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 トラックで各店舗や商店を回って荷物を納品したり、在庫を補充したりするのが「ルート配送」や「店舗配送」と呼ばれる仕事です。

 店舗によっては夜間(開店前)の配達を求めるところがあり、そうしたルートを担当するドライバーは、昼に寝て夜に働くという、昼夜が逆転した生活をしています。

 また、無人の店舗に納品するため、商品の陳列など付帯作業も多く発生します。そのために理不尽な思いをしたこともあるという、元店舗配送の夜勤ルートドライバー・STさんが店舗配送の実態を語ってくれました。

文/元・店舗配送ルートドライバー・STさん 写真/フルロード編集部


理不尽なことが多かった店舗配送ドライバー

 私は、20歳から運送業界に入り、小型トラックから始まり中型・大型と乗り継ぎ10年ほどトラックドライバーをしておりましたSTと申します。メインでやっていたのは中型トラックでの店舗配送、いわゆるルートドライバーというやつです。

 ドライバーを辞め、かれこれ7、8年経ちますが、トラックドラバーの仕事を思い返せば、お金(賃金)をもらいながら全国を旅できたことや、愛すべきバカな仲間たちと出会えたことなど楽しかった思い出があります。

 いっぽう、理不尽な思いや、揉め事、危ない目に遭った体験も多々あります。

 私の勤務形態は夕方ぐらいから明け方にかけ配送を行なう夜勤ドライバーでしたので、特に配送先が繁華街だと変な輩や酔っ払いなど、まぁ~いろんなヒトに出くわすわけです。

 もちろん今思えば運転を含め自分が反省すべき部分もかなりありますが、そんなドライバー時代に経験したモヤモヤする出来事をかいつまんで開陳してみたいと思います。

路上でのトラブル

 ドラッグストアの仕事で深夜に町田駅周辺の店舗配送をしていたとき、トラックを路上に停め納品に向かおうとクルマから降りると、往来に立っていた水商売のキャッチ風の男がやって来て、トラック(側面)に「当たったんだけど」と、自身の指先らへんを示し言ってきたことがあります。

 おそらく目の前にトラックを停められたのが気に食わなかったのでしょう。男のことはよく見ており、当たってはいませんでしたが「当たりましたか!? すみません、大丈夫すか?」と少々大仰に返しました。

 正確な返答は忘れましたが、男は「いってー」「どうすんのコレ」的なことを言い、警察を呼ぶだなんだと嘯いていました(ちなみに交番は歩いて20秒くらいの距離にありました)。

 私は真っ当に相手にせず淡々と対応していると、けっきょくその方は勝手にお許しになられたようで、「気をつけてね」とお心遣いをいただき終わりました。

深夜の地場配送では路上トラブルが絶えなかったとSTさん

 それから、配送中に追い越しのできない片側1車線で徐行運転しているスポーツカーに捕まったこと。

 何もないところであまりにも遅いので「プップップップッ」とクラクションを鳴らしました。これが相手の琴線に触れたのでしょう。スイッチが入ったように乱暴な運転となり、今でいう煽り運転がスタート。

 片側2車線になって追い抜こうとしても、抜かせません運転。並走からの幅寄せ、空ぶかしやバーンナウトなどなど。しつこいので、路傍にトラックを停めて降りると向こうの男も降りてきて、あきらかに飲酒運転とわかる酒臭い息を吐きながらつかみかかってきたことがありました。

 言い争いになり、埒があかないので私は警察に電話すると、相手はその最中にすごいスピードで逃走。そのあとやってきた警察官に経緯を説明し、私も「無闇にクラクション鳴らしたらダメでしょ」とのお叱りを受けました。

 このほかにも、東京の大森駅周辺で路肩にあったパイロンを轢きながら暴走してきた高級車がパワーゲートに突っ込んできそうになったり、コンビニの駐車場から出る際に左折待ちをしていたら横にクルマを付け怒鳴り込んできたヒトがいたり、路上でのトラブルは小さなものも含めると枚挙にいとまがありません……。

お客さまは神様!? 納品先のモヤモヤ

 配送先ではトラブルというよりも、腑に落ちないモヤモヤとしたことがけっこうありました。

 店舗配送は基本的に付帯作業が当たり前です。サービス精神旺盛な日本人が育んできた商慣習ですから、私もトラック業界に入りそういうものだと思って行なってきました。それでも、そこまでドライバーがやるべきなの? と疑問に思うことがあります。

 夜間配送でしたので無人の店舗に納品する場合が多かったのですが、なかでも少しでも置き方が違うとすぐクレームを入れてくる店舗というのがあります。

 商品ごとに仕分け、その商品が並ぶ陳列棚の前に置いてくることを指定する店舗は多いですが、それプラス商品を積み上げる高さまで指定してくる店もまぁまぁあります。すぐクレームを入れてくる店に多いのがこの高さまで指定してくるところです。

 ドライバーはなにもべらぼうな高さまで積み上げるわけではないです。申し送りが不十分だったケースもありますが、私も普通の取りやすい高さで置いてきたのにクレームを入れられた経験が何度かあります。

 そのクレーム内容を聞き及んだところ、ひとえにパートのおばちゃんが取りやすいからだそうです。

 私見ですが、付帯作業の指示が多い店舗はフランチャイズ店に多い気がします。FC店の店員はお疲れ様と缶コーヒーくれるような良い人の場合と、うるさ方の場合と2極化していた印象があります。

サービスでやっていることなのに、そんなことでクレーム入れてくるの? と思うこともしばしば……

 話は変わりますが、ドラッグストアの店舗配送では、開店前の店前に置配するという形態がありました。ある日、私が行った店舗で納品した商品に盗難があったようで、嫌疑がかけられ上司に事情聴取されたことがあります。

 けっきょく嫌疑は解けましたが、納品方法が変更となりました。しかし、店内納品というカタチは講じられず、開店時間にあわせた時間指定が設けられました。

 時間指定ってルートドライバーとしてはけっこう厄介な存在で、他にも何店舗も回らなきゃいけないので非効率なルートを強いられ、このような朝指定のケースは長時間拘束されます。

 やむなき理由で時間指定はしかたないと思いますが、おいそれと設定するのはやめていただきたいというのがルートドライバーとしての本音ではないでしょうか。

 近年、お役所指導のもと運送会社と荷主間で、長時間労働の温床であるトラック運転手の手待ち時間・荷待ち時間を減らそうという働きがあります。時間外労働の上限を定めた運送事業者の働き方改革も間近に迫ってきました。

 理解ある荷主のもとではそういったムダな時間が削られていくことを信じたいですが、店舗などが着荷主の場合はどうでしょうか。納品ルールは基本的に各店舗がいいように設定しているケースが多いです。

 ルートドライバーの視点から見てきた感じ、小口配送の現場までそうした理解が波及するにはまだまだ時間がかかりそうです。

投稿 路上トラブルやクレームのオンパレード!! 夜の店舗配送ドライバーはつらいよ自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。