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オペル カデットC: 登場から55年・・・。このカデットは、恋人の胸をときめかせる。整備記録有り、走行距離も非常に少ない。そして極めつけは、そんな素敵なオペルが売りに出されたことだ!?

この「オペル カデットC」は、年間平均、1,000kmちょっとしか運転されていなかったそうだ。信じられない?でも、それは事実なのだ! なぜなら、この旧車は過去45年の間に52,400kmしか走っていないのだ。そして、それらは1977年以来、すべて1人のオーナーによって蓄積されてきた走行距離だ。そして、今、このクラシックカーが売りに出されている。

黄色の「カデット」は、55馬力を発生する1.2リッター4気筒エンジンを搭載している。ちなみに、C型はフロントエンジンが縦置きになった最後の世代だ。駆動方式は、オペル最後のコンパクトカーとして、マニュアル4速ギアボックスと後輪駆動を採用している。

この1.2リッターエンジンは55馬力を発生し、カデットの縦置きエンジンとしては最後のものである。すかすかで整備性の良さそうなエンジンルーム。補器類の少なさにビックリ。

「カデットC」の特徴は、ボディスタイルの豊富さである。2ドアノッチバックサルーン(出品車)のほか、4ドアモデル、クーペ、2ドアエステートカー「カデットキャラバン」、ハッチバック仕様(「シティ」)が用意された。そして、バウル カロッセリー ウント ファーレツォークバウの手で改造された「カデットCエアロ」は、2ドアサルーンのオープンバージョンとして登場した。

全体的に良好な印象だが、細かな不具合は残っている

45年間、愛情を注いできたにもかかわらず、このクルマには欠点がある。しかし、現オーナーによれば、その欠点も非常に限られているそうだ。まず、塗装の一部補修が必要で、新しいタイヤが必要で、すべてのホイールに錆があり、そのうちの1つが損傷しており、フロント右翼がわずかにへこみ、トランク上のゴムシールに約1cmの穴があり、運転席シートベルトのテンションプーリーを交換する必要があるとのこと。

塗装は好印象で、あちこちにある小さな傷は補修すればよいだろう。

1977年以来、すべての整備記録が残されている

一方、「カデット」のその他の部分は定期的にちゃんとメンテナンスされており、1977年以降の修理や整備工場の訪問はすべて記録されている。また、2021年10月にバッテリーとブレーキシリンダーを交換した。シートなどにもダメージがなく、きれいな状態であることが報告されている。さらに、オリジナルのオンボードツールも存在するという。

目に見えるダメージはない: 50年以上経っても、インテリアのすべてが良好だ。なんともシンプルで明るい室内。

この一見よく手入れされたクラシックカーは、8,500ユーロ(約120万円)という価格で売りに出されている。通常の中古車販売サイトでも、同モデル(サルーン、製造年同じ)は同じような価格で販売されている。しかし、たったワンオーナーで、走行距離も驚くほど少ないこの「カデット」は、希少な1台と言えるだろう。

【ABJのコメント】
この「オペル カデット」、個人的にはかなりピピっと来るような魅力を持った個体である。我々日本人にとって、なじみ深いのはもちろん「カデット」ではなく、兄弟車であるところの「いすゞ ジェミニ」ではあるが、この「カデット」を見て、思い出すのはやはりあの頃街中を走っていた「ジェミニ」の姿である。「ジェミニ」を見るたびにヨーロッパの普通の小型車の良さのようなものが、そのシンプルな姿の内側から染み出るように感じていたようにも思う。

僕の好きなグレードは「ZZ」などのスポーティグレードではなく、「ミンクス」という穏やかなモデルや、ディーゼルエンジンを搭載したセダンモデルで、そういう飾らない実用車らしさこそ、元になった「カデット」の魅力的なのだろう。

今回120万円で売りに出されている「カデットC」、1970年代の空気感を持っていることはなんともうれしい。シンプルで明るいインテリア、妙なうねりなどのないボディライン、そして複雑な補器類などがまったくないスッカスカのエンジンルーム・・・。あの頃の自動車はなんともシンプルであった。それからすると今や軽自動車であっても満艦飾なものばかりである。もちろん今のモデルのほうが安楽で快適かもしれないけれど、自動車を普通に転がす楽しさという面では、このころの車のほうがダイレクトに楽しいはずである。そして、いざ乗ってみれば、実用車はこれで十分ということに気が付くのではないだろうか。(KO)

Text: Kim-Sarah Biehl
加筆: 大林晃平
Photo: ebay.de/soba9548