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 フェラーリ初の4ドア4シーターモデル、プロサングエが日本時間9月14日AM2時、ついにその全貌を明らかにした。事実上のブランド初となるSUVとはいえ、フェラーリらしい4ドアスポーツカーとして新たなスタンダードを打ち立てる革新的なレイアウトを持ち込んだモデルに仕上げてきた。その期待値を西川淳氏がレポートする!!

文/西川 淳、写真/フェラーリ

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■既存のスーパーカーブランドのSUVたちとはまったく違う!?

待望のワールドプレミアとなったフェラーリ初となるSUV、プロサングエ。その佇まいはフェラーリが主張する「スポーツ」の名にふさわしい存在感を放つ

 長らく「跳ね馬のSUV」として噂されてきたニューモデルの全貌がついに明らかになった。

 否、マラネッロはこの新型モデルをSUVとはひと言も言わなかった。メディアの前では頑なにそうとは言わず、「まったく新しいジャンルのスポーツカーだ」とアピールし続けた。その理由は車名がすでに物語っている。

 プロサングエ=サラブレッド。要するに初の4ドアモデルでありながら、それはマラネッロの純血種であり、過去のモデルと同様、エクスクルーシブなスポーツカーであるというのが彼らの主張だ。ランボルギーニウルスやアストンマーティンDBXといった既存のスーパーSUVたちとは一線を画す存在であると言いたいらしい。

 その根拠はいくつかある。まずは伝統の12気筒自然吸気エンジンを搭載したことだ。812シリーズ用と同じ6.5LのV12ながら、主要パーツをほとんど新設計としたF140IA型を搭載。最高出力は725cvと抑え気味ながら、実用領域におけるトルク性能を大幅に引き上げた。

 次にパワートレーンのレイアウトだ。基本的には4シーターGTで独創的な4WDシステム、4RM-Sを持つGTC4ルッソのシステム構成に似ている。エンジンを完全フロントミドとし、前方にコンパクトなPTUを置いて前輪左右を駆動、ギア比を低く設定した改良型8速DCTをリア軸に置くトランスアクスル方式とした。4RM-S evoと呼ぶ。

■フェラーリのなかでもルッソに近いボディサイズ

プロサングエのボディサイズは全長4973×全幅2028×全高1589mm、ホイールベース3018mmと発表されている。全高以外はルッソに近いサイズだ

 ボディサイズもまた全高以外はルッソに近い。けれどもプロサングエは4ドアだ。ホイールベースをキープしつつ、乗降性を考慮し、さらに軽量化や剛性確保にも留意して、観音開き式の「ウェルカムドア」を採用した。リアドアは基本、電動開閉が可能である(中から開く時のみ半手動)。

 となれば、「なんだプロサングエはルッソを4ドアにして車高を20cm上げただけのハイライドモデルか」、と思われるかもしれないが、決してそうではない。話がそれほど簡単であれば、もっと早くにマラネッロはSUVとして市場に投入していただろう。

 けれども彼らはそうしなかった。なぜなら単に車高を上げただけでは、フェラーリらしいスポーツカーにはならないからだ。

 車高を上げたことによる運動性能への悪影響を排除する。彼らが待っていた技術が、まったく新しいタイプのアクティヴサスペンションシステムだった。これはカナダに本拠を置き、最近、レーシングシーンでも名を馳せるマルチマティック社が開発した電動ダンピングシステム(TASV)で、これを採用することにより、背の高いSUVの物理的な欠点である運動時のボディ姿勢やロールセンターを瞬時に四輪独立して制御できるようになった。

 既存のさまざまなシャシーコントロールシステムの改良版や、新たにボッシュと開発したABS EVOシステムと組み合わせることで、背の高いプロサングエをルッソ以上にスポーツカーらしく走らせることに成功したという。

■ルッソと似た全体の造形ながらスタイリングは独創的!

個性的なプロサングエのスタイリング。リアフェンダーはグラマラスな造形で、リアオーバーハングが極端に短いのもルッソ譲りとなっている

 スタイリングも個性に満ちていた。フロントノーズ、ショートデッキのFRクーペスタイルを踏襲し、リアフェンダーはグラマラスに膨らんで、リアオーバーハングが極端に短い。これまた全高以外はルッソとよく似た造形だ。

 前後バンパーと両サイドは一体となってみえ、その上にアッパーボディが載るフローティング構造とした。これは視覚的に車体をダイナミックに見せるほか、エアロダイナミクスの効果も高い。特にフェンダーアーチ周辺の整流に威力を発揮する。

 インテリアはローマに初めて採用された「デュアルコクピットコンセプト」の発展版で、4座すべてでフェラーリ体験可能というのがデザインコンセプトであった。

 もちろん、シャシーやボディ骨格はまったくの新設計であり、なかでもシャシーは従来の4シーターモデルより少し大きくなっているにもかかわらず、重量は軽く、剛性も上げられた。重量増は約200kgとなっている。乾燥重量で2トン超えのロードカーもまたマラネッロ初だろう。

 最後に気になる価格について。日本での販売価格は未定だが、イタリアではベースモデルで39万ユーロ(約5626万5300円)と発表された。生産台数は年間総台数の約2割というから、これまでの12気筒モデル(812やルッソ)と同様で、台数にすればおそらく2000台というあたり。

 つまり、エクスクルーシブ性は高く保たれる。「SUVででっかく儲けよう」という話ではなく、あくまでも812やルッソの代わりとしての12気筒シリーズとして、プロサングエをしばらくは生産する心積もりであることがその価格や台数、そして「SUV」とは彼らが決して言わなかったことからも窺ええよう。

ちなみにプレオーダーは従来にない「殺到ぶり」らしい。

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