価格にサイズ、室内の広さと地味ながらも実力満点だったホンダ シャトルが生産終了に。5ナンバーサイズゆえ、取り回しの良さなどメリットだらけであった。
生産終了とあれば気になるのが、シャトルオーナーは次何を狙えばいいのか? という問題だ。他社を選ぶとしても同じような使い勝手を誇るモデルはほとんどなく、あれほどコスパに優れたクルマもない気がするが果たして……。
文:渡辺陽一郎/写真:ホンダ・ベストカーWEB
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20年前は国産だけで20モデルも!! ミニバンとSUVに食われたワゴン市場
以前のワゴン(正確にはステーションワゴン)は、人気のカテゴリーだった。トヨタ カルディナ、日産 ステージア、ホンダ アコードワゴン(のちにツアラーに改名)、三菱 レグナムという具合に、各社がワゴンを用意しており、2000年頃には合計すると約20車種に達していた。
それが今は大幅に減り、直近ではホンダ シャトルも生産を終えた。そのために現存する国産ワゴンは、トヨタがカローラツーリングと継続生産中のカローラフィールダー、スバルはレヴォーグ、マツダ 6ワゴン程度。強いて加えるならSUVに含まれるスバル レガシィアウトバック程度だ。選択肢が5車種まで減った。
ワゴンが減少した理由は、世界的な需要の衰退だ。日本では、1990年代の後半からミニバンが車種と売れ行きを増やして、ワゴンの需要を奪った。ワゴンはセダンに比べると広い荷室を備えるが、ミニバンほどではない。ミニバンはワゴンに比べて車内が大幅に広く、3列シートも備えるから、6~8名の多人数乗車も可能だ。3列目を格納すると大容量の荷室になって自転車も積みやすく、ワゴンのユーザーがミニバンに移ったのだ。
ウィッシュにストリーム!! ワゴン型ミニバンの影響もデカかった
またミニバンは国内市場を重視して開発されるから、以前は5ナンバー車が多かった。ノア&ヴォクシーとステップワゴンは、今では3ナンバー専用車になったが、先代型までは標準ボディが5ナンバーサイズだった。
さらにトヨタのウィッシュやアイシス、日産 初代ラフェスタ、ホンダ ストリームのように、全高が1700mmを下まわる5ナンバーサイズのミニバンもあり、これらは外観、運転感覚、使い勝手が同サイズのワゴンに近い。価格はワゴンに比べて割安だから、ウィッシュは売れ行きを伸ばして、2003年には1か月平均で約1万3200台が登録された。今のヤリスシリーズ(ヤリス+ヤリスクロス+GRヤリス)に迫る台数であった。
以上のようにワゴンは、ミニバンへの乗り替えによってユーザーを減らしている。そのために車種も廃止され、売れ行きがますます減少する悪循環に陥った。
日本は壊滅も欧州は根強い人気!! 予算あるなら欧州ワゴンがオススメ!?
また日本車を大量に購入する北米では、1970年代まではワゴンがセダンよりも上級のカテゴリーとして認知されていたが、1980年代にはミニバンが一時的に売れ行きを伸ばし、今はSUVが主力だ。SUVも荷室が広く、車種によっては3列のシートを備えるから、ワゴンとしても使いやすい。中国市場でもワゴンの人気は低調でSUVが好まれるから、日本のメーカーがワゴンを手掛けるメリットは乏しく、商品開発も滞っている。
しかし、すべてのメーカーやブランドでワゴンの車種数が減ったわけではない。メルセデスベンツ、アウディ、BMW、フォルクスワーゲンなどのドイツ製輸入車を見ると、SUVが増える一方でワゴンも根強く残る。ワゴンはSUVやミニバンに比べてルーフと重心が低く、走行安定性も優れているから、高速走行にも適する。ドイツを始めとする欧州では、日常的に高速走行の機会が多いから、ワゴンの人気も相応に高い。
ワゴンが欲しい場合、予算に余裕があるなら、これらの欧州車を推奨する。走行安定性が優れ、後席や荷室の広い車種も選べる。新型車の発売も活発で、先進の安全装備や運転支援機能を備えたワゴンも用意されている。
シャトルから乗り換えるべき日本モデルはない!? 買うならシエンタか?
問題は日本車だ。レヴォーグは魅力的だが、それ以外は選びにくい。マツダ6は設計が古く、発売から約10年を経過した。購入するなら次期型だ。
特に先ごろ生産を終えたシャトルのユーザーは困る。シャトルと同じ5ナンバーサイズのワゴンは、発売から10年を経ている継続生産型のカローラフィールダーしかないためだ。
カローラツーリングは3ナンバー車になるものの、全長は4495mm、全幅は1745mmだから、ワゴンの中ではコンパクトだ。ただし5ドアハッチバックのカローラスポーツをベースに開発されたから、後席と荷室が狭い。
例えば身長170cmの大人4名が乗車した時、後席に座る乗員の膝先空間は、5ナンバー車のカローラフィールダーなら握りコブシ2つ分を確保する。それがカローラツーリングは、3ナンバー車なのに握りコブシ1つ半だ。従ってカローラツーリングに3~4名で乗車すると、カローラフィールダーよりも窮屈に感じる。
荷室も同様で、後席を使った状態で荷物を積む時、カローラツーリングの荷室長(荷室の奥行寸法)は、カローラフィールダーに比べて50mm短い。カローラツーリングは後席と荷室が両方ともに狭く、実用性に不満を感じる。
その点でシャトルは、空間効率の優れた先代フィットをベースに開発され、荷室長を約300mm拡大した。燃料タンクを前席の下に搭載したから、後席を格納すると大容量の空間になる。そうなるとシャトルの実用性に魅力を感じるユーザーは、カローラツーリングでは満足できない。カローラフィールダーでも狭く、マツダ6はボディが大柄で設計が古く、価格は高い。
そうなるとシャトルのユーザーが選ぶべきはコンパクトミニバンだ。トヨタシエンタは2022年8月に新型になり、2列シートの5人乗りも選べる。その荷室長は、後席を使った状態で840mm、後席を畳むと1865mm(前席を最前端までスライドさせると2045mm)だ。
シャトルは後席を使った時の荷室長が1000mm、後席を格納すると1840mmであった。シエンタなら、シャトルのユーザーも、荷室の広さに不満はないだろう。
ホンダフリードにも2列シート仕様のフリードプラスがあり、床を低く抑えて、荷室の上下方向に余裕を持たせた。ただしフリードは2023年に次期型へフルモデルチェンジされるため、現行型は安全装備や運転支援機能が古い。できれば次期型を選びたい。そうなると現状でシャトルから乗り替えるなら、シエンタがベストな選択になる。
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