米軍が何らかの科学的実験などをするため、定期的に軌道上へ送り出している宇宙機X-37Bが、6度目のミッション(OTV-6)を終え、11月12日に地上に戻った。このミッションでの宇宙滞在は908日におよび、これまで最も長期間の滞在だった780日を128日も更新した。
X-37Bを開発したボーイングのシニアVP、ジム・チルトン氏は「X-37Bは、はじめて打ち上げられた2010年以来、毎回記録を塗り替え、新しい宇宙技術を迅速にテストして統合する、他にない能力を発揮してきた」と述べ、「サービスモジュールを追加した今回のミッションは、X-37Bの軌道上の滞在日数としてはこれまでで最も長く、政府と業界パートナーのため、この新しく柔軟な能力を証明できたことを誇りに思う」とコメントした。
米軍は、以前はX-37Bのミッションで何をしているかは極秘事項としていた。しかし最近ではどんな実験やペイロードを搭載したか、その一部を公表するようになっている。たとえば今回帰還したOTV-6ミッションでは、海軍研究所の光起電力無線アンテナのテストを行ったことが公表された。
このピザボックス程度の大きさの装置は、太陽エネルギーをマイクロ波に変換して地上に送る機能を備え、将来的に宇宙太陽光発電が現実的になったときに向けた先行的な技術開発だ。
そのほか、空軍士官学校の学生が開発した「FalconSat-8」なる5つの実験装置を備えた人工衛星も搭載され、軌道に投入されたという。この衛星は現在も軌道を周回している。さらに、NASAの実験もいくつかX-37Bを用いておこなわれた。
ちなみにOTV-6ミッションは、X-37Bのミッション日数の新記録を樹立したが、宇宙飛行全体の記録からすれば大したものではない。地球観測衛星や通信衛星には10年以上軌道上で運用される者もあり、国際宇宙ステーション(ISS)も2000年11月から運用を継続している。もっといえば、ボイジャー1号および2号は打上げから45年以上も経過したが、現在も星間空間から地上に信号を送り続けている。