の足を引っ張ることしか、今は考えていないように見えます。政権に媚びを売るのでなければ、姫は何のためにこんな見え透いたことをしているのでしょうか。
それにしても、いつの間に旧統一教会は日本の中枢にまで食い込んでしまったのでしょうか。この問題意識を持つと、今から35年前のある殺人事件が気になります。関西の朝日新聞支局内で2人の記者が銃撃されて死傷した「赤報隊事件」です。
犯人不明のまま時効を迎えたこの事件について、実は統一教会が関わっていたのではないか、という観点で綿密な取材をまとめた「記者襲撃」という元朝日新聞の敏腕記者の本があります。出版直後にはNHKのドラマにまでなりました。