ウクライナ軍が、東部ハリコフ州で反攻を強めている。ゼレンスキー大統領は11日、要衝のイジュムを奪還したと宣言した。ウクライナ軍の反転攻勢に、戦争の転換点を迎えつつあるのではないかとの声が広がっている。
政治学や軍事学を研究している武内和人氏は「ウクライナ軍の東部攻勢が大きな進展を見せています。 部隊の位置関係を把握しきれていませんが、この3日で部隊は50km以上は前進しており、ウクライナ軍の攻撃部隊の前衛はクピャンスクに到達し、これを包囲したようです」と指摘し、さらに第二次大戦の西部戦線の戦いや、中東戦争などの事例を引き合いに出した。
ウクライナ軍の東部攻勢が大きな進展を見せています。
部隊の位置関係を把握しきれていませんが、この3日で部隊は50km以上は前進しており、ウクライナ軍の攻撃部隊の前衛はクピャンスクに到達し、これを包囲したようです。これに匹敵する奇襲は44年のアルデンヌか、73年のゴラン高原などでしょう。1/— 武内和人|政治学、軍事学、戦争史の研究紹介 (@Kazuto_Takeuchi) September 10, 2022
航空軍事評論家の関賢太郎氏は「朗報。ハルキウの戦いはウクライナの『決定的勝利』となった。ロシア軍は混乱に陥り算を乱し潰走、地雷敷設できなかった」と評価し、ウクライナ軍の勝利の大きさを強調した。
朗報。ハルキウの戦いはウクライナの「決定的勝利」となった。ロシア軍は混乱に陥り算を乱し潰走、地雷敷設できなかった。ロシアはオスキル川東岸で防御するらしいが、ウクライナは要衝イジューム奪還により兵力を攻撃に回せるほか物資を大量鹵獲。「ロシア軍はさらに東方へ押しやられる可能性が高い」 https://t.co/GoZTfCxMqN
— ぐり@関賢太郎 航空軍事記者 (@gripen_ng) September 11, 2022
「戦術核」使用の懸念膨らむ
一方、撤退したロシア軍が戦術核兵器の使用に踏み切る恐れを懸念する声もあがっている。元産経新聞記者で、ジャーナリストの三枝玄太郎氏は「あとは逆転を狙ってロシアが核兵器を使うのをどう阻止するか。アメリカやNATOが『核を使ったら、うちらと全面戦争だけど』って、はっきり言ってほしい」とツイートした。
https://t.co/92aZmn1Prp あとは逆転を狙ってロシアが核兵器を使うのをどう阻止するか。アメリカやNATOが「核を使ったら、うちらと全面戦争だけど」って、はっきり言ってほしい。もう勝敗はほぼ決定したと思う。それほどロシアの敗走は壊滅的。
— 三枝 玄太郎 (@SaigusaGentaro) September 11, 2022
軍事にも詳しい経済ジャーナリストの石井孝明氏も「だが、戦術核をまさか使わないと思うが、選択肢として再浮上でしょう。ロシアが打っても、NATOは打てない」と指摘した。
しかも中将・戦域司令官が捕虜とは。理解に苦しむ。ロシアの従軍記者が、奉天か対馬だとつぶやいたと話題になっていますが(日露戦争の転換)、そんな状況になるかも。だが、戦術核をまさか使わないと思うが、選択肢として再浮上でしょう。ロシアが打っても、NATOは打てない
— 石井孝明(Ishii Takaaki) (@ishiitakaaki) September 11, 2022
また、防衛研究所防衛政策研究室長の高橋杉雄氏も、「ロシア軍が退却してる?? 背筋が凍る情報なのだが。戦争が始まって以来もっとも恐ろしい。考えすぎであってほしい」とツイート。戦術核の使用を警戒したと見られている。
私用が終わって情報アップデートしたら、ロシア軍が退却してる??
背筋が凍る情報なのだが。戦争が始まって以来もっとも恐ろしい。
考えすぎであってほしい。
— 高橋 杉雄 (@SugioNIDS) September 10, 2022
戦争学研究家の上岡龍次氏も「燃料が尽きたのか?それとも戦意喪失?ロシア軍の異常な弱さに困惑しています。まあ、日本侵攻は無いから安心。だがプーチン大統領が戦術核を使うかもしれないから、それが怖い。」と述べた。
事実ならウクライナ軍の戦車部隊は戦力を強化できる。燃料が尽きたのか?それとも戦意喪失?ロシア軍の異常な弱さに困惑しています。まあ、日本侵攻は無いから安心。だがプーチン大統領が戦術核を使うかもしれないから、それが怖い。 https://t.co/GUqaA92uPw
— 上岡 龍次 (@box217) September 11, 2022
一般ユーザーからも
今まで撤退をしてなかったロシア軍が今になって大規模な撤退をするの不気味すぎるやろ
などの声があった。
ロシアが戦術核を使用するケースはあるのか。今年3月のことだが、東京大学先端科学技術研究センター専任講師の小泉悠氏(ツイッター名:「丸の内炒飯OL」)は、「ロシアの限定核使用に対する報復は(エスカレーションを避けるために)ロシア本土でなくベラルーシに来る可能性があって二重にかわいそう。さらにNATOとロシアが全面戦争になった場合、ロシアは早期に戦術核を使う可能性が高いが、これもおそらくベラルーシでやるので三重にかわいそう」との見方を示していた。
しかもロシアの限定核使用に対する報復は(エスカレーションを避けるために)ロシア本土でなくベラルーシに来る可能性があって二重にかわいそう。さらにNATOとロシアが全面戦争になった場合、ロシアは早期に戦術核を使う可能性が高いが、これもおそらくベラルーシでやるので三重にかわいそう。
— 丸の内炒飯OL (@OKB1917) March 21, 2022
戦火が拡大した場合に起きるのは、ロシアとアメリカの直接的な対立ではなく、ベラルーシでの代理戦争ではないかとの見解は、確かに説得力を感じる。ウクライナ情勢は、今後どうなるのか。注意深く見守りたい。