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Image:Masarik/Shutterstock.com

いまや「パッケージング」も過剰なものは認められなくなってきた。環境負荷を減らし、サステナビリティを高めていくことに反対する人は少ないはずだ。

気がついてみると、すでに多くの製品でパッケージングが変わりつつある。今回は、その辺の事情について、少し考えてみよう。

トレンドを作ったiPhoneも「脱プラ」

商品において、パッケージは必要なものだ。パッケージされていないと配送も在庫もできず、商品が傷んでしまう。それだけでなく、消費者にとっては「パッケージ」そのものの美しさや面白さも、商品のうちである。

実際、iPhoneが出てきた時には、白く美しい化粧箱のパッケージも驚きであったように思う。なぜなら、携帯電話のパッケージは比較的簡素なものが多かったからだ。いまや、小さなデジタルガジェットのパッケージは「化粧箱スタイル」が主流であり、いかにアップルの影響力が大きかったかがわかる。

ちなみに現在は、EMS(生産請負企業)側でパッケージングまで行う場合もある。その場合、箱は指定のものが用意されているので、すごく簡単に「アップルっぽい化粧箱に入ったガジェット」が生産できるようになっている。

一方で、アップルがさらに推し進めているのが「化粧箱のまま簡素化する」やり方だ。同社では2021年発売の「iPhone 13」から、プラスチックのシュリンクラップを廃した。シール的なもので箱を留め、はがすことで新品かどうかを見分けられる。

iPhone 14 Pro Maxのパッケージ。シールをはがして箱を開けるようになった

同様に、Googleもプラスチックのシュリンクラップを廃止している。今後、この種のやり方がトレンドになっていくのは間違いないだろう。

ソニーが導入した「オリジナルブレンドマテリアル」

家電のパッケージを紙で、というやり方は、日本では家電メーカーで昔から取り入れられてきた。ケーブルなどの個別包装にはポリ袋を使っていたし、箱はおしゃれではない茶色の段ボールではあるが。とはいえ、小さな製品はアップル的な化粧箱を使うか、もっと簡素な「紙箱」が多かった。それはソニーも同様だ。

だが今年に入って、ソニーは少しやり方を変え始めている。ソニーは完全ワイヤレスイヤホン「WF-1000XM4」を皮切りに、同社が開発した「オリジナルブレンドマテリアル」を採用している。その後発売されたヘッドホン「WH-1000XM5」のパッケージも同様の素材だ。

ソニーは「1000X」シリーズのパッケージに「オリジナルブレンドマテリアル」を導入

このオリジナルブレンドマテリアル、要は紙なのだが、竹やさとうきびなどの成長が速い植物の端材にリサイクルペーパーなどを組み合わせて成形したもの。これをできる限り印刷したり加色したりすることなく利用し、環境負荷を減らす。メーカーや製品のロゴは印刷せず、成形時に「立体として表現」しているが、これはパッケージをリサイクルする際、印刷していない方が良質な紙として再生できるからだ。

オリジナルブレンドマテリアルの材料。これらを減らして「成形」し、パッケージにする

以下の写真は品川・ソニー本社のロビーに以前置かれていたもの。この説明用の板自体が、ブレンドマテリアルによる段ボールでできている。ソニーはこうした技術を使い、2023年までに、小型製品についてはプラスチックを全廃するとしている。

ソニー本社に展示されていた説明ボード。これ自体が、ブレンドマテリアル製の段ボールだ

減らす必要があるからこそ「よりよいパッケージ」に

実のところ、1つの商品でシュリンクラップを減らしても、内部の包装を紙にしても、それだけで廃棄プラスチックが大幅に減ったり、問題が解決したりするわけではない。

だが、そうすることで「本当にその包装は必要だったのか」という問いかけになるし、長期的に続けていくことで環境への影響を減らすことにはなる。この種のことは「全社的に続けること」で、包装に関するプロセス全体を見直すことが重要になるのだ。

アップルの場合は、2025年までに全商品でプラスチック包装を止めることになっている。すでにプラスチックの使用量は、包装全体の4%に過ぎないという。ただその際、「プラスチックがなくなって不便になる」のでは続かない。必要なのはわかるが、紙のストローを使い続けたいと思う人は少ないだろう。

したがって包装においても、「プラスチックを使わなくても不便ではない」方向性を目指すことが重要だ。その点は、現在のiMacのやり方が参考になる。

iMacでは、2021年の「iMac(Appleシリコン搭載第1世代)」あたりから、内部の包装もプラスチックをほとんど使わないものに変わってきている。しかも、美観や箱としての機能を損なわない形となっている。また、ソニーの「1000X」シリーズのパッケージも、そもそもデザインとして美しい。

2021年発売の「iMac」のパッケージ。ほぼすべて紙だが、梱包の美しさも機能性も非常に高い

もちろん、どちらも使い続ける上では不要なもので、取っておく人もいれば捨てる人もいるだろう。だがその時、「捨てるものだから簡素な箱でいいのか」というと、そうでもない。冒頭で述べたように、iPhoneに影響されてスマホのパッケージが化粧箱になったのは、「捨てるものでも、手に入れた時には箱も楽しみたい」と思う人がいるからに他ならない。

大量に製品を作るメーカーは、箱のデザインでも他社と競争することになる。その中で、コストでも美観でも環境でもプラスの方向を満たせるなら、それに越したことはない。別にソニーやアップルだけではなく、多くのメーカーが努力を始めている部分なので、製品を手にした時にはぜひ、「このやり方でプラスチックを減らしたのか」「こうやって箱の美観と簡素化を両立しているのか」と発見しながら楽しんでほしいと思う。