なにかと自動化が進む現代。クルマも面倒な操作がどんどん減って、スマホのように使える日が来そうな気配。とはいえ昭和に生まれたオッサン世代にとっては、やたらと手間がかかった昔のエンジン車もどこか憎めない。
そこでここでは、電気自動車の時代になったら懐かしくなるんじゃないかと思える内燃機関のあるあるを集めてみた。「あーそうだった」と共感してしまった人は、オッサンの世界にウェルカム!
文/ベストカーWeb編集部、写真/トヨタ、日産、Adobestock、ベストカーWeb編集部
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その1:「ぶるん!」という始動音
今どきのクルマの始動は実に味気ない。電気自動車やハイブリッド車はエンジンがかからないから、スタートボタンを押しても車内はしーん。なんというか「おっしゃ! ドライブに出かけたるぜ!」という高揚感が沸き上がらないのだ。お前は家電か?
その点エンジン車はよかった。今では制御が高度化してこちらもボタン一発だが、それでも「ぶるん!」とかかるエンジンは「ご主人様、準備整いました!」というクルマからの挨拶だ。
ちなみにこの「始動」という行為、大昔はすさまじくて、気温や気圧次第ではエンジンがかからないなんてこともあった。チョークレバーを引いて、キーをひと捻りし、燃料ポンプのうなりを聴きながら「キャブレターにガソリン届いたかな?」という絶妙なタイミングでスターターを回す。「かかった!」と思ったらすかさずアクセルをあおってエンジンのご機嫌をうかがったものだ。いっけん名人芸の世界だけど、筆者の母親も毎日そうやってクルマのエンジンをかけて仕事に出かけていた。あー懐かしい。
その2:死ぬほど恥ずかしかったエンスト
エンストとはエンジンストールのこと。MT車で発進に失敗するとガクン! とエンジンが止まっちゃって、冷や汗が流れたものだ。いまやクルマは99%がATだから、エンストを経験する人も少ないはず。ましてやEVになればエンストという概念自体がなくなってしまう……というかモーターは停止のたびにエンストだ!
オッサン世代は、とにかく坂道発進が腕の見せ所だった。アクセルを過度に踏み込まず、サイドブレーキとクラッチをうまく連携させて平地のように発進できる人は、マジで尊敬された。逆に失敗してエンストしようものなら同乗者の笑いもの。ビビった後続車が車間距離を10mくらい空けているのをミラーで見て、いっそう落ち込んだりしたものだ。酸っぱい思い出だなあ(遠い目)。
その3:マフラー自慢
「太いマフラーがエライ」。そんな時代が過去にはあった。マフラーにはコブシが入って当たり前。80φ(=ファイが正式だがオッサンたちはパイと呼んだ)とか100φとか直径を競い合ったものだ。サービスエリアなどでスポーツカーをみかけると、まずはマフラーをチェック。ノーマルのままでは相手にされなかった。
いまや騒音規制も厳しくなりマフラー熱も以前ほどではないが、いまどきのクルマにがっかりすることがある。いっけん立派なマフラーを装着しているように見えて、近づいてみるとダミーだったりするときだ。裏を返せばマフラーは、それほどまでに自動車のシンボルだったのだ。くれぐれもEVのデザイナーはダミーマフラーをつけないように!
その4:「操縦感」に酔いしれたメーターチューン
昔のクルマ、特にスポーツカーにはいっぱいメーターが付いていた。燃料計に水温系はもちろん、油温計、油圧計、燃圧計、電圧計、ターボのブースト計といった具合。物足りない人はチューニングショップへ行って追加メーターを取り付けてたぐらいだ。
まあサーキット走行でもしない限り、フル活用という場面は少なかったけれど、それでも昔のクルマは「手がかかる子」だったからトラブル予知の手段にはなった。「俺はいまクルマを操縦しているんだ!」と酔いしれるには最高のアイテムで、「戦闘機やガンダムを操りたい!」という男の子の夢の代償だったのかもしれない。
いっぽういまのクルマはエンジン車でもメーター類は最小限。普段は速度など必要な情報だけを伝えて、警告などはセンサーが異常を察知したときだけ表示するように工夫されている。完全自動運転が実用化すれば運転席自体が消滅してしまうから、人間がクルマのメーターとにらめっこするなんてことは遠からず絶滅するんだろうなあ。
その5:添加剤「口プロレス」
昔はカーショップへ行くといろんな添加剤が売られていた。ガソリンタンクの水抜き剤に始まって、パワーアップをうたったものや燃費向上をアピールするものまでさまざま。オッサンたちはこぞって買いまくって、その効果を自慢しあったものだ。
入れるとしっかりと効果を生む添加剤もあるいっぽうで、中には怪しい製品もあり、実態はほとんど口プロレスの世界だった。EV時代になれば、給油やおろかエンジンオイル交換もないから、添加剤文化は消えてしまうのだろうが、たった1000円程度で「クルマの性能が上がるかも!」という夢が見れた時代は、間違いなく幸せだった。
その6:エキゾーストノート
これがなくなってしまうことが、実は一番のショックかもしれない。
クルマの排気音は多くの人にとって迷惑の種だろうが、昔のクルマ好きはこれが大好物だった。スバルの水平対向、日産の直列6気筒、マツダの13Bロータリー、そしてアメ車のV8と、エンジン車にはそれぞれ個性的な音があり、その個性を競い合ったものだ。名指揮者のカラヤンがポルシェのサウンドを愛したのは有名な話。筆者自身も、昔は深夜の国道を走り去るクルマの音に耳をそばだてたりしたものだ。
数年後には鬼のように厳しい騒音規制が実施されるため、自動車はほぼ無音になるだろう。とはいえ人間が無音のクルマを気に入るかは怪しく、車内にだけエキゾーストノートを響かせる「アクティブ・サウンド・コントロール」といった仕組みも実用化されている。EVにも走行音を出させる研究も進んでいるから、意外とエキゾーストノートが残ったりして!
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投稿 もうすでに懐かしい? EV時代には昔話に? 昭和のクルマ好きの儀式6選 は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。