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日本経済新聞が8日の電子版で配信した日経MJの記事がネット上で騒動になっている。日経新聞が配信したのは、「小学生向けSNSアプリ 子の興味、安心・安全に伸ばす」という見出しの記事。子どもの作品を親子で投稿しシェアできる機能などを搭載した、12歳以下の子ども向けSNSアプリサービスを紹介する記事だ。

※画像はイメージです(metamorworks /iStock)

記事が“炎上”しているワケ

記事では、「投稿は子どもだけだが保護者は家族として参加し、子どものアカウントを管理できる」「いじめや犯罪につながる言葉は書き込めないように設定している」「ダイレクトメッセージも送れない」など、このアプリが特に安全性に配慮されている面を強調していた。

しかし、この一見何の変哲もないような記事がネット上で“炎上”しているのだ。ツイッターでは、次のような声で溢れていた。

エリート統一教会信者が 素性を隠して活動していると疑われているアプリを日経新聞が紹介してしまう。終わってますな 日本の良識は。

日経新聞が統一協会のエリート信者が運営するアプリを紹介しています

大学ではカルトのサークル勧誘の注意喚起とかあるみたいだけど、小中学校も学校がカルトの注意喚起をしないといけなくなってるよ。

ネット民が指摘するように、このアプリを運営する会社の社長は、現在は定かではないが、少なくとも過去には旧統一教会の信者だったことを明かしている。「FFWPU Mission Support」という旧統一教会系の英字ニュースサイトでは、「天一国指導者大会」というイベントで講演する社長の姿も確認できた。社長は、この席で次のように述べている。

愛する真の父母様、来賓の皆様、統一運動の指導者の皆様、世界平和統一家庭連合の会員の皆様、兄弟姉妹の皆様。2015年天一国指導者大会、まず、神様と真の父母様に、このような素晴らしい機会を与えてくださったことに、心から感謝いたします

「調査尽くし自浄能力を」社説との矛盾

また、ネット上では社説など、日ごろの日経新聞の主張との矛盾を指摘する声も少なくない。

自民党が所属する国会議員と旧統一教会との接点についての調査結果を発表したことを受け日経新聞は10日、「自民は調査尽くし自浄能力を」と題する社説を出した。社説では、「調査を続けて過去のかかわりを含む問題点を明らかにし、関係をきちんと是正してほしい」「公序良俗に反するような団体とは距離をおく自浄能力が求められる」などと指摘していた。

東京・大手町の日経新聞本社(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

今回の子ども向けSNSを推す記事を受けてネットでは「日経新聞は旧統一教会の広告塔か⁉」といった意見も見受けられた。日経新聞は、統一教会が「公序良俗に反するような団体」(社説より)で、自民党がかかわっていることが問題と考えているようだが、そんな団体と自社の取材上の付き合いについてはそのままでいいというのだろうか

日経新聞の熱心な読者であればあるほど、どういった経緯でこの記事が配信されることになったのか、金銭などの介在しない純粋なサービス紹介記事なのかを知りたいと思うのではないか。

また、8月26日付けの社説では、「新型コロナウイルス禍で不安を抱える人が多く、カルト的な集団がSNS(交流サイト)などを通じ勧誘を活発化しているとの指摘もある」と記載していることから、SNSがカルト的な集団の勧誘の温床になっていることは日経新聞も認識していたのではないか

しかも今回、日経新聞が紹介したSNSアプリは、12歳以下の子ども向けのものだ。子育て世代から「アプリを通じて子どもが旧統一教会に勧誘されるのでは」といった心配の声が上がるのも当然のことだろう。

ネット上では、これ以上このアプリを拡散させないために記事の削除を望む子育て世代の書き込みも多数寄せられていたが、記事の配信から4日ほど経った12日午後に削除された。もちろん紙面は削除できないが、果たしてどう説明するのだろうか。