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このVWゴルフ カントリーがeBayで高額になる理由。SUVの先駆者である「ゴルフ2 カントリー」は時代を先取りしていたが、成功とは言えなかった。そのため、現在では希少な存在となっているが、eBayに出品されている今回の一台が高額なのは、そのためでもある。

「VWゴルフ2」が21,900ユーロ(約310万円)とはいったい??これは「GTI」ではないのに?最初は冗談にしか聞こえない。しかしそれが「VWゴルフ カントリー」なのだ。しかし、実はこの「VWゴルフ カントリー」は決して高値ではないのだ! それは、フォルクスワーゲンのベストセラーである「ゴルフ2」の歴史を詳しく見ていくと、よくわかる。VWは、さまざまなスペシャルモデルに加え、この2代目コンパクトから、SUVの波を先取りした「ゴルフ カントリー」を誕生させたのだった。

「ゴルフ2 カントリー」は、1989年のジュネーブモーターショーで、「ゴルフ モンタナ」という名のスタディモデルとして発表された。オフロードを走れるゴルフってどんなだろう?オーストリアのオフロードスペシャリスト、シュタイヤー ダイムラー プフ社との共同開発で生まれたこの製品はきっと多くの注文が入るだろう ー と、フォルクスワーゲンは考え始めたのだ。

最終的には4ドアゴルフのボディの下にチューブラーフレームを入れ、ゴルフシンクロの4輪駆動シャシーを搭載するという変わった自動車が実現することとなった。

このゴルフには、クリーム色のレザーのみが用意されていた

しかし、AUTO BILDは、当時、「リミテッドスリップデフを持たないため、夏タイヤではほとんど冬の道では役に立たない」と苦言を呈している。そんな理由もあったためか、いずれにせよ、顧客の関心は急速に冷え込んだため、98馬力の「VWゴルフ2 カントリー」は1年半しか製造されず、工場は合計7,735台を世に送り出しただけにとどまった。しかし、かえって、そのことが今となっては、「ゴルフ カントリー」を希有な存在とさせ、多くの好奇心旺盛なファンを獲得したのだった。

ゴルフ2 カントリーは、1.8リッター4気筒ガソリンエンジンと5速マニュアル変速機を搭載している。最高速度: 155km/h。

そして、特別なモデルの特別なモデルとして、フォルクスワーゲンは、1991年初めに「クロームエディション」を発売した。カラーはブラックのみで、クリーム色のレザーシート、ベバスト社製の巨大な折りたたみ式サンルーフ、クロームパーツをふんだんに使用したものだ。

そして、販売台数の面でも群を抜いていた?VWの販売台数は558台で、大失敗であった。オフロード仕様の「ゴルフ」は、ベーシックモデルでさえ33,225マルク(約243万円)と高価であり、55馬力のベーシックモデルである「ゴルフ2」のほぼ2倍の価格であった。しかし、そのクロームメッキの宝石は、42,060マルク(約310万円)と、さらに価格が高かったのだった。

インパクトプロテクションバーなどのアドオンパーツが、オフロードのゴルフに本格四駆的な外観を与えている。特別なカントリーでは、クロームメッキが施されている。

業者によると、このクローム版の「ゴルフ2 カントリー」は、最初の20年間しか乗っていないそうだ。そのため、このクルマは2013年から登録抹消されており、現オーナーによれば、コレクションされていたという。その後、このコレクターは、四輪駆動のゴルフを維持するだけでなく、「すべてを分解し、手直しし、再コーティングし、新しくした」のである。

エンジンも分解整備されていたし、ボディには溶接修理が施され、新しいマッドガードや新しいペイントが部分的に施されている。レザーやサンルーフも新品だ。それを証明するかのように、写真ではゴルフカントリーが非常に良い印象を与えている。おまけとして特筆すべきは、トレーラーのカップリングだ。

クリーム色のレザーを標準装備したライフスタイルSUV。当時はリミテッドスリップデフもなかった。

販売価格?前回、我々は、eBayで、13,999ユーロ(約200万円)で売りに出されていた普通の「ゴルフ カントリー」をレポートした。しかし、クローム版としての「ゴルフ2 カントリー」は非常に希少であり、VWエキゾチックの信頼できる市場価格を正確に判断することはできないが、この個体の価格、21,900ユーロ(約310万円)は、現在の市場価格を鑑みれば、決して高いとは言えないだろう。むろん、実際に見て、状態が良ければの話だが。

もし実車の程度がよければ、実はバーゲンなのかもしれない。なにしろ、歴史的なオフロード車である「ゴルフ カントリー」は、2023年6月までまだ車検があるのだ。そして、来年にはH(クラシックカー)ナンバーをも取得できるのだ。

今回販売されているのは、ほぼオリジナルの状態で、98馬力の1.8リッター4気筒エンジンもそのままの状態で残っている個体だ。5本スポークのホイールには、がっしりとしたオフロードタイヤが装着され、リアウインドウにはティンテッド加工が施され、インテリアにはボディ同色の表皮を持つスポーツシートが設置されている。

終了まで残り数日となった現在、この型破りな「ゴルフ2」には現時点では入札がない。出品者は9,999ユーロ(約140万円)から入札するように求めている。せっかちな人は、13,999ユーロ(約200万円)で「ゴルフ カントリー」をすぐに購入することも可能だ。しかし、有名な中古車取引サイトでは、他の「ゴルフ カントリー」が10,250ユーロ(約145万円)で提供されているので、一見の価値がある。

【ABJのコメント】
「ゴルフ カントリー」という、今のフォルクスワーゲンのわかりにくい名前から比べると、単純明快でわかりやすい名前の1台は、かつて日本にも正規輸入されていて、僕はちょっとほしかったことがある。しかし残念ながら高価で購入できなかったことと、日本に正規導入されたものの、(たしか何らかのエンジンルーム内での問題で)エアコンがつかないという致命的な欠点があったため断念せざるを得なかったけれど、当時、他にはあまり見当たらなかった、普通の2ボックスハッチバックをSUV化したその姿はなかなか魅力的だった。そしてそのベースになったのが「ゴルフ2」というところも刺さった部分だった。

そんな「ゴルフ カントリー」だが、30万km走行という物件をAUTO BILDでも7月に一台を紹介していて、それは約14,000ユーロ(約196万円)だったので、それからすると、確かに今回の一台はなかなか高価ではある。ただしあの30万kmの過走行よりもあきらかに程度はよさそうだし、個人的に選ぶとしたらちょっと奮発してでもこちらを選びたい(高いけれど)。今回はじめてオリジナルのインテリアカラーがベージュだと知ったが、そのシートも程度がよさそうである。今やSUV全盛だし、街中には似たようなジャンルの車が多く走っているけれど、そのオリジナルはこういう車だったんだぜ、とちょっとしたり顔で乗ったら楽しいだろうなぁ、そんな気持ちも抱いてしまう「ゴルフ カントリー」である。(KO)

Text: Roland Wildberg
加筆: 大林晃平
Photo: ebay.de/juliette32