さあ、ウインターシーズン到来! となれば、そろそろスタッドレスタイヤの出番です。
北国・山国・雪国を走ることが多いトラックにはスタッドレスは必需品。そこで、商用車タイヤのプロとして知られるハマダユキオさんにスタッドレスタイヤの履き替えのカンどころを聞いてみました。
文/ハマダユキオ 写真/ハマダユキオ・フルロード編集部
冬来たりなばスタッドレスタイヤ
スタッドレスタイヤへの履き替え時期到来ですね。
クルマが新しくなった、あるいは以前装着してたスタッドレスをこの秋まで履いていた、いわゆる「履き潰し」の場合は、新品のスタッドレスタイヤに履き替えなければなりません。
新品装着の注意点は、まだ路面との馴染みが出てないので、慣らし運転という感じでカタログに記載されている文章を引用すると「60Km/h以下の走行速度で200km以上の走行距離の慣らし走行を行なってください」とあります。
俗に言う「一皮剥ける」までゆっくり走ってね、ってことです。
問題は2シーズン目で、昨シーズンより以前に購入された、ある程度摩耗したスタッドレスタイヤです。
スタッドレスタイヤは積雪、凍結路面に対してある程度安全に走破できるように設計、製造されています。
性能が低下したスタッドレスタイヤは積雪、圧雪、凍結路面での路面に対する食い付きが低下しています。登れる坂道も上れなかったり、曲がれるカーブも曲がれなくなって事故や立ち往生になり、大渋滞の元凶になりかねません。
また雪道に対する(走行する)法令で、滑り止めの処置をせずに走行した場合、罰金刑であったり、場合によっては走行不可ということもあります。
スタッドレスに履き替えたのに通行できなかったり、不慮の事故を起こさないためにもスタッドレス使用限度を正しく知って備えて頂きたいと思います。
インジケーターのサインご注意を!
スタッドレスタイヤには2つのインジケーターがあります。1つはスリップサイン、もう1つはプラットホーム。共にタイヤの使用限度を示すものです。
スリップサインはご存知、夏タイヤ、スタッドレスタイヤともに存在し、スリップサインが露出しているタイヤは使用できません。車検にもパスしないため、使用を続けると整備不良となります。
法令的に使用できないのはもちろんですが、実際、特に雨天時排水機能が低下しているのでかなりスリップしやすくなっており、更にトレッドゴムの層が薄いため、小さくて短い異物でもタイヤ内部まで貫通しやすく、パンクやバーストのリスクも高まります。
使用年数にもよりますが、交換時期まで使用したタイヤのゴムの質も低下しており、雨天時の排水とは別にゴム自体の路面への食い付きも低下しているので、イザという時のハンドル操作やブレーキ性能が運転者のイメージ通りにはいかなくなる可能性があります。
本来なら避けきれる対象物への接触、追突等、事故へと発展する可能性も高まりますので、スリップサインが露出する手前辺りでの交換をお勧めいたします。なお露出する溝の深さは1.6ミリです。
スタッドレスタイヤは更にもう1つインジケーターがあります。それがプラットホームです。
スリップサインは、隣り合うブロックがスリップサインのインジケーターで繋がれば、残溝1.6ミリで使用の限度を知ることができますがプラットホームは隣り合うブロックがプラットホームによって繋がると残溝が半分の50%になります。
残溝が50%以下になるとスタッドレスタイヤとしては使用できません。理由は2つ、法律上と性能の低下です。
公安委員会規則で残溝50%以上摩耗していないことと明文化してる県は、岩手、宮城、秋田、山形、福島、石川、福井、兵庫、鳥取、広島の各県になります。
といっても、これ以外の県は大丈夫というわけではありません。性能低下の目安の残溝50%は、安全のためにどこでも守っていただきたいと思っています。
性能が低下したスタッドレスタイヤでの走行は危険です
ノーマルタイヤ(夏タイヤ)で雪道、凍結路を走れば法令違反となり罰金を支払わければなりません。
でも、罰金を支払わなければならないからではなく、性能が低下したスタッドレスタイヤでの雪道、凍結路は本当に危険なので、やめていただきたい。
普段は何でもない緩やかな上りや下りでも、クルマが思い通りの動きをしません。それによって立ち往生や他の車両との接触事故などを起こしては大変です。
特にスタッドレスタイヤは、タイヤにとって厳しい環境での性能を要求されます。滑りやすい氷上や駆動力のかかりにくい雪道、そして凍てつく路面温度での路面への食い付きです。
スタッドレスタイヤも総合系と呼ばれる摩耗ライフが高いモノと氷雪系と呼ばれる氷上での効きを重視したモノがありますが、どちらも溝の深さとゴムの柔らかさは必須です。
スタッドレスタイヤで残溝が50%あればOKなんだよね? ってなりそうですが、ゴムの柔らかさも非常に大事です。
このゴムの柔らかさを見る基準や規則がないので、目安とすれば製造からの年数、あるいは使用を始めてからの年数、期間になります。
一括りに何年という明確な答えはないのですが、目安は2シーズンから長くて4シーズンくらいでしょうか。
スタッドレスタイヤは雪道、凍結路の使用限度が50%ですが、それ以降は夏タイヤとしてスリップサインまで履き潰しができます。
そのため、多い履き替えパターンは冬に新品スタッドレス、春に夏タイヤへ履き替え、スタッドレスを保管。再び冬に昨シーズンのスタッドレスを履き、そのまんま履き潰し。その年の冬に履き潰しスタッドレスを処分、新しいスタッドレスを購入という流れです。
このサイクルなら残溝、ゴム質ともに高い性能のまま冬を過ごせます。
投稿 スタッドレスタイヤの履き替えのカンどころを伝授! 商用車専門のタイヤマンに聞いてみました は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。