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ウクライナ軍が、東部ハリコフ州で反攻を強めている。ゼレンスキー大統領は11日、要衝のイジュムを奪還したと宣言した。ウクライナ軍の反転攻勢に、戦争の転換点を迎えつつあるのではないかとの声が広がっている。

ウクライナ軍はハリコフ州のChkalovske集落を解放したという(ウクライナ防衛省ツイッターより)

政治学や軍事学を研究している武内和人氏は「ウクライナ軍の東部攻勢が大きな進展を見せています。 部隊の位置関係を把握しきれていませんが、この3日で部隊は50km以上は前進しており、ウクライナ軍の攻撃部隊の前衛はクピャンスクに到達し、これを包囲したようです」と指摘し、さらに第二次大戦の西部戦線の戦いや、中東戦争などの事例を引き合いに出した。

航空軍事評論家の関賢太郎氏は「朗報。ハルキウの戦いはウクライナの『決定的勝利』となった。ロシア軍は混乱に陥り算を乱し潰走、地雷敷設できなかった」と評価し、ウクライナ軍の勝利の大きさを強調した。

「戦術核」使用の懸念膨らむ

2018年、モスクワの軍事パレードで披露されたロシア軍の核ミサイル(rusm /iStock)

一方、撤退したロシア軍が戦術核兵器の使用に踏み切る恐れを懸念する声もあがっている。元産経新聞記者で、ジャーナリストの三枝玄太郎氏は「あとは逆転を狙ってロシアが核兵器を使うのをどう阻止するか。アメリカやNATOが『核を使ったら、うちらと全面戦争だけど』って、はっきり言ってほしい」とツイートした。

軍事にも詳しい経済ジャーナリストの石井孝明氏も「だが、戦術核をまさか使わないと思うが、選択肢として再浮上でしょう。ロシアが打っても、NATOは打てない」と指摘した。

また、防衛研究所防衛政策研究室長の高橋杉雄氏も、「ロシア軍が退却してる?? 背筋が凍る情報なのだが。戦争が始まって以来もっとも恐ろしい。考えすぎであってほしい」とツイート。戦術核の使用を警戒したと見られている。

戦争学研究家の上岡龍次氏も「燃料が尽きたのか?それとも戦意喪失?ロシア軍の異常な弱さに困惑しています。まあ、日本侵攻は無いから安心。だがプーチン大統領が戦術核を使うかもしれないから、それが怖い。」と述べた。

一般ユーザーからも

今まで撤退をしてなかったロシア軍が今になって大規模な撤退をするの不気味すぎるやろ

などの声があった。

ロシアが戦術核を使用するケースはあるのか。今年3月のことだが、東京大学先端科学技術研究センター専任講師の小泉悠氏(ツイッター名:「丸の内炒飯OL」)は、「ロシアの限定核使用に対する報復は(エスカレーションを避けるために)ロシア本土でなくベラルーシに来る可能性があって二重にかわいそう。さらにNATOとロシアが全面戦争になった場合、ロシアは早期に戦術核を使う可能性が高いが、これもおそらくベラルーシでやるので三重にかわいそう」との見方を示していた。

戦火が拡大した場合に起きるのは、ロシアとアメリカの直接的な対立ではなく、ベラルーシでの代理戦争ではないかとの見解は、確かに説得力を感じる。ウクライナ情勢は、今後どうなるのか。注意深く見守りたい。