今や貴重なピュアスポーツとして大きな注目を集めている日産フェアレディZ。405psという強大なパワーを発揮するV6ツインターボエンジンや初代S30Zを思わせるスタイリングなど大きな魅力をもってデビューした。
そして用意されるのは6速マニュアルミッションと9速オートマチックミッションの2種類トランスミッション。スポーツモデルとしてMTが選べるのはうれしいところだが、ATは新開発の9速だ。
ニューZを楽しく走らせるうえで、より適しているのは、果たしてどちらなのだろうか?
文/斎藤 聡、写真/ベストカー編集部、日産
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■MTにはやはり独特の楽しさがある
MTが良いか、ATが良いか。一般的なセダンやコンパクトカーならMTを選ぶ人よりもATを選ぶ人の方が多いと思います。けれどもスポーツカーになるとどうでしょう? MTを支持する人の割合の方が多くなると思います。
また、仮にATが良いなあと思っていても、スポーツ好きを自認する人はなかなかATを選びにくい。未だにそんな空気感があります。でもフェラーリもランボルギーニも最新型は全部2ペダルです。厳密にいうとATではないのですが、免許制度的に言うとAT免許でもフェラーリもランボルギーニも乗れるんです。
昔の反応の鈍いATだと、断然MTのほうがエンジンの良さ、操縦性の良さがより感じられたし、意のままに走らせるという点でもMTの方が優れていました。まあ、大昔の話ですけど……。
ではなぜスポーツカーは未だにMT車をありがたがるのでしょうか。フェアレディZを俎上に上げて考えてみたいと思います。
端的に言ってしまえばフェアレディZの3Lツインターボが発揮する405ps/475Nmは、MTで楽しめる上限の数値だと思います。
もちろんクルマによって違いますが、Zのツインターボエンジンは、パワーやトルクの出方がレスポンスよくシャープな味付けになっている一方、じつは使いやすく感じられるように荒削りな部分がかなり丸められています。
アクセルを踏んだ瞬間から発揮される力強いターボパワー(トルク)は、いきなりドカンと炸裂させず、あくまでもフワッと感じられるように味付けされているのです。これによってドライバーは余計なストレスを感じることなく、リラックスしてアクセル操作ができるのです。
しかも、ターボは小型のレスポンスの良さが特長のターボですが、ターボ回転センサーを採用し電子制御で過給圧コントロールを行っているため、レスポンスの良さとレブリミットまで続く強力なパワー感を楽しめます。
また、スポーツドライビングではアクセル操作がもう一つのステアリングだと言われるように、アクセルのオンオフでクルマの姿勢を安定させたり、逆に不安定にさせて曲がり易くしたり、そんな自由自在なコントロールができるのです。
Zももちろん積極的にアクセル操作をすることで自在にクルマを操ることができます。
特に今回のビッグチェンジでZはサスペンションの動きがとても滑らかになり、コントロールの幅が広くなっています。
積極的に適切なギヤを選んでパワーバンドを維持することで、エンジン性能を引き出すことができるのもMTの楽しさの一つに挙げられると思います。
ZのMTを走らせていると、クルマを操っているという実感が湧き上がってきて、気分が高揚してきます。改めてZのMTは楽しい! と思います。
■専用の9速ATがMTと遜色のない走りを実現
では、ATモデルはどうでしょう? じつは試乗する前、上から目線でATを見ていたのでした。ところが、いざ走らせてみるとそん色ないところや、部分的にはMTより優れている部分もあるのです。
例えばアクセル操作によってクルマの姿勢をコントロールできる、というMTの良さ。これATにもちゃんと備わっているんです。
Zには専用に開発された9速ATが組み合わされています。このミッションが想像以上に秀逸なんです。低いエンジン回転でもロックアップが働き、トルコンの滑りがなくなります。
具体的には3000回転くらいからロックアップがきいていました。ロックアップが解除されるのは2000回転ほど。かなり低い回転までロックアップを維持してくれるのです。
エンジンパワーが、トルコンの滑りによってダイレクトな感触が薄れてしまうのがデメリットだったのですが、新型の9速ATは走り出したらほぼダイレクトなパワーフィールが得られるわけです。
しかもこの9速ATは最終減速比を含めたギヤ比と各ギヤ同士の間隔=ステップ比をみると、6速までATのほうがギヤ比が低く、7速と8速はオーバードライブギヤとなっています。
また各ギヤ間のステップ比は1速から5速まではMTに比べATのほうがギヤ間隔がわずかに広くなっています。
と言ってもメーター読みで2速90、3速125、4速175(km/h)といったところですから、特にワイドレシオなわけではなく、ターボの伸びのいい加速を考えると速さを損なわずに伸びの良さを味わえるギヤ設定と言っていいと思います。
MTの魅力の一つに挙げていたアクセルコントロールのやりやすさについては、低い回転域かロックアップが効くのでコントロールしやすさは損なわれていません。
■パドルシフトでMT的な楽しみかたもできる
実際にATに乗って驚いたのは、ギヤのつながりが良いことでした。数字上5速まではわずかにワイドレシオになっているのですが、伸びのいい加速を見せながらテンポ良くシフトアップしていきます。
シフトチェンジ時のギヤの滑りもありません。予想以上にアクセルとリヤタイヤが直結している感覚が強く、新搭載のターボエンジンの良さや楽しさをアクセル操作で確かめることができました。
もう一つのMTの楽しさの要因である積極的にギヤを選べる魅力も、パドルシフトでかなりの部分をカバーすることができます。
クラッチを踏む操作こそないものの、任意の場所でパドル操作を行えば瞬時にシフトアップ/ダウンしてくれます。
日産によれば油圧システムの応答性を高めているそうで、これが切れのいいシフトフィールを作り出しているのだと思います。
加速性能も、計測はしていませんが400psクラスのターボになると、ATとの相性がぐっと良くなってきます。ゼロヨン加速はMTで13秒代前半くらいと予想しますが、ATだと12秒台に入る可能性があります。MTのようにシフトごとにクラッチを踏んで過給圧を下げてしまうことがないからです。
MTにもATもローンチコントロール機能がついているので、これを使った場合の速さは試してみないとわかりませんが、少なくとも同等の加速性能は見せてくれるはずです。
■ハンドルとアクセルの操作に集中できるのがATの魅力
加えてATの良いところは、両手でハンドルを握って、ハンドル操作に集中することができることです。
これだけ強烈な加速をすると、MTの運転に習熟した人ならともかく、クルマ好きを自負する人であっても、クルマを思い通り正確に走らせることを考えるとATのほうが運転しやすいと感じるのではないかと思います。
しかも、運転自体も楽しいのです。プラットフォームに補強を加えボディ剛性を高め、サスペンションをブラッシュアップした結果、Zは操作に対してより正確に応答してくれるようになりました。
ハンドル操作やアクセル操作に集中することで、思い通りの走りが楽しめ、より深いドライビングプレジャーを得ることができるからです。
もちろんMTが良いと言われるゆえんは、煩雑な(と言っては身も蓋もありませんが)のシフト操作やクラッチ操作を行うことでより深くクルマの操作に関与でき、支配感とか征服感あるいは達成感を感じられるからです。だからやはりMTは深く面白いのだと思います。
でもZは新型9速ATを得てMTに迫る楽しさやクルマとの一体感が得られるようになりました。ATの進化はそのくらい大きなものとなっていると思います。
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