2022年11月9日、「119番の日」に合わせて、熊本市消防局がYoutubeに異例の広報動画を公開して話題を集めています。
文/ベストカーWeb編集部、動画/熊本市消防局
■「それでも、誰かの命のために」
ひとつの消防隊で、多い日には1日200件の出動要請がかかるという「119番」。その中には、さまざまな理由で(救急車を呼びたいが)「サイレンは鳴らさないで来てほしい」という要望があるそうです。
「近所迷惑になるから」、「たいしたことないので」、「大げさにしたくない」などの理由だそうですが、このたび、そうした声に対して熊本市消防局が「救急車のサイレンは鳴らさなければならない理由があるのです」という主旨の動画を作成、Youtubeに公開しました。
「No Siren, No Ambulance 〜サイレンは命のために鳴らしています〜」と名付けられたこの約3分間の動画では、「確かにサイレンはうるさいかもしれない、大げさかもしれない、迷惑かもしれない」という説明とともに、「それでも、誰かの命のために、鳴らさなくてはならない」と語られています。
救急車が現場へ向かう際にサイレンを鳴らすのは、道路交通法第39条第1項、道路交通法施行令第13条、第14条の規定によります。
同法によると、緊急自動車は「公安委員会の指定を受けた車両で、緊急の用務ため運転中のものをいい、運転中にはサイレンを鳴らし、赤色の警光灯をつけなければならない。」とされており、つまりサイレンを止めると緊急自動車の要件にあてはまらなくなり、一般道路上で緊急自動車の特例等の適用がなくなってしまうのです。
救急車のサイレンは、うるさいから意味があるのであり、うるさくする必要がないのであれば、そもそも救急車を呼ぶ必要がないということです。もちろん「緊急」と感じたら躊躇なく救急車を呼ぶべきであり、配慮すべきは救急車を呼んだほうではなく「近所」のほうなのです。
(そのいっぽうで、救急車を呼ぶかどうか迷った場合の相談窓口である「救急安心センター事業」(#7119をコール)の存在はもっと周知されてほしいなと感じます。現在は東京都内、横浜市内、大阪府内など一部地域での実施のため、全国展開が待たれる事業です)
令和2年(2020年)における全国の救急隊の年間出動件数は593万5,694件(うち救急自動車が593万3,277件、消防ヘリが2,417件)におよびます。救急隊は、全国で1日平均1万6,211件、約53秒に1回の割合で出動している計算になります(全国民数で割ると約24人に1人が年に1回、救急車のお世話になっている)。
誰もが「いつ自分がお世話になってもおかしくない」、という実情にあります。
救急車のサイレンの騒音や近所の評判については、全国各地でたびたび議論になっています(検索すると全国の自治体消防局のQ&Aに「救急車のサイレンを消して呼ぶことはできないのか」という質問が寄せられていることがわかる)。そのいっぽうで、自家用車や住宅の遮音性が向上したことにより「サイレンが聴こえづらい」という声も上がっています。
製造メーカーによると、サイレンスピーカーの指向性を調整したり、音質を変更するなどの工夫が進められていますが、それとは別に、今回のような広報動画が広まることで、救急車のサイレンへの理解が広まって、より多くの命が救われることを願います。
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投稿 「サイレン鳴らさないで」 …って、え…? 本気で言ってる?? 救急車のサイレン使用に要望、熊本市消防局が動画公開 は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。