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 「バス」と聞かれれば、地上を走る四角くてゴムタイヤが付いた大きなクルマをイメージするのが一般的。しかしバスは本来「公共の乗り物」という意味なので、自動車の形をしている必要も特にないのだ。実際クルマでなくてもバスを冠する乗り物は陸海空で活躍している。そこで今回はバスという名を冠する乗り物を一挙にご紹介!

文・写真:中山修一


今や超激レアのレールバス!! 乗車定員の少なさが原因?

 道路ではなく鉄のレールの上を進む車両がレールバスだ。レールバスはそれほど利用者が多くないローカル線向けに開発された。製造コストを抑えるために自動車のバスの技術を活用したのが特徴。普通のディーゼルカーより小柄で定員も少ない。

 日本では1950〜60年代に国鉄が一部地域に投入したのを始め、1970〜80年代にかけて地方私鉄や第3セクター向けの車両としても多数のレールバスが製造された。エンジンを始め、バス車両とパーツを共通化している部分もある。

バス窓がレトロな南部縦貫鉄道のキハ10形

 低コストと省力化・効率アップを狙ったレールバスであったが、国鉄の運用例では車体が小さすぎて今度は乗客が乗り切れなくなる問題が生じた。

 製造された車両は各地のローカル線で10年ほど使われたものの、国鉄でのレールバス投入はそれきりだった。レールバスは普通の鉄道車両よりも作りが華奢であるため、寿命が短いという弱点を持っている。

 地方私鉄/第3セクターに投入されたレールバスの平均的な顛末を見てみると、各路線で大体10〜15年ほど使用されたのち廃車となっている。2022年現在も活躍中のレールバスは極めてレアだ。

空飛ぶバスだからエアバス!?

 空を飛ぶバス、それがエアバスである。「エアバス」という言い回しは1960年代の航空産業で使われていた専門用語の一種で、短距離路線向けの小・中型飛行機を表すものだった。地上を走るバスのように気軽に利用できる移動手段を意識していたらしい。

 現在では飛行機のメーカー名を指すことのほうが多いが、エアバス社の由来も上記の専門用語から採られている。

 エアバスの旅客機シリーズには、社名の通りバスのような存在感を放つ短・中距離向けのナローボディ機から、長距離用4発ジェット機や二階建て超大型機まで、幅広いモデルがある。

 A320やA380など、エアバス社製旅客機のモデル名には最初にAが付く。このAはAirbusのAだ。また、高速バス感覚で乗れる格安航空会社(LCC)の機材には、エアバスの短・中距離向けモデルが広く導入されている。

 飛行機をバスとみなすのは無理があるようにも感じられるが、社名やモデル名がそうである以上、バスから完全に切り離すのは難しいのだ。ただし、ボーイング社やエンブラエル社などの飛行機はバスと称していないので、公共の乗り物であるのは同じながら、ちょっとニュアンスが変わるかもしれない。

日本のLCCでも定番となっているエアバスA320

水面を進むバスだから水上バス

 地形の関係などにより、地域によってはクルマよりも船が重宝されることがある。そんな場所の川や海・湖など水の上を進む公共交通機関が文字通り水上バスだ。

 中でも、数カ所の船着場を経由しながら始点と終点を結ぶ、やや短距離運航の小型乗合船を「水上バス」と呼ぶ印象が強く、使い勝手も路線バスに近い。

 ダイヤが組まれ決まった時刻に運航するのも陸上と共通だ。水上バスは国が定める「一般旅客定期航路事業」に当たる。法律は抜きにして趣味の話となれば、事業者が水上バスと銘打つか否かで見方が変わってくる。

 移動手段としての性質が強い航路でも遊覧船を謳っていたり、遊覧向けに見えても名称は水上バスだったりするわけで、全部が全部一緒ではないのが面白い。運航距離と船のサイズで区別を付けるとすれば、渡し船 < 水上バス < フェリー の順になる。

 ちなみに、横浜の短距離乗合船でおなじみの「シーバス」は、魚のスズキ(sea bass)が由来なので念のため。

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