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クイーン エリザベス2世と自動車: 女王は車を修理できるって知ってましたか?一つの時代が終わりを告げ、エリザベス2世が96歳で逝去された。クイーンエリザベス2世に関する5つの信じがたいクルマの事実を明らかにする。例えば、女王が車の修理ができるなんて、誰が想像しただろうか?

彼女は70年間王座に座り続け、ほとんどの今のイギリス人は彼女のいない世界を知らない。エリザベス2世女王陛下は、2022年9月8日、スコットランドのバルモラルというカントリーエステートで亡くなられた。

多くの人が知らなかったこと: イギリスの君主は、クルマとの縁が深かった。故女王の長いカーライフの中から、5つの事実をご紹介。

1: 女王は車の修理ができた

エリザベス2世は、車の整備士と運転手の訓練を受けていた。イギリスの女王は、第二次世界大戦中に訓練を受けた。1945年2月、18歳で英国陸軍婦人部隊に入隊し、勤務番号230873で「Second Subaltern Hon Elizabeth Windsor(セカンド サブバルタン ホン エリザベス ウィンザー)」として従軍した。自動車の見習いのほかに、そこでトラックの運転も覚えた。5ヵ月後には名誉下級指揮官に昇進した。

2: エリザベス2世にナンバープレートは必要なかった

女王は英国で唯一、ナンバープレートなしで運転することを許されていた。ただし、公用車、いわゆるステートリムジンに限る。これらの車では、フロントガラスの上に、ナンバープレートの代わりにウィンザーの紋章が表示されていた。しかし、エリザベス女王は個人(ジャガーやレンジローバー等を使用していた)で旅行するときは、ナンバープレート付きの車に乗っていた。残念ながら、ナンバープレートの番号などは秘密だった。

女王の公用車にはナンバープレートがない。その代わり、屋根にはウィンザーの紋章が描かれている。ドアポケットに何か入っているのが気になる・・・。

3: ステートコーチは革張りではない

ウィンザー家は、実直で控えめな性格を好んだ。それでも、上質なナッパレザーの上に女王が座らないというのは驚きだった。彼女らのクルマには、基本装備からファブリックシートしか装着されていない。シートは最高級のグレークロスで張られている。それが昔からの伝統だったのだ。

ベルリンでのエリザベス女王2世(2015年)

2015年、5度目のドイツ国賓訪問を果たしたエリザベス2世は、ベルリンの観衆を魅了した。ホテル アドロン、ベルビュー宮殿、首相官邸、ウンター デン リンデン、工科大学でのさまざまな約束の合間に、当時89歳の君主は、ベントレーのステートリムジンで首都を走り抜けたのだ。午前中、女王は夫のフィリップ殿下、ヨアヒム ガウク連邦大統領とその生涯のパートナーであるダニエラ シャットとともに、シュプレー川の「エイジャックス」号で官庁街を航行した。この旅行は、ベルリン市民が王室のゲストを見る機会として意図的に計画されたものである。エリザベス夫妻がベルリンを探検した時の王室専用馬車だ。
英国大使館がFacebookで公開した動画では、ベントレー ステートリムジンがトレーラーから搬出される様子が映し出されている。このホイールベースでは、そう簡単ではなかっただろう。しかし、やはり王道のクルマには王道の足元空間が必要だ。ベントレーの「アルナージ」をベースにしたこの車は、約1,100万ユーロ(約15億4千万円)といわれる。
波よ、波よ!時折、王族は巡業に出かけ、国民や軍隊にホールドスマイルで挨拶する。エリザベス女王は、スタンドアップ コンバーチブルに改造したレンジローバーから、しばしばこのような行動をとっていた。そして、ハイブリッドドライブを搭載した新型を手に入れた。
ロングホイールベースのレンジローバーをベースにしたこの車は、ディーゼルエンジンと電気駆動の両方を搭載しており、女王は歓呼や敬礼する群衆の前を小声で静かに、環境に配慮しながら滑るように通り過ぎることができた。彼女が最高司令官を務めていた「ロイヤル ウェールズ」歩兵連隊とのパレードの時の写真だ。ディーゼルエンジンというところがいかにもヨーロッパらしい。
ランドローバーのスペシャル ビークル オペレーションズ部門が英国女王のために改造した4台目のモデルである。メーカーによれば、最初の1台は1953年のランドローバー シリーズ1。そのときも、エリザベス2世は、手すりの後ろに立って手を振っていたそうだ。
1994年: チャールズ皇太子が改造したレンジローバーでロイヤルパレードツアーしているショット。
2002年にランドローバーから3台目の国有車を譲り受けた女王は、13年の歳月を経て、環境に配慮した模範的な移動手段である前述のハイブリッドのレンジローバーに乗り換えた。この深いパープル色こそが英国王室の色。

4: ロールス・ロイスをプレゼントされたくなかった

言うまでもなく、ロールス・ロイスは、英国の伝統とラグジュアリーを象徴する自動車だ。しかし、エリザベス2世は2001年以来、この高級車を公用車としてプレゼントされることを拒んでいた。なぜならば、その頃、BMWがブランドを引き継ぎ、工場の大半をドイツに移設したからだ。一方、VWの子会社であるベントレーは、イギリスのクルーで製造を続けていた。それ以来、女王はベントレーを乗り継いでいる。

5: 運転免許を持たないまま75年近くハンドルを握っていた

女王は軍隊で車やトラックの運転を習ったが、運転免許は持っていなかった。イギリスでは、免除措置のおかげで必要なかった。エリザベス2世は約75年間、無免許運転をしていた。2015年7月、ウィンザー大公園で、当時90歳の女王がクルマを運転している姿をパパラッチされた。ダークグリーンのジャガーを運転する彼女は、散歩中の家族を避けるようにハンドルを切り、無造作にイギリスの芝生を横切った。そんなことが許されるのは女王だけだー!

エリザベス2世は、自らハンドルを握ることが多かった。王室色のレンジローバーを運転する女王様には申し上げにくいことですが、シートベルトは装着されたほうがより安全かと思います・・・。

そして2021年11月1日、イギリスの新聞は、今は亡き君主がロンドン近郊のウィンザー城の敷地内で緑色のジャガーのハンドルを握っている3枚の写真を掲載した。これは、長年連れ添った夫フィリップ王子の死と闘っていたのちに、女王の健康状態が改善されたことを示すものと見られている。

【ABJのコメント】
クイーン エリザベス2世は普通に自動車を90代でも運転していた・・・。多くの日本人には信じられないことかもしれないが、イギリスではそれは何の不思議でもないことなのである。前述のとおり、女王陛下は戦時中には自動車整備をこなしていたし、女王になってからも「ランドローバー(レンジローバー、じゃないですよ)」を自ら運転し、一人でドライブされることも多かった。宮内庁では到底認められない話だが、彼女にとっては(イギリス人にとっては、でもあるが)、別に不思議でもなんでもないことなのである。もともとイギリス王室の人々は自動車好き(乗り回すことを含む)で有名だ。

クイーン エリザベス2世を描いた伝記映画では、ヘレン ミレンが演じた女王が、一人で荒野をランドローバーで走るシーンがあり、しかもかなりハードなドライブの末、故障してしまい、「ドライブシャフトが折れてしまったわ」というセリフさえあるのだから、クイーン エリザベス2世にとって、車の運転は午後の紅茶と同じような行為だったのだろう。そんなクイーンの運転した車では、やはり歴代の「レンジローバー」が一番有名で、ロイヤルワラントがついていたからこそ、「レンジローバー」があれほどの名声を持っているともいえよう。ほかには定番の「ジャガーXJ」もあったし、一人で乗るときも(もちろん前後に護衛はつくだろうけれど)あったと伝えられている(そんなジャガーXJは普通にロンドンの街中のディーラーで整備されていたという)。

ロンドンオリンピックの開会式では、ダニエル クレイグと一緒にヘリコプターから飛び降りる(もちろんスタントウーマンが、ではあるけれど)という粋な演出の依頼に、笑顔とともに2つ返事で受けたというクイーン エリザベス2世。これほど英国の自動車を愛し、英国国民に愛されたQE2なのに、どうして9月11日の時に使用された霊柩車は「メルセデス・ベンツEクラス」だったのだろう? ちょっと無念である・・・。

Text: Maike Schade
加筆: 大林晃平
Photo: autobild.de