10月29~30日にカリフォルニア州のグレンヘレンで第4戦を実施し、11月12~13日にはアリゾナ州フェニックスでの第5戦/第6戦を開催した創設2年目の『Nitro Rallycross(ナイトロ・ラリークロス/NitroRX)』は、強豪ドレイヤー&レインボールド・レーシング・ウィズ・JCレーステクニーク(DRR JC)から参戦のジャマイカ出身ドライバー、フレイザー・マッコーネルが第4戦で待望のシリーズ初優勝を達成。
そして2020年のNASCARカップ・シリーズ王者でもあるチェイス・エリオットと、今季のデイトナ500覇者オースティン・シンドリックの“カメオ出演”も話題を呼んだフェニックス・ワイルドホースパスでの1戦は、初代シリーズチャンピオンにも輝くトラビス・パストラーナが勝利し、2022-23年シーズン初の”リピートウイナー”となっている。
創設2年目となる2022年から当初計画どおりグローバル・シリーズへと変貌を遂げた同シリーズは、開幕戦となったイギリス・リデンヒル、第2戦スウェーデン、そして第3戦に予定されていたフィンランドの開催中止を経て、10月初旬に故郷アメリカへと凱旋。地元初戦となったミネソタ州ミネアポリスにあるERXモーターパークでは、シリーズ発起人としてチャンピオンシップのグローバル化に奔走した初代王者パストラーナが初優勝を飾る“美しき物語”が描かれた。
しかし迎えた第4戦のグレンヘレンは、ファイナルを前に予選ヒートから波乱続発の展開となり、開幕覇者ロビン・ラーソン(DRR JC)やパストラーナが敗退し、早々に姿を消すことに。同じくXiteエナジー・レーシングから参戦する元F1王者ジェンソン・バトンも、金曜プラクティスでのクラッシュにより予選ヒートと続く“Bracket Final”を前に「充分なシートタイムが得られなかった」として、残りの週末を欠席することを選択。無念の早期退場となってしまった。
発表されたチームリリースでは、撤退の要因について「ジェンソンとチームの双方が、今日これ以上、ジェンソンにドライブを依頼するのは非現実的で公平ではないと判断した。ここにいる他のほとんどのドライバーとは異なり、ジェンソンはこのトラックに存在するジャンプギャップの大きさについて、これまでほとんど経験がありません。充分なシートタイムと走行距離がなければ、続けるのは賢明ではなかったでしょう」との判断が記された。
そのまま土曜最速、日曜午前にもヒート勝利を記録したマッコーネルが、自身初のポールポジションからファイナルのスタートを切ると、2番手発進となったラーソンからの挑戦も抑え込み、早い段階でリードを維持する。
2周目にはそのラーソンが、4周目には首位マッコーネルがジョーカー消化を済ませると、ポジションを維持したままファイナルラップへと突入。第2戦勝者アンドレアス・バッケルド(DRR JC)以下のパックがここでジョーカーに飛び込むと、首位マッコーネルを追走していたラーソンとバッケルドが、合流地点のターン4で交錯。チームメイトの2台ともにポディウム圏内は維持したものの、マッコーネルに初優勝を献上する結果となった。
■初テストを行ったチェイス・エリオット「NASCARカップとは何もかもが異なる」
続いて第5戦、第6戦のダブルヘッダー・イベントとして開催されるフェニックス・ワイルドホースパスの週末に向け、今季も激動の38戦を戦い抜いた元カップ王者が、モーター出力約800kW(約1070PS)、最大トルク1100Nm、0-100km/h加速わずか1.4秒をマークする新開発電動車両『FC1-X』の初テストを実施し、昨季以来のカムバックに向けた準備を整えた。
「昨年フロリダの最終戦にも(スバルWRX STIで)挑戦したけど、パドックにはのんびりとリラックスした雰囲気も漂い、本当に居心地が良かったよ」と振り返ったヘンドリック・モータースポーツの大エース。「でもそれが僕にとっては普通じゃない世界で、アスファルトとウォールに囲まれたNASCARカップとは何もかもが異なる。それに今回はエレクトリック“SUV”による勝負だからね」と続けたエリオット。
「正直なところ公道でもあまり(EVを)運転したことがないから、慣れるまで少し時間が掛かったが、これは本当に大きなRCカーのようなもので、ノイズなどがまったく聞こえないのはちょっと“ワイルド”だね(笑)。だからスライドやジャンプに加えて、その部分でも調整しなければならなかった。でも本当に楽しんでいるし、週末を通して改善し続けたいと思っている。どうなるか見てみよう」
そう語ったエリオットと、同じくNASCARに専念する前にはラリークロスでキャリアを積んでいたチーム・ペンスキーのシンドリックともに、予選ヒートで健闘を見せたものの、後者はコナー・マテル(バーモント・スポーツカー)に敗れ、前者は予選で躍進を見せたオリバー・ベネット(Xiteエナジー・レーシング)の後塵を拝し、ファイナル進出はならず。
そのベネットは、今回バトンに代わって僚友を務めるWRC世界ラリー選手権優勝経験者のクリス・ミークとともに、ケビン・エリクソン(オルスバーグMSE AB)らを撃破したものの、マテルとの接触やシンドリックとの激しいクラッシュでセミファイナル失格処分に。最終的に予選最速を記録したパストラーナが僚友マテルを従え、今季複数勝利を挙げた最初のドライバーとなった。
この後も年跨ぎの2022-23年シーズンとして北米開催の続くNitroRXは、新年1月21~22日にカナダのケベックで第7戦の開催が予定されている。